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異変

12月20日(土)

朝8時30分。ホテルを出発。

師匠を含めたご一行に見送られる。「体に気をつけるように」「人づきあいもほどほどに」という言葉をかみしめる。

9時20分ソウル駅を出発。11時7分東大邱駅に到着。午後の授業に間に合った。

「猟奇的な先生」が教室に入ってくると、「あれ、今日は休みじゃなかったの?」と驚かれる。

「はい、先に大邱に戻ってきました」

「なぜ?面白くなかったの?」

「いえ、面白かったです。ただ、授業が気になったもので…」

と言うと、「イサン サラム」(変な人ねえ)と先生はつぶやいた。

1時間目の授業が終わったとき、その異変は始まった。

「リュ・ピン君とトゥン・シギ君、私についてきなさい」

と、ただならぬ表情で「猟奇的な先生」が教室を出て行った。

中国人の留学生たちがざわつきはじめている。ただし、中国語で話しているので、何があったのか、私にはまったくわからない。

そして、リュ・ピン君とトゥン・シギ君が、教室を出て行く。

10分間の休憩が終わり、中国人の留学生たちが教室に戻ってくる。しかし何か様子がおかしい。いつもだったらもっと騒がしいのに、ヒソヒソと話をしては、不安げな顔をしている。

リュ・ピン君とトゥン・シギ君も、沈痛な表情で教室に戻ってきた。

「猟奇的な先生」も教室に戻り、2時間目の授業が始まる。

しかしこの時間が、これまでとは打って変わって、お通夜みたいな授業なのである。

あのお調子者のマ・クン君も、黙りこくったままである。ふだん私語ばかりしているトゥン・チネイ君、トゥン・シギ君、ジョウ・レイ君の3人も、まったく会話を交わさない。リュ・ピン君に至っては、「猟奇的な先生」と目を合わせようともしない。

一体どうしたんだ?10分間の休憩の間に、彼らに何があったんだ?中国語がわからない私には、事情がまったくわからない。しかし、大きな異変が起こったことだけは確かである。

リュ・ピン君とトゥン・シギ君は、先生に何を言われたのだろう?

間違いなく言えるのは、これが、「猟奇的な先生」の本当の恐さである、ということである。

中国人留学生たちは、そのことを感じているのだろう。

授業の最後に、「猟奇的な先生」が爆発する。

「あなた方は、勉強する気があるの?ない人は、今すぐ中国に帰りなさい!やる気のない人に教えるほどこちらは暇じゃないの!今度この初級を落としたら、もうあとがないのよ!その時は、その時点で中国に帰ってもらいます!わかった?」

お説教の端々で、中国語による罵倒らしき言葉も吐いておられる。

凍りついた教室。

私も、「もうあとがない」という言葉に反応して、思わず背筋を伸ばす。

40歳を間近に控えた人間が、まるで自分が怒られているかのような錯覚を起こす現場に居合わせると、さすがに凹むねえ。

待てよ。この怒りの対象に、自分は含まれていないと言い切れるのか?

結局、一体何があったのか?落ち込んでいる彼らに、質問することはできなかった。

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