パオ・ハイチェン君の災難
語学の授業は、演習室くらいの部屋で行われている。私のクラス(「반(班)」と呼んでいるようだが)は、中国人留学生11人と私。あと、英語の先生らしき米国人2人も不定期で参加しているが、途中で馬鹿馬鹿しくなったのか、ほとんど出ていない。
席はコの字型に並べられる。先生に一番近い左右の席には、先生から向かって左側に私、右側にパオ・ハイチェン君が座っている。
パオ・ハイチェン君は、大柄だが、とてもおとなしい学生である。そして韓国語もよくできる。将来は、大学で法律学を学びたいと言っている。
そのパオ・ハイチェン君は、「猟奇的な先生」から「아기(アギ、「赤ちゃん、ベイビー」の意)」と呼ばれている。理由はわからないが、「猟奇的な先生」からすれば、おとなしくてかわいらしいのだろう。本人も、まんざらではないようだ。
しかし、彼はいつも「猟奇的な先生」からひどい仕打ちを受ける。
「아프다(痛い)の意味はわかりますか?こういう意味です」といって、思いっきりひっぱたかれたり、カバンから勝手に貯金通帳や携帯電話を取り出して会話の練習の道具にしたりされたりするのは、実はいつもパオ・ハイチェン君なのである。
まあ反対側の席には私がいて、「猟奇的な先生」はさすがに私には手が出せないので、必然的にターゲットはパオ・ハイチェン君に絞られる。責任の一端は私にもある。
今日も彼には災難が降りかかる。
1時間目の授業が終わる5分前、パオ・ハイチェン君の携帯電話が鳴った。正確に言えば、マナーモードにしていたので、バイブしたというべきだろうか。
それに気がついた「猟奇的な先生」は、ニヤリと笑って、携帯電話を取り上げ、「休憩です」といって、教室を出て行ってしまった。携帯電話を取られたパオ・ハイチェン君は、あ然とするばかり。
2時間目、「猟奇的な先生」はパオ・ハイチェン君の携帯電話を持って来たが、本人に返さず、教卓に置いたまま授業を続ける。
2時間目の授業は、みんなの出来が結構よかったために、終了時間の5分前に終わることになった。すると、また、パオ・ハイチェン君の携帯電話がバイブした。
すると今度は「猟奇的な先生」が、パオ・ハイチェン君の携帯電話を嬉々としていじりはじめた。これにもパオ・ハイチェン君はあ然とする。挙げ句の果てには、「비밀번호(ピミルボノ、暗証番号のこと)を教えなさいよ」と言う始末。
結局、残った5分間、「猟奇的な先生」はパオ・ハイチェン君の携帯電話をニコニコしながらいじり続け、授業時間が終わると、彼の携帯電話を持って教室を出て行ってしまった。
(なんだよ、結局、携帯電話返さないのかよ…)
と、その時誰もが思ったに違いない。
さらにその時私が思ったことは、(『猟奇的な先生』の旦那さんはたいへんだなあ。あんな風に、旦那さんの携帯も勝手に見ているのだろうか…)ということだった。げに恐ろしや、である。
結局、4時間目の授業が終わっても、彼の手元に携帯電話は戻らなかった。その後、携帯電話が無事彼のもとに戻ったかは、わからない。
それにしても、なぜ毎回、授業時間が終わる5分前に、彼の携帯電話が鳴るのだろう。そのタイミングもよくわからない。
パオ・ハイチェン君よ、「猟奇的な先生」に負けずに頑張れ!
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