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テレビが壊れた夜

妻が日本へ帰った。

思えば、12月23日に妻が韓国に来てから、私はずっと風邪をひいていた。せっかくのクリスマス休暇の25日には風邪で寝込んでいたし、1月1日の休日も、咳がひどく、市内を散歩して映画を見たくらいだった。

韓国でのクリスマスも正月も、それらしいことは何一つしなかったのである。

1月3日には中間考査があったので、その勉強にも追われた。「一体、なんのために韓国に来たのか…」と妻は思っているに違いない。

中間考査が終わってほっとしたのもつかの間、その日の夜、中古で買ったテレビが突然壊れた。

妻が韓国に来た翌日、新しい部屋に何がなくともテレビを置かなくては、と思い、町の中古電気屋さんを探して、テレビを買った。

そのテレビが、わずか1週間でうつらなくなってしまったのである。

「一難去ってまた一難」とはこのことだ。夜9時、買った中古屋に文句を言いに行こう、ということになり、寒いなか町へ出る。しかし、(当然ながら)店は閉まっていた。

途方に暮れた私たちは、日ごろお世話になっている大学院生のウさんにメールを送った。ウさんは、翌日の午前中に来てくれるという。

そして今日(日曜日)の朝9時半、ウさんと一緒に、テレビを買った中古屋に行く。ウさんが交渉してくれたおかげで、若干のお金を返してもらって、故障したテレビを返品した。

午前11時、妻はバスに乗って釜山空港へ出発。残されたウさんと私は、新しいテレビを買いに家電量販店に行った。

無事、新品のテレビを購入。「海外では電化製品は中古で買わない方がよい」という教訓をかみしめた。

考えてみれば、私は、妻や、ウさんがいなければ、韓国でまともに生活することができない。私の中に、サバイバルの能力なんて、これっぽっちもないのだ。

たぶん、甘やかされて育ったからであろう。

そんな人間が、よく韓国に1人で留学しようと思ったものだ。

ウさんと昼食をとっているとき、ウさんは冗談交じりでこう言った。

「奥さんは、onigawaraさんのどんなところがいいと思って結婚したんでしょうねえ」

奥さんは、結婚を早まったのではないか、というのである。たしかにそうだ。優柔不断で、臆病で、こんなとりえのない人間のどこがいいのか。ウさんは私たちのことをよく観察している。

「私にもわかりませんねえ」と答えるしかなかった。

しかし、テレビが壊れたことは、決して悪いことばかりではなかった。

テレビが見られないかわりに、昨日の夜はパソコンで、「그놈 목소리(クノム モクソリ)」(あいつの声)(2007年)という映画を見た。

韓国で実際に起こった誘拐事件をもとに、誘拐された子どもの両親の苦悩を描いた映画。

ソル・ギョングの演技がすばらしい。

以前、「オアシス」(2002年)という映画を見たときも、言葉を失うくらい圧倒された。ソル・ギョングはいい。

そして、いまいちばん見たいのが、「オアシス」と同じ監督による「박하사탕 (パカサタン)」(邦題・ペパーミント・キャンディ)(2000年)である。ソル・ギョングの出世作。

ウさんも、「この映画を見れば韓国のたどってきた道がわかる」と絶賛。

少し気持ちが落ち着いたら、この映画を見ることにしよう。

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