旧正月の市内
韓国は、いま、旧正月のお休みである。
よく知られているように、韓国や中国では、新暦のお正月ではなく、旧暦のお正月が、本当のお休みである。
新暦の1月1日も、1日だけ休日だが、この日はとくに盛り上がらない。
この旧正月には、日本の年末年始と同じような帰省ラッシュがある。
ニュースを見ていると、やれKTX(韓国の新幹線)が満席だの、高速道路が渋滞しているだの、といったニュースが流れる。帰省途中の家族にインタビューして、「おじいちゃん、おばあちゃんからお年玉をもらうのが楽しみです」と子どもが答えているところなんかも、日本の年末年始と同じ風景。
だから、この期間は、下手に旅行なんかしない方がよい、と、語学の先生に言われた。その通りだ。
だから今日はとくに何もせずに過ごす。
お昼に、テレビでチャ・テヒョン主演の「覆面ダルホ」という映画をやっていたので見た。
これが結構面白い。
あとで調べてみると、日本映画の「しゃらんQの演歌の花道」のリメイクだそうだが、たぶん、ストーリー自体は、オリジナルの作品よりもかなり面白いのではないかと思う(オリジナルを見ていないので、なんとも言えない)。
「ダルホ」とは、主人公の名前だが、発音は「ダルホ」よりも「タロ」の方が近い。あるいは、タイトルは「覆面太郎」というべきか。
チャ・テヒョンは、「猟奇的な彼女」以後、よい作品に恵まれず、低調だったが、この作品で復活した、という。
相手役のイ・ソヨンがとてもいい。ドラマ「春のワルツ」では、ちょっと感じの悪い役を演じていて、印象があまりよくなかったが、一転して大ファンになってしまった。
見終わったのが午後2時。このままでは1日家にいることになってしまう、と思い、町へ出ることにする。
市内の本屋で、本を2冊買う。無駄な本を買う癖は、韓国でも抜けない。
ベストセラー1位になっている小説(『母をよろしく』)と、元「ミス・コリア」が書いたタレントエッセイ(『ナナのネバーエンディングストーリー』)を買う。いずれも日本だったら、絶対買わないだろうな、という本だ。
だいたい、私はリリー・フランキー氏の『東京タワー』を読んでいない。ベストセラー小説なんて、本来読まないのである。この『母をよろしく』なる本は、タイトルからして、『東京タワー』みたいな小説だろうか。
『ナナのネバーエンディングストーリー』なるタレントエッセイも、日本だと、川原亜矢子の『シンプル・ビューティ』とか、藤原紀香の『紀香魂』みたいな本なのだろうか(いずれも読んだことがないのでわからないが)。略歴をみると、2002年にミス・コリアとなり、翌年のミス・ユニバースに出ようとしたが、「やはり自分は勉強したい」と思い、アメリカのハーバード大学に留学した、という人らしい。
後者を買ったのは、以前同じ本屋に行ったときに、この本の出版記念で、このクム・ナナという人のサイン会が行われているところを通りかかったからである。正確には、ちょうどサイン会が終わり、「ナナ」なる人が控え室に戻っていくところに遭遇した。
これも何かの縁かな、ということを、思い出し、思わず買ってしまったのである。
まあ、ぱらぱらとめくって、「これくらいの文章なら読めるかも」と思って買った、というのが、本当のところである。
しかし、このミス・コリアは、なぜわざわざこの地方都市でサイン会を行ったのだろう。
語学の授業のとき、「猟奇的な先生」がおっしゃった。
「大邱は美人が多いことで有名よ」
そのあと、こうも付け加えた。
「私も、大邱出身ですけどね」
自分が美人であることを否定しないこの発言は、なんとなく鼻につくのであるが、「大邱は美人が多い」ということ自体は、どうやら事実のようである。ミス・コリアも、大邱出身の人が多い、と聞く。
理由は「大邱はリンゴの産地で、リンゴをたくさん食べているから」と、韓国の人たちは言うが、本当のところはわからない。
おそらくこの人も、大邱出身なのだろう。、
そう思って、いろいろ調べてみると、私がいま通っている大学の医学部出身であるということが判明。
ますます何かの縁を感じるが、だからといって、別にどうというわけでもない。
本屋を出て、市内をブラブラしていると、今日はやたらとイラン人らしき人たちが多い。
地下街ですれ違う人たちが、みな、イラン人らしき人たちである。
地元の人は、今日は市内へ出ずに、実家にいるのだと思うが、それにしてもこのイラン人の多さは異常である(まあ正確にはイラン人かどうかはわからないのだが)。
謎である。
よくわからないことと言えば、ソルラル(旧正月)の元日は、明日(26日)のようなのだが、テレビでは、もう司会者が韓服を着て、「あけましておめでとうございます」と言っている。
「あけましておめでとうございます」という挨拶は、実はすでに新暦の1月1日にもすでに行われている。つまり、新暦と旧暦で、2回言うわけである。
日本だと、12月31日に「あけましておめでとう」とは言わない。カウントダウンがあって、時計の針が正確に元日の午前0時になってから、「あけましておめでとう」と言う。
些細なことだが、どうも気になる。
家に戻り、カレーを作って食べる。
それと、昨日、キム先生から「これはお正月に食べるお菓子です。妻が作りました」といって、山ほどいただいた、日本の雷おこしのようなお菓子をいただく。この休みに食べ終わることができるだろうか。
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