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期末考査

最近の生活リズムは、5時に授業が終わってから、大学の研究室に寄って、その日の宿題をして、夕食、というパターンだったが、最後の授業が終わった昨日、研究室に寄ってはみたものの、「そうか、もう宿題はしなくていいんだ…」ということに気づき、早めに家に戻った。

いつの間にか、宿題が自分の生活のリズムの一つになっていた。

翌日は期末試験だというのに、なかなか試験勉強ができない。こういうときに限って、自分の研究に関係ある本を読みたくなったりする。ウダウダと無駄な時間を過ごしてしまった。

2月7日(土)

いよいよ、期末考査である。

試験時間と試験会場は、前回の中間考査と同じである。ただ、午後のマラギ(対話)の試験の順番は、前回最後だった私が、今回は最初になる、という点が異なっている。

午前9時から午後1時10分まで、文法、読解、作文、リスニングと、試験が続く。

大人になってよかったことは、試験勉強から解放されたことであった。実際、今でも、入学試験や、学校の定期試験の時の夢を見たりすることがある。試験勉強をまったくせずに、試験にのぞむ、という夢である。もうあの頃には戻りたくない、という願望なのだろうが、今、現実に、あのときと同じ状況に置かれている。この状況が、この後もしばらく続くのは、やはりちょっとつらい気がする。

「優等生の視点だよね」と、この日記を読んだある人が言った。「いっそ、中国人留学生たちみたいになっちゃえば?」

たしかにそういう面はあるかも知れない。この日記では、中国人留学生たちの行動が理解できない、としきりに書いてきたが、勉強が嫌いな人にとっては、むしろわかるのは中国人留学生たちの行動の方なのではないか。

ビックリするくらい荒れていた中学校で、私は生徒会長を務めていた。毎日のようにガラスが割れ、イタズラに消化器がまかれるような中学校で、いわゆる不良と呼ばれる彼らとともに授業を受けながら、受験勉強をしていた。あのときと今とでは、自分のスタンスは何ら変わってないではないか、ということに気づき、思わず笑ってしまう。

人間にはもって生まれた「業(ごう)」のようなものがあるのかも知れない。

さて、文法、読解、作文の試験は、中間考査の時と同じように、同じ教室の中で、1級から3級までの学生が、1列ごとに机に座って受験する。隣の席の答案を見ないための方策である。

ところがリスニングの試験だけは、違う級の人がひとつの教室で受験する、というわけにはいかない。そこで、1級の人たちがひとつの教室に集まって受験することになる。

だから、リスニング試験の時は、とりわけカンニング対策が重要である。試験監督の先生方は、学生どうしの席が近すぎないように最大限に注意を払い、「隣の人の答案を絶対見てはいけませんよ!」と、何度も学生に呼びかける。

ひとり、こわい顔をした試験監督の先生が、

「もし、隣の人の答案を見たら、こうなります!」

とおっしゃって、答案用紙を1枚ビリッと破いてみせた。

学生たちは、一瞬凍りついた。これは効果がありそうだ。

午前中の試験は、脳細胞が日に日に死滅しつつあるこの頭をフル稼働させ、1時10分に終わった。

リスニングの試験が終わってから、1級1班で優等生のパオ・ハイチェン君が私に聞いてきた。「最後のあの問題の答えは、何ですか?」

「プルコギとビビンバだよ。『冷麺を食べたかったけど、寒かったので食べなかった』って、言ってたでしょう」

「そうか~、プルコギとビビンバか~」

パオ・ハイチェン君はひどく悔しがっていた。

このあたりの会話も、中学、高校時代に友達とよくやったなあ。

パオ・ハイチェン君とは、今後もいいライバルになるような気がする。

問題は、午後のマラギ(対話)の試験である。どうも先生と1対1では、緊張してしまう。

順番が最初なので、2時少し前に、3階の試験が行われる部屋の前で待っていると、例によってものすごい怒鳴り声が聞こえてきた。

「何度言ったらわかるの?関係ない人は2階に降りて待っていなさい!」

「猟奇的な先生」の声である。「猟奇的な先生」の声は、本当によく通る。

すると中国人留学生たちは、「やべえ、『キムチ』だ、『キムチ』だ」といって、階段を降りていった。

「キムチ」とは、「猟奇的な先生」ことキム先生のあだ名である。キム先生のフルネームを続けて言ってみると「キムチ」と聞こえるため、そのようなあだ名になったらしい。だからこの語学堂では、「キムチ」といえば、それは「猟奇的な先生」のことなのである(ちなみに「猟奇的な先生」とは、この日記の中だけで私が使っている呼称。念のため)。

これからあの怒鳴り声をしばらく聞くことができないとなると、それはそれで寂しい気もする。

マラギ(対話)の試験は、途中、言葉に詰まって失敗したところがあったものの、いちおう無事に終わった。失敗したことは仕方がない。

試験が終わって語学堂の外に出ると、マ・クン君がいた。

「マラギ、難しかったですか?」

「ちょっとね。あまりよくできなかった」

「僕、これからなんです」

「ヨルシミ ハセヨ!(一生懸命がんばりなさい)」

マ・クン君はニッコリ笑って、語学堂の建物に入っていった。

この試験が終われば、彼らのほとんどは、2月末まで中国に帰る。すでに頭の中は、故郷に帰った時のことでいっぱいなのだろう。

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