飛行機での出来事
2月28日(金)
日本へ帰る飛行機でのこと。
私の席は、3列ある席のうちの、真ん中だった。つまり、窓側の席と通路側の席に挟まれた席である。
私が飛行機に乗り込むと、すでに窓側の席と通路側の席に人が座っている。
窓側の席は、日本にビジネスに行くと思われる、韓国人の女性。
通路側の席は、一見して「極道」か?と思われる恐そうな顔つきの日本人男性。
俳優の哀川翔と寺島進を足して2で割った感じのお方である(マニアックすぎてわからないか)。
恐縮して真ん中の席に座る。
次から次へと乗客が乗り込むが、どうも通路側の席のお方の腕に体が触れるようで、そのたびに、「痛てーな、バカヤロウ」「なんだ、コノヤロウ」と、悪態をおつきになる。といって、別にお酒を飲んでいるわけでもない。
これは本物のお方かも知れない、と思い、たちまち身動きがとれなくなってしまった。
いつもより倍の汗が出て、止まらなくなってしまう。
だが、ちょっと微笑ましかったのは、その方が、誰よりも早く、シートベルトを装着したことであった。まだ、客室乗務員のアナウンスが始まる前から、しっかりとベルトをお締めになる。
なぁんだ。無法者かと思っていたが、けっこう従順な人なんじゃないか。
しかし、離陸後もしばしば右隣(通路側)の方の顔をチラッ、チラッと拝見したが、やはり恐そうな顔である。
客室乗務員の方が、軽食を持ってきた。私のところに軽食の箱を置こうとしたとき、その箱がその方の手に少し触れた。
「お手もと、ぶつかってしまい、大変申し訳ございません」
と、客室乗務員の方も、必要以上に恐縮している。
さらに、軽食を食べている最中、客室乗務員がそのお方のところにやってきて、
「ご挨拶が遅れまして大変申し訳ございません。本日もご搭乗まことにありがとうございます」
と挨拶している。そのお方は無言のまま。
いったいこの人は何者なのだろう?
さて、この航空会社の軽食は、「お寿司」に、「プレーンヨーグルト」に、「おかき」という「素敵な」組み合わせである。この航空会社はよく利用するのだが、機内食のセンスは、なんとかならんものか、と思う。
お寿司が食べ終わり、さて次はプレーンヨーグルトを食べようかと、カップの蓋を開けた途端、気圧の関係で、中のヨーグルトが、勢いよく外に飛び出した。そして、ヨーグルトが顔と服に飛び散ってしまった。
ピチャッ!
慌てて顔についたヨーグルトを拭き取ると、左隣の韓国人の女性も、顔を拭き始めた。
「すいません…」
ヨーグルトは、左隣の席の方にも飛び散ったようだ。
ということは……。
恐る恐る右隣を見る。
よかった!右隣のお方には飛び散らなかったようだ。
もしこれが、そのお方の服にでも飛び散ろうものなら、「どないしてくれるんや!今すぐ弁償できひんのやったら、ここでエンコ詰めてもらうで!」と言われたかも知れない。
そのことを妄想し、再び汗が止まらなくなる。
飛行機は無事成田空港に着陸。私も無事だった。
飛行機から降りると、その恐い顔のお方は、お年を召した貫禄のある方と合流して、なにやら談笑している。
ひょっとしてあの方は「親分」か?そして親分はビジネスクラスに、子分はエコノミークラスに乗っていた、ということか?
妄想はさらに広がる。
結局、そのお方が何者かはわからなかった。単にふつうのビジネスマンだったのかも知れない。
むかし、ダウンタウンの松本が、「なんといっても一番恐いジェットコースターは、常に横にヤクザが乗っているジェットコースターやね」と言って、「『恐い』の意味が違うやろ!」と、浜田につっこまれていたことを思い出す。
しかし、そんな恐そうな人でも、いち早くシートベルトを装着した姿は微笑ましい。決して、無法者ではなかったのだ。
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