壊れゆく教室
勉強熱心にみえた2級4班の中国人留学生たちが、だんだんと本来の「力」を発揮してきた。
今日は前半の文法の授業で、「○○が必要です」という表現を学ぶ。
男子学生同士の会話練習。
「ヨジャ・ファジャンシル(女子トイレ)に行くのに何が必要ですか?」
「ビデオが必要です」
「粗忽者の先生」が「コラッ!そんなこと言うもんじゃありません!」と叱りつける。みんなは爆笑。
彼らは本当に、「ヨジャチング(ガールフレンド)」とか「ファジャンシル(化粧室)」とか「ポッポ(キス)」といった言葉が好きだ。隙あらば会話練習で使いたがるのである。
続いて、「粗忽者の先生」が、愛嬌のある顔のリ・ポン君に質問する。
「この教室には、何が必要ですか?」
「美人の先生が必要です」
「美人の先生?…ナガセヨ(出ていきなさい)!」
このやりとりが、まるで漫才のボケとツッコミのような間合いだったので、私は思わず吹き出した。最後の「ナガセヨ!」が、「ホンマ、ええ加減にせえよ」みたいに聞こえたのである。
「美人の先生ならここにいるでしょ!」
韓国人の先生と中国人留学生の漫才で、日本人が笑うなんて、まさに東アジアを股にかけた笑いではないか。「粗忽者の先生」のセンスのよさも、相当なものである。
次第に、2級4班のみんなが、本来の「力」を発揮してきている。
いい感じの、壊れっぷりである。
後半の大柄の先生の授業。
教室の入口のいちばん近くに座っている内モンゴル出身のチャン・イチャウ君は、お笑い芸人のゴルゴ松本(TIM)に雰囲気が似ている。短髪で、もみあげが長い。身のこなしも、そんな感じである。
その彼が、今日、青地に、赤字で胸の部分に大きく「S」と書いたTシャツを着てきた。スーパーマンのTシャツである。
そのことに気づいた大柄の先生は、彼に「スーパーマン」というあだ名をつけた。
「スーパーマン」ことチャン・イチャウ君は、授業中によく中国語で私語する。
困り果てた大柄の先生は、「スーパーマン!席を換えますよ!」といって、私の横の席に移動させた(私の席は、教室の入口からいちばん遠い位置にある)。
私はスーパーマンに「アンニョンハセヨ」と挨拶した。
私はスーパーマンとペアになって、対話練習をする。
各ペアが練習したあと、今度はみんなの前で、実際に対話をしてみせる。
他のペアがみんなの前で対話をしているとき、私は彼に小声で話しかけた。
「いつ韓国に来たの?」
「実は1年前です。でもまだ2級なんです」
スーパーマンも、留年組か。
「本当は、日本に留学したかったんです」
「どうして韓国に留学することになったの?」
「プモニム(両親)が、日本に留学するのは難しいから韓国にしろって。やっぱり、日本に留学するのは難しいですか?」
「そうだね。難しいかもね。でもどうして日本に?」
「僕は絵の勉強をしたいんです。日本の漫画が好きなんです」
話してみると、見た目のやんちゃそうな印象とは、やや異なっていた。
大柄な先生の怒鳴り声が聞こえた。
「こらっ!スーパーマン!チング(友達)の会話練習をちゃんと聞いていた?また喋っていたでしょう」
「すいません」
責任の半分は私にもあるのだが。
「じゃあ今度は2人にやってもらいますよ」
料理教室へ受講申し込みをするときの会話。私が職員で、チャン・イチャウ君が客である。
私(職員)「いらっしゃいませ、どんなご用件でしょうか」
チャン(客)「料理を習いたくって、やって来ました」
私「どんな料理をお望みですか」
チャン「日本料理です」
私「平日コースと休日コースがありますが、どちらにしますか?」
チャン「休日は約束が多いので、平日コースにします」
私「じゃあここに名前と住所を書いてください」
チャン「入学金はいつまでに払えばいいですか?」
私「明日までに必ず支払ってください。20万ウォンです」
チャン「他に何か必要なものがありますか?」
私「エプロンが必要ですね。あと、貯金通帳と暗証番号も持ってきてください」
チャン「…なんで?」
ここでみんなが爆笑。
私も少し壊れてきたようだ。
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コメント
先輩こんにちは。お久しぶりです。
韓国での生活や語学勉強の様子など楽しく読ませていただきました。
(夢中で読みすぎて、料理をしていることを忘れ、鍋をこがしてしまいました・・・)
日本はだいぶ暖かくなってきました。韓国はどうですか?
体に気をつけてがんばってくださいね。
これからもブログ楽しみにしてまーす!
とびちー
投稿: とびちー | 2009年3月16日 (月) 20時35分