« インクを飲んだマ・クン君 | トップページ | 遊園地とキョスニム »

作文という憂鬱

週に1,2回、「スギ(書くこと)」の宿題が出る。いわゆる作文である。

300字から330字で、あるテーマについて書いてこなければいけない。今まで出されたお題は、「友達について」「韓国でやりたいこと」「家族について」「韓国の市場について」「趣味について」等々。

いずれも、私にはつらいテーマばかりである。「友達」なんて、ほとんどいないし、ましてや今の語学のクラスの中にも友達は1人もいない。だから、「私には友達がいない」という悲しい書き出しで、作文をはじめなければいけなくなる。「家族」にしたって、私は親不孝者だし、「趣味」といわれても、無趣味の私には、書きようがない。

しかしそれはそれ。多少なりとも人生経験はあるから、どんなテーマでも、それなりのことは書ける。それに、中学の時に、作文コンクールで佳作をとっているし

当然、他の中国人留学生たちよりも、それなりの作文が書けるわけである。そうなると先生は、(この人は書きたいことがたくさんあるのだな)と勘違いされるようで、「字数にこだわらずに書きたいだけ書きなさい」と、私にだけ、原稿用紙1枚のところを2枚、お渡しになる。「別に書きたいわけじゃないんです」と言いたいのをぐっとこらえて、それを受け取る羽目になる。

一昨日のテーマは、「旅行に行きたい国」であった。私は韓国のいろいろな場所について、調べたことや、行きたい理由などを作文に書いて提出した。

そして今日、授業時間にその作文が返却される。そして「みなさーん。自分の作文を、みんなの前で読んでくださいーい」とベテランの先生がおっしゃる。

私が自分の作文を読み上げると、先生はおっしゃった。

「ところどころ細かいところで間違いがあるけど、大変よく書けてますね。…中学生レベルですね」

以前いわれたのが、「小学校3,4年生レベル」だったから、それから比べたらかなりの進歩ではないか?

なんか「アルジャーノンに花束を」みたいだ。

つづいて、わが班で精神年齢がいちばん幼いと思われるリュ・ピン君が自分の作文を読み上げる。

「僕は、フランスに旅行がしたいです。フランスでは、エッフェル塔と凱旋門に行きたいです。フランス料理も食べたいです。僕はフランス料理が大好きです。僕は、フランスに旅行がしたいです。フランスでは、エッフェル塔と凱旋門に行きたいです。フランス料理も食べたいです。僕はフランス料理が…」

ん?まてよ。いま同じこと2回言わなかったか?

どうも、330字の字数を埋めるために、同じ文をくり返し書くという戦法をとっているようだ。

これにはベテランの先生もあきれる。「そんなことでは韓国語はいつまでたっても上達しませんよ!」

とにかく、うちの中国人留学生たちは、ベテランの先生に甘えまくっている。「猟奇的な先生」が恐いことの反動である。

明日は「野外授業」、つまり遠足である。わが班は、2班、3班の人たちと一緒に、1号車のバスに乗るという。

「ソンセンニム!1号車の先生は誰ですか?」

「キム先生(「猟奇的な先生」)ですよ」

一同、ええ~!という表情になる。

「先生!先生が1号車に乗ってください!」と、学生たちはベテランの先生に懇願する。

「ダメですよ。決まったことなんですから」

「ええ、じゃあ僕行きたくありません!だって面白くないもん!」ふだんは寝てばっかりのリ・ミン君も、このときばかりはめずらしく主張する。

「そんなこと言うもんじゃありません!」

みんなよっぽど「猟奇的な先生」が恐いんだな。

それにしても、このやりとりは、まるで小学生がわがままを言っているようにしか聞こえない。しかもそれをいちばん強く主張しているのが、ジャッキー・チェンにそっくりのトゥン・チネイ君なのだから、なおさら可笑しい。

さて、明日の「野外授業」はどんなことになるか?

明日は朝8時に集合。午前中にトンファサ(桐華寺)を見学して、午後に「ウバンランド」(遊園地)で遊ぶ。そして夕方に解散。私はその足でKTXに乗り、ソウルへ行く。そして次の日の土曜日は、国際学会で発表だ。

この落差は何だろう。

そうそう、その前に、今日出された作文の宿題を片付けておかなくてはならない。

お題は「私の将来の夢」。これまた、おじさん泣かせのテーマである。

|

« インクを飲んだマ・クン君 | トップページ | 遊園地とキョスニム »

1級1班」カテゴリの記事

コメント

先輩、ご無沙汰しております。吹奏楽OBのGONです。
昨年11月の壮行会の際に「BLOGにコメントさせていただきます」と言ってたのですが、このタイミングになってしまいました。すいません。
韓国での生活、BLOGから手に取るように分かり、非常に楽しく拝見させていただいております。特に「猟奇的な先生」ですが、読んでいるだけでこんな顔をしているのではと想像してしまいました。
それにしても作文のお題である「私の将来の夢」ですが、ちょっと厳しいですね。私だったら何を書くんだろうと考え込んでしまいました。老後の楽しみを綴るようなことになってしまうのでしょうか・・・(それはちょっと悲しすぎますね(笑))
日本はここ数日寒い日が続いておりますが、韓国はそれ以上の寒さだと思います。どうかお体にお気をつけてお過ごしください。
またコメントさせていただきます。
それでは失礼いたします。
//GON

投稿: GON | 2009年1月17日 (土) 21時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« インクを飲んだマ・クン君 | トップページ | 遊園地とキョスニム »