2カ月
韓国へ来てから2カ月が過ぎた。
いままで、日記なんぞ書いたことのない人間が、よく続いたものだと思う。
この2カ月間、語学堂で起きたさまざまな出来事を、できるだけありのままに書いてきたが、私の体験が、文章でどれだけ表現できているのか、どれほど伝わっているのか、はなはだ心許ない。
あまり抽象的でも伝わらないし、逆に些末な出来事を書き連ねても、話が込み入りすぎて、読むのが面倒くさくなってしまう。
たとえば、昨日の授業でいちばん笑ったのは、次のようなことであった。
後半のベテランの先生の授業で、「もし…したら、何をしますか?」という対話練習をした。
「今度の休暇が来たら、何をしますか?」「中国に帰ったら、何をしますか?」といった風に質問をして、それに対して、もう1人が答えるのである。
ジャッキー・チェンにそっくりのトゥン・チネイ君と、人のよいパンジャンニム(班長殿)ことロン・ウォンポン君の対話練習。
この2人は、同じ吉林省出身ということもあってか、いつも仲良く喧嘩している。たいていは、トゥン・チネイ君がからかう方で、ロン・ウォンポン君がからかわれる方。トゥン・チネイ君は、自分は打たれ弱いくせに、相手にはサディスティックなまでの言動を浴びせる。
今回も、トゥン・チネイ君は、ロン・ウォンポン君をやり込める気満々である。
「ヨジャチング(ガールフレンド)と家で何をしますか?」
ロン・ウォンポン君をからかうときは、たいていヨジャチングの話題をふる。というか、うちの班の連中は、ヨジャチングの話題が大好きなのである。小学生じみた発想である。
そしてこういった質問をする場合、相手から「ポッポする」、という答えをなんとか引き出そうとする。「ポッポ」とは、韓国語でキスのことである。日本語の語感でいえば、「チューする」といったほうがよいであろうか。
この「ポッポ」という言葉も、彼らが大好きな言葉なのである。これまた、小学生のような感覚である。
ベテランの先生があきれる。
「またヨジャチングの話題なの?それよりトゥン・チネイ君、いまは『もし…したら、何をしますか』という勉強をしているのよ。その表現を使って質問しなさい!」
トゥン・チネイ君は、ロン・ウォンポン君をやり込めたいあまり、使うべき表現をまったく無視して質問したのである。そこでまた言い直す。
「ヨジャチングが家に来たら、何をしますか?」
「…料理をします」
ロン・ウォンポン君は、相手の思惑に乗らないように、慎重に答える。
「それから?」
と、負けずにトゥン・チネイ君も質問を続ける。
「…ご飯を食べます」
「それから?」
「…お酒を飲みます」
「それから?」
「…テレビを見ます」
「それから?」
トゥン・チネイ君の攻撃は執拗である。ここまでくると、もはや語学の練習ではない。相手からいかに「ポッポ」という言葉を引き出すか、という目的のみで、この対話が続けられることになる。
「…話をします」
ロン・ウォンポン君も必死に対抗する。
次の瞬間、トゥン・チネイ君は質問を変えた。
「では、夜11時頃、何をしますか?」
ここでロン・ウォンポン君は耐えきれず撃沈。「…ポッポします」
そして一同は、大爆笑。
…というわけで、授業中は、こうしたことのくり返しなのであるが、この文章で、授業中の可笑しさが、どのくらい伝わっているのだろうか?もし伝わっていなければ、ただただ些末なことを延々と書いているに過ぎなくなってしまう。
その場にいて可笑しかったことを、文章で伝えることが、なんと難しいことか。
といいつつ、こんな実験的な文章を書いても仕方がないのだが。
もし、読者がいるのだとすれば、こんな話ばかりで、とっくに飽きていることだろう。
来週末に、この学期が終わる。とりあえずそこまでは、日記を書き続けよう。そしてそれ以降のことについては、またあらためて考えることにしよう。それまで、もう少しの辛抱だ。
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