「チェガ ネルケヨ」
韓国で、複数の人たちと食事に行くと、本当に難しい。
その食事代を、誰が支払うか、という問題である。
基本的に日本のような「割り勘」という習慣がないので、複数で食事に行くと、誰かが全部を支払うことになる。
昨日の居酒屋も、1次会はウさんが全部支払い、2次会は、別の大学院生の方が全部支払った。
今日、昨日の人たちと大学の食堂で昼食をとったが、その時は、もう1人の大学院生の方が全部支払ってくれた。
なるほど。今日、めずらしく昼食に誘われたのも、もう1人の大学院生が、食事代をおごらなければならなかったためか。
結局、支払っていないのは私だけ。
そこで私は、昨日習ったばかりの「タウメヌン チェガ ネルケヨ(次は、私は支払います)」と言うと、なぜか爆笑された。
自分が外国人ということもあるので、なかばお客様扱いされていることもあるのだろうか。いずれにしても、自分が支払うタイミング、というのが、よくわからない。
今日の「猟奇的な先生」の授業でも、そんなことが話題になった。
昨日に続き、今日の出席者は5人。昨日のメンバーのうち、ロン・ウォンポン君が欠席で、代わりにマ・クン君が出席である。昨日、両方の鼻の穴にティッシュを詰めていたパンジャンニムことロン・ウォンポン君は、さらに風邪が悪化したのかも知れない。
トゥン・チネイ君、トゥン・シギ君、ジョウ・レイ君の悪友3人組も、昨日に引き続いて欠席。2級に上がれないと宣告されたのがショックだったのかも知れない。やはり、打たれ弱いやつだ。
例によって時間が大幅に余ったので、「みなさん、韓国の人と食事に行ったことがありますか?」と話題をふられた。
「韓国の人と食事に行くと、1人が全員の分を支払うでしょう。外国人にはそれが不思議みたいね」
「そうです。とても難しいです」昨日のことが頭にあった私は、その話に反応した。
先生が続ける。
「学生時代、米国人の友達と食事に行ったとき、私が全部払ったのね。そうしたら、次から、一緒に食事に行きたくない、みたいになって、だんだん疎遠になっていたのよ。たぶん、負担に感じたのね。払ってもらっても精神的な負担だし、自分が払うとなると今度は金銭的な負担だし」
個人主義の国の人なら、それはそうなるだろう、と思う。
「でも、韓国人だって、難しく感じているのよ。みんなで一緒に食事しているとき、『ここは誰が払うのだろうか』とか、『あれ?この前は誰が払ったかしら』とか。計算が済んだあとも、『次は誰が払うのだろうか』とか、年中考えながら食事をしているのよ」
「そんな考えながら食事をしても、美味しくないのではないですか」という私の質問を、笑いながら受け流し、先生は話を続ける。
「以前友達と食事に行って、友達に5000ウォンのジャージャー麺をおごってもらったのよ(韓国人は、ジャージャー麺が好きである)。『次は私が払うね』といって行ったところが、サムギョプサル(豚焼き肉)の店。そこで10万ウォンも払ったのよ!もう悔しくて悔しくて…。だから自分がどのタイミングでおごるか、ということも、考えなければならないのよ」
ちょいとしたロシアンルーレットである。
後半のベテランの先生の授業。3時間目は、「私の1日」というテーマで話をする。
そこで、リュ・ピン君の仰天発言。
リュ・ピン君は、わが班の中で、おそらく精神年齢がいちばん幼い。加えて、韓国語の出来もかなりよくない。
「僕は、毎日毎日、夜遅くまでスクチェ(宿題)をしているんです」とリュ・ピン君。
「そんなに宿題が好きなの?でも夜遅くまでかかるほど宿題は多くないでしょう」と先生。
「違うんです。僕は、ヨジャ・チング(ガールフレンド)と、トンセン(弟)の分の宿題もやってあげてるんです」
この言葉に、先生が大爆笑した。なぜなら、ヨジャ・チングも、トンセンも、リュ・ピン君より上級の、2級クラスに在籍しているからである。
「じゃあリュ・ピン君は2級のクラスの宿題もやっているの?」
「そうです。だから2級の勉強もできるんです。だから2級に行けますよね」
再び先生は大爆笑。
「でもリュ・ピン君、あなたの提出する宿題は、いつも間違いだらけよ。それで、よく2級の宿題ができるわね。ほかの2人はそのあいだ何をしているの?」
「料理を作っています」
どうも、自分は亭主気取りで「宿題は俺にまかせろ」なんていいながら、ヨジャチングに料理を作らせているらしい。こりゃ、将来、厄介な亭主になりそうだぞ。
それにしても、ヨジャチングやトンセンも、よくリュ・ピン君に宿題なんかまかせられるな。もしこれが本当の話だとしたら、毎日、間違いだらけの宿題を提出していることになるぞ。
リュ・ピン君は、「自分は2級の宿題もやっているのだから、次の学期は2級のクラスでやっていける自信があるんです」という意図でそんな話をしたのだと思うが、だとしたら、完全に間違ったアピールである。2級の宿題なんかやるより、今の1級の勉強をもっとまじめにやれよ、と、誰もが言いたくなるだろう。
どうも考えていることがよくわからない。
私は、昨日の居酒屋の話をする。そこから、日本、韓国、中国の、居酒屋の比較に話が広がる。といっても、初級の語学レベルなので、たいした話にはならないが。
授業が終わって帰ろうとすると、マ・クン君が私のところにやって来た。
「アジョッシ!中国のお酒を飲んだことありますか?」
「飲んだことあるけど、度数が高くて、飲むとのどが熱くなるね」
そう答えると、そうでしょう、と言わんばかりに、
「僕たちにしてみれば、韓国の焼酎なんて、水みたいなものです」
と言う。「この前も中国人の友達4人で韓国の焼酎を16本も空けたんですよ」
へえー、と感心していると、マ・クン君は続けた。
「今度のパンハク(休暇)に中国に帰ります」
「でも、プモニム(ご両親)が帰ってくるなって言ってなかった?」
「大丈夫です。帰ります。…で、今度韓国に戻ってきたとき、中国のお酒をたくさん買って持ってきます。アジョッシにも、おみやげに買ってきます」
「そう。ありがとう。楽しみに待っているよ」
マ・クン君はニッコリ笑って、教室を飛び出していった。
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