怒り爆発!
独居房のような寒々とした部屋で寝ていたためか、朝から風邪気味。日本から持ってきた風邪薬を飲んだ。
夕方には妻が来るので、午前中のうちに最低限必要なものを、近所のホームセンターに買いに行く。
午後の授業。いつも通り授業が進んでいくが、2時間目から、様子がおかしくなる。
むかし読んだ本の中に、こんなことが書いてあった。「中国では、カンニングはあまり悪いこととは考えられていない。みんなで力を合わせて解答を得ることは、むしろよいことだと考えられている」と。
たしかこんな感じの話だったと思う。本当かどうかはわからないが、「へえ、そういう考え方もあるのか」と、ヘンに感心した記憶がある。
そのことと関係するかはわからないが、今のクラスで、たとえばある人が解答につまると、まわりの中国人留学生が、即座に解答を答えたり、あるいは小声で教えたりする。私が答えにつまったときも、解答を小声で教えてくれるのである。
ときにありがたいことではあるが、本人の勉強のためにはよいことではない。
「猟奇的な先生」は、そのことがかなりお気に召さないらしい。いや、「猟奇的な先生」ならずとも、「先生」の立場であれば、誰しもいい気持ちはしないであろう。
今回は、その怒りが爆発した。
問題児のリ・ヤン君は、ふだん授業に出ないくせに、やたら韓国語の知識だけはある。その知識をひけらかしたいのか、解答につまった他の学生に、小声で解答を教えるのである。
「リ・ヤン!黙りなさい!今はトゥン・シギに質問しているのよ!あんたが答えたら勉強にならないでしょ!喋るんだったら今すぐここから出て行きなさい!」
いつになく大声でお怒りになる。リ・ヤン君のとなりに座っている私も、一緒に怒られているような気になり、イヤな気持ちになった。
リ・ヤン君だけではない。いつものくせなのか、中国人留学生たちは、つい小声で解答を教えてしまうのである。そのたびに、「猟奇的な先生」は「黙れ!」と怒鳴りつける。
中国人留学生たちは、これで完全にびびってしまった。先生が恐ろしくて、簡単に解答できるはずの問題を答えることができなくなる。言葉が出なくなるのである。すると先生はますます高圧的な態度に出る。まさに悪循環である。
これに巻き込まれた私も、だんだん腹が立ってきた。中国人留学生の態度にも腹が立つが、それを高圧的に押さえつけようとする「猟奇的な先生」の態度にも腹が立つ。だいたい、なぜ私も一緒になって怒られなきゃいけないんだ。「美人だからっていい気になってるんじゃないぞ、年下のくせに」と、まったく筋違いな怒りすらこみ上げてきたのである。
その時、さらに間が悪いことに、学生の誰かの携帯電話が鳴った。メールの着信を知らせる音楽である。
ここで、「猟奇的な先生」の怒りは頂点に達する。
「誰の携帯電話が鳴ったの?じゃあ、みんなの携帯電話をいまここに出しなさい。全員の携帯電話を、全部私に渡しなさい!」
学生たちは、先生にしぶしぶと携帯電話を差し出す。
冗談じゃない、なぜ私の携帯電話まで差し出さなきゃいけないんだ。だいたい、40歳になろうとするおっさんが、年下の「先生」に携帯電話を取り上げられるなんて、こんな屈辱はない!夕方には妻も来るんだ!いつぞやのパオ・ハイチェン君みたいに、授業が終わっても返してくれないなんてことになったら、どうすればいいんだ!
私の怒りも頂点に達した。「上等じゃねえか。痛くもない腹を探られたらたまんねえや。正々堂々と携帯電話をくれてやろうじゃねえか!」
そう思った私は、「猟奇的な先生」に携帯電話を投げつけてやった。
かなり大きな音を立たせて机の上に投げつけてやった。
いま考えると、少し大人げなかったかな…と反省している。
しかし、さらに大人げないのは、「猟奇的な先生」の方である。
没収した携帯電話を一つ一つ操作して、誰の携帯電話にメールが着信したか、犯人捜しをはじめたのである。
(…容疑者扱いされている…)
こんな屈辱は初めてだ。これは人権蹂躙だ!
怒りがこみ上げたまま、授業が終了した。携帯電話は無事返してもらったが、しばらくはこの怒りがおさまらない。
風邪気味で体調が悪かったこともあるが、今日ほど腹の立ったことはなかった。こんな状態で、明日以降の授業を、正常な気持ちで受けることができるだろうか?
ただ、不幸中の幸いなのは、明日がクリスマス・イブだということだ。
妻が、「語学の先生に渡すように」と、日本からチョコレートを買ってきた。それに、クリスマスカードをつけて、明日、2人の先生に渡すことにした。
日本でも書いたことのないクリスマスカードを、韓国語で書いて渡そうというのである。
はたして、これが吉と出るか凶と出るか。気持ちがリセットできるだろうか。
おそらく、「猟奇的な先生」には鼻で笑われるだろうな。
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