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めんどうな課題

いろいろと細かいトラブルが起こる。

日本であれば簡単に解決するようなことでも、こちらにいてはなかなかそうはいかない。

それでも、語学の授業は今日も容赦なくやってくる。

今日は、問題児のリ・ヤン君が久しぶりに教室にやってきた。いつもの身なりで。

リ・ヤン君は、3月から韓国の大学に入学することが許可されたらしい。あんな語学力と生活態度で大丈夫か?と思ってしまうのだが。

しかし、「猟奇的な先生」はご立腹である。

「リ・ヤン!先週はなぜ学校に来なかったの!」

「風邪をひいてました」

「じゃあ、先々週は?」

リ・ヤン君は答えにつまった。

「休むときはなんで先生に電話しないの?学校を休むときは、これこれの理由で今日は休みます、と、先生に連絡するのが当然でしょう。先生は、リ・ヤンが休んだ理由がずっとわからないままだったのよ。もう私はあなたの先生ではありません。あなたは私の学生ではありません。今すぐ、カバンを持って出ていきなさい!」

リ・ヤン君は、黙りこくっている。

「さあ、早く出ていきなさい」

リ・ヤン君は、見た目が不良っぽいわけでは決してない。むしろ、一見まじめそうな感じである。しかし、彼は相手をカチンとこさせる才能を持っている。私もリ・ヤン君のダメ人間ぶりには、さすがにあきれていた。私が「先生」の立場であっても、同じことを言ったであろう。同情の余地はなかった。

だが、なかなか彼は教室を出ていこうとはしない。やがて、「猟奇的な先生」の怒りが本気であることに気がついたのか、カバンをゆっくりと持って、教室を出ていった。

すごいと思ったのは、一見、感情的とも思える「猟奇的な先生」の啖呵は、実はわれわれにもわかるような言葉ばかりを使っている。それでいて、相手に反省をせまる力がある(もっとも中国人留学生たちは、その場だけ反省して、すぐに忘れてしまうのであるが)。さすが言葉のプロだ、とヘンに感心した。

後半のベテランの先生の授業のときに、リ・ヤン君は教室に戻ってきた。

「猟奇的な先生」とは対照的に、ベテランの先生は、すべてを受け入れる、という優しさがある。

それが、結果的には学級崩壊につながってしまうのであるが、留学生たちが、韓国語でどんなにくだらない、幼いことを言っても、耳を貸すのである。

前半と後半で、バランスがとれている、というべきか。あまりに両極端だが。

だが、ときにベテランの先生は、面倒な課題を出すことがある。

「みなさーん。旅行に行きたい国はどこですか?今度の水曜日に、みなさんが旅行に行きたい国を、紹介してもらいます。行きたい国の写真や、紹介文を用意して、もってきてください」

どうも、模造紙のような大きな紙に、写真だの紹介文だのを貼って、それをみんなに見せながら行きたい国の観光スポットを紹介する、というプレゼンをやらないといけないらしい。

むかし、小学校の時に、自由研究を模造紙にで書いて発表したみたいなことを、やる、というのである。

しかも、水曜日、というと明後日ではないか。ずいぶんと急な話だ。

これから、行きたい国の名所の写真をインターネットなどから見つけて、それをプリントアウトして、韓国語で紹介文を書かなければならない。

ずいぶんめんどうな課題だ。

しかも、不惑の年を迎えた人間がやるようなことか?

ああ、気が重い。

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