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彷徨

どうも韓国の路線バスとは相性が悪い。

韓国の路線バスは、すべて番号で表示されている。だから何番のバスが、どこを通り、どこに向かうのかを、あらかじめ知っていなければならない。

バス停には時刻表もない。だからとりあえずバス停で待っているしかない。

ここまでは、まだよい。

バス停でボーッとしていると、自分が乗りたいと思っていた番号のバスがバス停に止まらずに通り過ぎてしまうことがよくある。

あるいは、バスに乗っていて、「次降ります」のボタンを押しても、ボーッとしているとそのバス停に止まらず、通り過ぎてしまうことがよくある。

つまり、ボーッとしていてはいけないのだ。「乗りたい」「降りたい」という意思表示を運転手に示さないといけない。乗りたいバスが停留所に来たときは、バスに轢かれる覚悟で、バスの前に立ちはだかり、「乗りますよ!」という意思表示をしなければならない(少し大げさか)。また、次のバス停で降りたい場合は、「次降ります」のボタンを押したあと、バスの降車ドア付近に待機して、「降りますよ!」という意思表示をしなければならないのである。

停留所にバスが来て、お金や「交通カード」(プリペイドカード)を出そうとグズグズしていると、「早く乗れ」と、運転手に怒られる。

道路が渋滞しているときなどは、停留所の100メートル手前くらいの、道の真ん中でバスの降車ドアが開き、「ここで降りろ」といわれる。

もう何度も経験していることなのだが、いまだに慣れない。

今日の午後、家にばかりいても仕方がないので、外へ出ることにした。授業で、両先生がよく話題に出す「市民運動場」に行ってみようと思った。

「市民運動場は、大学から車で10分くらいだから、一度行ってみたらいいですよ」と先生。

地図で調べてみると、たしかに家からそれほど遠くない。インターネットで調べてみると、どうも家の近くを通る「循環2-1」番のバスに乗れば、着くようなことが書いてある。

さっそく、家の近くから「循環2-1」番バスに乗る。

しかしこのバスは、自分が思っていた方角とは、どんどん違う方角へ走ってゆく。「市民運動場」とは、反対の方角に走ってゆくのである。

おかしい。インターネットの情報を間違って読んでしまったかな。でも「循環」とあるから、そのうちひと回りして家の近くを通るだろう。

だが、バスは、しだいに市内をはずれ、どんどん寂しい場所を走っていく。

もう30分以上たっただろうか。乗客も私1人。

やがて、町もとぎれ、原野の真ん中でバスが止まった。

バスが何台も駐車している。どうやら、バスの車庫のようだ。

(なんだ、「循環」といいながら、循環しないのかよ)

と思っていると、運転手が「早く降りろ」と言う。

「市民運動場に行きたかったんですけどね」

「市民運動場?そんなとこ止まんないよ!」

「じゃあ何番のバスに乗ればいいんですか?」

と聞くと、623番と書いてあるバスをさして、「あのバスに乗れ」と言う。

今度は623番のバスのところに行って、休んでいる運転手に聞くと、

「市民運動場?このバスはそんなとこ行かないよ。それにここはバス乗り場じゃないんだ。早く出ていきな」

「バス停はどこにあるんですか?」

「あっちだよ」といって、適当な方向を指さす。

仕方がないので、バスが通ってきた道をトボトボ歩いて戻って、なんとかバス停を見つけた。

(こうなったら、意地でも市民運動場に行くぞ)

と思うが、もうバスはこりごりだ。いったん自分の家の近くまで戻り、そこからタクシーで向かった。するとあっという間に着いた。

(ここが市民運動場か…)

とくに運動するわけでもなく、場所だけ確認して、ひきあげることにする。

このままではなんとなく気持ちがおさまらず、大邱駅の近くの本屋で、本を大人買いして家に戻った。

いったい、今日の午後は何だったんだろう。結局、この貴重な休日も、棒にふって終わり。

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