2級4班、始動!
3月9日(月)
午前中、今学期の授業を担当されるクォン先生のところに行く。
語学の授業自体は、先週から始まっているため、先週はどこまで進んだか、とか、今学期の日程はどうなっているか、などを、授業が始まる前に聞かなければならない。
語学堂の建物の5階の、先生方が集まっている部屋に行くと、たまたまクォン先生がおられた。
クォン先生は、ずいぶん大柄な先生である。眼鏡もかけておいでなので、ナンシー関みたいな感じの方である(たとえがマニアックか?)。後半の、マラギ(対話)の授業を担当されるそうである。
今学期の日程表と、今学期の宿題表と、さらにはパダスギ(毎日授業の最初に行われる書き取り試験)の予定表を受け取る。
「今学期は、踏査とか学会発表とかで、授業を休むことが多くなると思います」
と申し上げると、
「その時は、私に電話してください」
とおっしゃる。
この電話、というのが、いまだに慣れない。
韓国は、日本以上の、携帯電話社会である。
とにかく携帯電話でよく喋る。名刺をいただくと、必ず携帯電話の番号が書かれている。
この語学堂でも、担当の先生の携帯電話番号が印刷されて学生たちに配られる。
携帯電話に対する抵抗が、あまりないのである。
以前、こんなことがあった。
ある学会の懇親会で、学会の主催者の方が、懇親会開会の挨拶をはじめた。すると、ほどなくして、その方の携帯電話が鳴り出した。
その方は、開会の挨拶を中断して、携帯電話に出て、「もしもし」と会話をはじめたのである。
よっぽどのことがない限り、携帯電話に出るものなんだな、とその時実感した。
逆に、それを見てしまうと、いま自分がかけた相手が、たとえ重要な会議中であったとしても、電話に出てしまうのではないか、と、恐れをなしてしまう。
だからますます、携帯電話がかけづらくなるのである。
むろん、韓国人はそんなことを気にしておらず、それを克服しなければ、韓国式の生活に慣れることはできないのだが、まだ、その域には達していない。
だから、直接出向いてお話しする、という面倒な方法を、どうしてもとってしまうのである。
さて、予定表をもらった私は、すぐさま、先週の宿題と、本日のパダスギの勉強をはじめた。このへんが、優等生っぽくていやらしい(実際、今日のパダスギは満点だった)。
そして13:00。授業が始まる。
教室にはいると、学生の1人が、「こっちに座ってください」と指示する。どうやら私の席はもう決まっていたようだ。
隣には、1級1班で一緒だったリ・ミン君がいた。
さっそく、4班のパンジャンニム(班長殿)が、宿題のノートを集めてまわる。私も、先ほど仕上げたばかりの宿題のノートを彼に渡した。
パンジャンニムは、小太りでひょうきんそうな人である。韓国で人気の司会者、カン・ホドン氏を彷彿とさせるが、このたとえもわかりにくいだろう。
わが班の学生は、全部で16人。そのうち、女子が3人である。相変わらず男子の率が高い。
そして、先生が入ってこられた。
前半の文法の先生は、カン先生である。私とほぼ同じくらいの年齢で、サザエさんのような雰囲気の方である。
とにかく、早口でまくしたてる。慌ただしいのである。「買い物しようと町まで出かけたら、財布を忘れ」てしまいそうなタイプの方である。
後半のクォン先生もそうだが、滑舌という点では、前学期の2人の先生のほうが、はるかに勝っていた。こうしてみると、1級の先生方は、かなり明瞭な発音をされていたのだな、とあらためて実感する。
今日は、「○○してはいけません」という表現を学ぶ。「授業中にタバコを吸ってはいけません」とか、「授業中に自国語を喋ってはいけません」など。
先生が1人1人に質問する。「図書館では何をしてはいけませんか?」「話をしてはいけません」
ここまではよい。今度は私のところに来て、何を思ったか「水泳場(プール)では、何をしてはいけませんか?」と質問された。
これはかなりの「むちゃぶり」である。日本語で答えることだって難しい。ましてや語彙が貧困な韓国語で、なんと答えればよいのか?
答えにつまったあげく、「…えーっと、服を着てはいけません」と答えた。
この答えに、なぜかみんなが爆笑した。先生は慌てて、「ごめんなさい。では、図書館で何をしてはいけませんか?」と質問を変えた。
ただ、この答えは、みんなのお気に入りだったらしく、その後も「水泳場では服を着るのではなく、水泳服(海水パンツ)を着なさい」という表現がくり返し例文として使われた。
さて、この班の雰囲気はどうか。
前学期の1級1班とは比べものにならないくらい、まじめである。「授業中に中国語で私語した人には、授業の最後に歌を歌ってもらう」という罰ゲームが取り決められたようで、授業中に中国語で私語する人は、ほとんどいない。基本的にみんな前向きである。
ただし、「ヨジャチング(ガールフレンド)」と「ポッポ(キス)」という言葉が好きな点は、変わらない。
いちばん驚いたのは、リ・ミン君の変貌ぶりである。1級1班の時は、寝てばかりいて、起きている顔を見たことがなかったのだが、この授業では全然寝ていない。そればかりか、授業に積極的に参加して、軽口まで叩いているではないか。
不思議である。実に不思議である。
1級1班に慣れていた私としては、多少、物足りない気がしないでもない。お二人の先生も、いい人すぎて、若干調子が狂ってしまう。前学期の先生のような強烈な個性が、はたして今後発揮されるのかどうか、しばらく見守ることにしよう。
それにしても、最初の週に授業に出られなかったのはやはり痛い。16名の学生の名前も、すべて覚えることができるだろうか?うまくとけ込むことはできるだろうか?
慣れるまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
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