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初めての散髪

昨日、初めて散髪屋に行った。

実は、渡航前に心配していたことが、2つあった。ひとつは、以前にも書いた「爆弾を抱えた左足」だが、もう一つは、散髪である。

つげ義春の「無能の人」だったか忘れてしまったが、旅先で散髪を趣味にする人物が登場する。なるほど、旅先で散髪する趣味、というのは、なかなか面白いかも知れない、と思ったことがある。

数年前、ベトナムに旅行に行ったとき、町外れにボロボロの散髪屋が営業しているのを見つけて、その趣味のことを思い出したが、ついぞ勇気が出なかった。

言葉がよくわからないところで、どのように理髪師さんとコミュニケーションをとったらいいのだろう。

「どのようにしますか?」と聞かれて、答えることができるだろうか?

たとえば、韓国の有名な俳優の名前を出して、「ペ・ヨンジュンみたいにしてください」と言ったら、笑われるのではないだろうか。第一、日本でもそんな「キムタクみたいにしてください」的なことは、1回も言ったことがないし。

不安だった私は、韓国渡航直前に、散髪屋で髪をカットしてもらったあと、頭の写真を撮ってもらった。韓国の散髪屋で、この写真を見せれば、なんとかなるだろうと思ったのである。

昨日の授業が終わってから、大学の近くの散髪屋に向かう。大学院生のウさんに勧められた店である。

行ってみると、男子学生がお客の大半を占める、わりとおしゃれな美容院である。「予約が必要ですか?」と聞くと、「必要ありません。そこで待っていてください」といわれる。

私の前にも何人かお客がいたが、けっこう回転が速く、20分くらいで私の番になった。

予想通り、「どのようにしますか?」と聞かれたので、「韓国語がよくわからないので」と言いながら、ポケットからデジカメを出して「このようにしてください」と、自分の頭が写っている写真を見せた。

いま考えると、「ペ・ヨンジュンみたいにしてください」と言うのと変わらないくらい、恥ずかしいことかもしれない。

美容師さんは、その写真を一目見ると、ものすごいスピードでカットを始めた。カットが終わると、洗髪して終了。この間、20分くらいか。

仕上がりは、まずまず。日本で散髪してもらったときよりも、いいくらいだ。

会計は、8000ウォン(約800円弱)なり。

次回からは、ちゃんと言葉で説明できるようにしよう。自分の頭の写真を見せるのは、やはり恥ずかしい。

翌日、教室に行くと、髪を切ったことを中国人留学生たちが真っ先に気づいてくれて、「モシッソヨ(かっこいい)」と言ってくれる。

ふたりの先生には、まったく無視されたが。

さて、授業の始まる前、パンジャンニム(班長殿)のロン・ウォンポン君が、携帯電話で撮った写真を嬉しそうに見せてくれた。

そこには、ハート形のケーキと、大きな熊の人形が写っている。

昨日は、ヨジャチングの誕生日だったそうだ。ヨジャチングが、プレゼントでもらったその熊の人形を、嬉しそうに抱いている。

だから、彼は昨日休んでいたのか…。

パンジャンニムのヨジャチングは、語学学校でも有名な、優秀な学生であるという。今はかなり上級のクラスにいる。実際、とても利発そうな子だ。失礼な言い方かも知れないが、そんな優秀な人と、パンジャンニムとの組み合わせが、ちょっと意外である。男女の仲とは、よくわからない。

ま、他人様のことは言えた義理ではないが。

今日のわが班の出席者は、パンジャンニムと、パオ・ハイチェン君、リュ・ピン君、、マ・クン君、そして私の、たった5人だった。アットホームな感じで授業が進む。これくらいの人数だと、勉強にもなるし、なにより「猟奇的な先生」がまったく怒らないのが良い。

後半のベテランの先生の時間では、5人では授業にならないと思ったのか、フリートークの時間となった。

先生がみんなに、「好きな女の子のタイプは?」という質問をする。ちょいとした「グータンヌーボ」である。

私はもっぱら先生に、「韓国にも嫁姑問題はありますか?」といった現実的な質問をする。

授業が終わってから、大学院生のウさんと食事に行く。奥さんも合流して、大邱の名物のふぐ料理を堪能する。大邱では、ふぐを焼いて食べるのが名物らしい。

明日を乗り切れば、土曜日から「ソルラル(旧正月)」の4連休だ。

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