2日遅れの「ハッピーバースデー」
あいかわらず、うちのクラスは落ち着きがない。
その原因を考えると、お調子者のマ・クン君よりも、ジャッキー・チェンにそっくりのトゥン・チネイ君にあることがわかってきた。
彼は、やたら中国語の私語が多い。いろんな人に話しかけるものだから、みんなもつい、授業中に話してしまう。まあ、話に乗る方も悪いのだが。
「猟奇的な先生」も、そのことをよくご存じのようだ。虫の居所が悪かったのか、今日はトゥン・チネイ君をやり玉にあげた。
「トゥン・チネイ!机をもって、前に来なさい!」
「先生、もう中国語で話しませんから…」
「ダメです。前に来なさい!」
トゥン・チネイ君は、机をもって、教壇の真ん前に座らされた。みんながコの字型に座っているのに、1人だけ、ホワイトボードの真っ正面に、先生と向かい合って、座らされたのである。
これが彼にとって相当の屈辱だったようだ。
授業中も下をうつ向いたまま。先生の質問にも、答えようとしない。すっかりと、いじけてしまったのである。
(見た目はアクションスターみたいなのに、こいつ、意外と打たれ弱いな…)
前半の「猟奇的な先生」の授業では、ちょっとした私語も厳禁である。先生の虫の居所が悪ければ、それがお説教に発展する。
「あんたたち、何で韓国語ができないかわかる?」
そら、お説教が始まった。
すると今度は、私に向かって「猟奇的な先生」が質問をする。
「この子たち、頭が悪いからかしら?」
「いいえ、違います」
と私が答える。
「そう、あんたたちは頭が悪いわけじゃないのよ。授業中に、先生の話をきかずに、他のことを考えてるからよ。私の学生時代の友達に、国語の時間に英語の内職をしていて、英語の時間に歴史の内職をしていた人がいたの。一生懸命勉強していたのに、成績が悪かった。なぜだかわかる?…授業をちゃんと聞いていなかったからよ」
以下、延々と歯切れのよいお説教が続く。私の言いたかったことでもあり、スカッとするが、彼らは、すぐに忘れてしまうだろう。
お説教が終わったころ、また、「猟奇的な先生」の携帯電話が鳴った。
「おかしいわね。カバンに入れておいたはずなのに…。何でポケットに入っていたのかしら」
「ジュセヨ」と再び私が手を出す。今度ばかりは観念して、携帯電話を私に渡した。
しかしほどなくして休憩時間。没収した時間はわずか数十秒だった。
後半の対話の授業。ここから、彼らの学級崩壊が始まる
今日は、「誕生日に招待されたとき」の表現を学ぶ。ベテランの先生が「みなさんのなかで、最近誕生日を迎えた人はいますか?」と聞く。
仕方がないので、私が、「クジョッケ(おととい)が誕生日でした」と答える。
「あら、じゃあ、誰か家に招待しましたか?」
と聞かれるので、
「いいえ、1人で家にいました」
と答えた。
どうも、誕生日には、友達を招待して、パーティーをしなければならないらしい。
中国では、誕生日に「長寿麺」なる麺を食べるそうだ。韓国では、わかめスープを食べる。いずれも、長寿を願ってのことだろう。
日本には、そういう風習があるのかわからない。というか、誕生日なんて、ここ数年、いつも1人で過ごしていたから、特別な感慨など、すっかりなくなってしまっていたのである。ケーキすら食べていない。
先生が私を憐れんだのか、「みんなで『ハッピーバースデー』の歌を歌いましょう」とおっしゃった。「ハッピーバースデー」のメロディーに、韓国語の歌詞が乗る。
「センイル チュッカ ハムニダ
センイル チュッカ ハムニダ
サランハヌン ○○○
センイル チュッカ ハムニダ」
「センイル チュッカ ハムニダ」とは、「誕生日おめでとう」という意味。
これで、今年の誕生日行事はおしまい。
再び、学級崩壊の授業に戻った。
「猟奇的な先生」のお説教は全く効果がなかった。相変わらず、中国語で私語している。
授業が終わったあと、ベテランの先生は私におっしゃった。
「うちの班の子たち、うるさいでしょう。勉強は大丈夫?」
本当は全然大丈夫ではないのだが、「大丈夫です」と答える。
「他の班もこんな感じなんでしょうか?」
「いえ、全然違うわよ。他の班は静かにしてるわよ。うるさいのはこの班だけよ」
ええ?!他の班もこんな感じなのだろう、とあきらめていたのに、こんな学級崩壊みたいな班は、うちだけだったのか!とんでもない班に入ってしまったものだ。
「ごくせん」のクラスみたいなものか(といっても「ごくせん」をほとんど見たことがないので想像だが)
あるいは、「はいすくーる落書」のクラスみたいなものか(たとえが古いか?)
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