リュ・ピン君の挑戦
今週の月曜日から、クラスに新しい学生が入ってきた。
学生といっても、年齢は私と同じか、ちょっと下くらい。アメリカ人のベンジャミンさんである。詳しくお話ししていないのでわからないが、英語の先生をしているらしい。そのせいなのか、1日おきに来て、しかも4時間のうち2時間だけ授業を受けて帰ってしまう。
いろいろと場を盛り上げようとしてくれるのだが、ちょっと空回り気味。欧米人の笑いのツボと、アジア人の笑いのツボが違うのかも知れない。逆に、アジア人の笑いのツボがほぼ同じであることを再認識した。
さて、「猟奇的な先生」は、今日もとばしまくる。
お調子者のマ・クン君が、授業中に中国語で私語をしてると、「猟奇的な先生」がマ・クン君の席に近づき、いきなりマジックで顔に何か書こうとした。マ・クン君は必死で抵抗したが、「猟奇的な先生」も引き下がらない。そしてついに、手の甲に大きく「바보(パボ、「バカ」という意味)」と書いた。もしマ・クン君が強く抵抗しなかったら、そのまま顔に大きく書かれていただろう。
「次に喋ったら、今度は돼지(豚)と書くからね」
幸い、書かれずにすんだが。
恥ずかしながら私も、失敗をする。
「今日は何曜日ですか」とか、「何ハンバーガーが好きですか」の「何」にあたる言葉は、韓国語で「무슨(ムスン)」という。「무슨」の下に来る言葉にはどんなものがありますか、と先生が質問した。
私はすぐに、NHKラジオ講座で兼若先生が言っていた「ムスン洞(ドン)」という言い方を思い出した。「洞」とは、日本でいうところの「町」にあたる。つまり、「何町ですか」というときに使う言葉だ。それを答えたのである。
「ムスンドン!」
すると先生は、不審な顔をしている。ホワイトボードに、とぐろを巻いた蛇のような絵を描き始めた。
私の発音が悪かったのか、先生は、「大便」を意味する「똥(トン)」と思ったらしい。
先生の耳には、「何糞ですか?」と聞こえたのだろう。まったく恥ずかしい話である。
さて、1時間目が終わった休憩時間、リュ・ピン君がはじめて私に話しかけてきた。
「아저씨(アジョッシ、「おじさん」の意)、「サランヘヨ」は、日本語で何と言うのですか?」
アイドル並みにかっこよいリ・チン君でもなく、ジャッキー・チェンにそっくりのトゥン・チネイ君でもなく、クラスで一番気の弱そうなリュ・ピン君が、そんな質問をしてきたのである。
「『愛してる』だよ」
と教えると、ノートに「ア・イ・シ・テ・ル」と熱心にメモした。いったい、何でそんな言葉が知りたいのだろう。
「リュ・ピン君、次の時間、先生が来たら、先生にその言葉を言うんだぞ」
と私がけしかける。
休憩時間が終わり、「猟奇的な先生」が入ってきた。
私は何度も、リュ・ピン君にアイ・コンタクトで、「言えよ、言えよ」とけしかけた。リュ・ピン君も言いたげだったが、気の弱いリュ・ピン君は、とうとう先生にその言葉を言うことができなかった。
リュ・ピン君は、いつか先生にその言葉を言うことができるだろうか。それとも、これから先、誰か別の人にその言葉を言うのだろうか。
アジョッシ(おじさん)としては、そのあたりが気になるところである。
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