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心が折れた夜

2月12日(木)

2日間にわたって、私が通っている大学で学会が行われる。昨年の12月にも参加した学会である。

実は1カ月ほど前、この学会の討論者になってくれ、と依頼された。依頼、というより、引き受けることを前提で原稿依頼が来たのである。

討論者とは、研究発表に対して、コメントを述べ、その研究発表に疑問を述べる役割の人である。1人の発表に対して、1人ないし2人が討論者となる。

しかし私は、前回の経験でもわかるように、韓国語が満足にできず、自分の専門分野と異なるので、発表内容がほとんど理解できない。

加えて、依頼が来たときは、発表者の研究発表のタイトルすらわからなかった。内容を知らされる前にOKしろ、とは、いささか乱暴な話である。

国内学会なので、当然通訳はない。いただいた韓国語の発表原稿を事前に読んで、それに対してコメント原稿を韓国語で作って、当日、韓国語で議論する、なんて、いまの私にできることではない。

先方にしてみれば、せっかく私が通っている大学でやるのだから、という配慮もあったのだろうが、だからといっておいそれと引き受けるわけにはいかなかったのである。

さて当日、蓋を開けてみたら、なぜ私に依頼したか、が納得できる発表だった。それならそれで事前に知らせてくれよ、という感じなのだが、いずれにしても、引き受けたところで満足なコメントはできなかっただろう。

学会の関係者の方からは、冗談交じりに「せっかく討論者をお願いしたのに断るなんて…」と言われたが、「気にしい」の私は、たとえそれが冗談でも、「やっぱり引き受けた方がよかったのかな」と、心が揺らいでしまうのである。

そんなこともあって、何となく肩身が狭い思いで過ごす。

1日目が終わり、例によって懇親会が行われる。1次会では思わぬ人と出会い、話が弾む。昨年の12月よりも、韓国語の会話が成立していることに自分でも気づき、少し嬉しい。

場所を変えて2次会へ。端っこの方で、私の通っている大学の大学院生のみなさんと話していると、(韓国での)指導教授が、私のことをお呼びになった。

指導教授のところに行くと、ソウル大学の大学院生の方々を紹介していただいた。みなさん私のことを知っておられたようで、恐縮する。韓国語で挨拶の練習ができた。

指導教授が私にたずねられた。「1次会でお話ししていた○○先生はどうされたかな?2次会にいらしてるかな?」

私は、お帰りになりました、という意味で「トラガショッソヨ」と答えた。

すると指導教授はビックリされて、「それは『お亡くなりになりました』という意味だぞ。そういうときは『家にお帰りになりました』と言わないと」とおっしゃった。

なるほど。単なる「トラガショッソヨ」では、亡くなった、という意味でしか使わないんだな。

やがて2次会が終わり、3次会へ。あまりに盛り上がってきりがないので、幹事の先生が、「11時半でお開きにしますからね」と参加者に念を押す。

予告通り11時半でお開き。みんながお店を出る。ところが、またもや指導教授につかまってしまい、残った4人でもう少し飲んでいこう、ということになった。

指導教授はいま、大学の要職についておられているので、お会いする機会が少ない。しかしこういうときには、何かと気にかけてくださる。このときも、私が討論者を断ったことを気にしていることに気づかれたのか、あたたかい言葉をかけてくださる。そのお言葉に、救われる。

言ってみれば親分肌なのである。天性の明るさに加え、人間的なあたたかさもお持ちである。天性の明るさを持っている人は何人も知っているが、そのすべてが人間的なあたたかさを持っているとはかぎらない。

ただ、夜遅くまでつきあわされるのは、ちょっと勘弁してしてほしい。

大学の要職をこなし、研究発表をし、一番最後までお酒を飲んでお喋りになる。…まったく怪物である。

夜、12時半ごろ、家に戻る。いくつか仕事を終え、ipodを聴きながら寝ようとすると、 ipodがウンともスンとも言わなくなり、動かなくなってしまった。

なんとか復旧しようと、インターネットで調べてあらゆる努力をするが、画面には赤く大きな「×」が出てしまう。

なんか自分にダメ出しされているようだ。

結局、私のipodは、その後息を吹き返すことなく、トラガショッソヨ。

寂しいときの友だったipodが逝ってしまった…。

この日の夜(というか明け方近く)、心がボッキリと折れてしまったのである。(つづく)

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コメント

iPodは、少しの間放って置くと復活しますよ。
お身体に気を付けて頑張って下さい。

投稿: 通りすがり | 2009年2月14日 (土) 00時16分

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