爆弾を抱えた左足
私は、過度に疲労すると左足が痛くなるという「奇病」にかかっている。
世間的に言えば「痛風」という病名なのだが、この病気は非常に格好悪い。
「贅沢病」とか「酒の飲み過ぎ」とか揶揄される。しかし、食事を贅沢しているわけではないし、お酒も、1人でいるときは全く飲まない。
ひとたび発作が起きると、考えられないくらい、左足の親指の付け根あたりが痛くなる。薬を飲めば痛みがひく。でも油断するとまた発作が起きる。このくり返し。
疲労やストレスがたまると、この痛みが襲ってくる。
実は、長期の海外滞在で、最も恐れているのは、発作がいつ起こるやも知れないというこの病気なのである。
格好いい言い方をすれば、「私の左足は爆弾を抱えている」
事実、これまで韓国で2度ほど、この発作に襲われたことがある。いずれも疲労が蓄積した結果だと思うのだが、ただしこのうちの1回は、原因が特定できた。どうも、扶余で食べた「牛すじのスープ」が、体内の尿酸値を急上昇させ、発作を引き起こしたのだ。
なにしろその時は、ビックリするくらい大きな牛すじがいくつも入っているスープを、調子に乗って全部たいらげてしまった。そのしっぺ返しが、2日後くらいにあらわれた。痛がって足を引きずっている姿は、相当滑稽だったらしい。その時一緒だった師匠からは、いまだに「牛すじだけはやめておけ」と、半笑いで諭される。
そんなこともあって、10日(月)、かかりつけの病院に電話して、明日の診察の予約をいれておいた。先生に海外長期滞在のことを相談しようと思ったのである。
そして翌11日(火)、朝起きると左足の裏に違和感を感じた。例の発作か?
まるで病院を予約したことを体がわかっているかのようなタイミングだ。午前中、病院に行き、先生に海外長期滞在のことを話す。向こうでの発作にそなえて、痛み止めの薬と、通常飲む薬の量を配慮してくれるという。
本題が終わってから、「実は今朝、急に左足の裏が痛くなったんです」と告白。先生に左足をみせると、痛みの部分を確認する。
「痛いところは、ここですか?」と先生が足の裏を押さえる。
「そうです」
「ああ、○○筋(聞き取れず)ですね。ここ最近、歩きすぎたってことはないですか?」
「はい、1週間ほど前に、20キロ近く歩きました」
「原因はそれですね」
「でも、1週間も前ですよ」
「筋肉痛は、すぐには起こらないこともありますから。塗り薬を出しておきましょう」
どうも左足の痛みの原因は、1週間前の文化財調査実習で歩きたおしたことらしい。
「筋肉痛が翌日ではなく1日おいてから出るのは、年をとった証拠だ」とはよく聞くが、1週間後に出たのは初めてだ。どんだけ老けたんだ、私は。
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