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闘鶏とテーマパーク

4月17日(金)

今日は、語学堂の「野外授業」である。

先学期は、桐華寺とウバンランドに行ったが、今回は、慶州の文武王水中大王陵と新羅ミレニアムパークに出かける。

朝8時半、大学の駐車場に集合する。大柄の先生が久しぶりにキダ・タロー氏似の顔が描かれたTシャツを着てこられた。勝負服なのだろうか。

「おいしいお菓子はたくさん持ってきましたかー?」

と、テンションが上がっている大柄の先生がニコニコしながら私に聞く。40歳のおっさんに聞く質問ではない。

「いえ、水だけです」と答えた。

案の定、遅れる学生がいて、出発は9時過ぎになった。総勢280名。

280名もいれば、バス酔いする学生も何人か出てくる。私の乗った3号車にも何人か被害者が出て、バスが途中で何度か停車した。あれだけ荒っぽい運転で山道を走れば、仕方のないことだろう。私だって少しキテたから。

Photo_4 午後10時半すぎ、文武水中大王陵の見える海岸に到着。古代新羅の文武王が、死後、海中に埋葬されたと伝えられているが、その埋葬場所の岩が海岸から見えるのである。はやい話が、ただの海岸である。

だが、そんな岩を熱心に写真に収めているのは私だけ。私以外の学生たちは、海を見てはしゃいでいる。目的は、留学生たちに海を見せることだったのだろう。

熱心に写真を撮っていると、不思議な一行に遭遇。海に向かってお供え物をそなえたり、太鼓を叩きながら踊りのようなものを踊ったりしている。

語学堂をとりしきっているパク先生が近くにいらしたので、

「あれは何をしているんですか?」

と聞くと、

「キョスニム(教授様)、あれは、死者を弔うための儀式です。家族か親族のどなたが亡くなったのでしょう」

Photo「あの、向こうで踊っている人は?」

「あれはムーダン(シャーマン)ですよ。キョスニム」

なるほど、たしかに、太鼓を叩いて踊っているうちに、だんだんトランス状態になっているのがわかる。

興味深く見ていると、パク先生が

「キョスニム!はやくこっちに戻ってください」

とお呼びになる。

留学生が集まっているところに戻ると、「猟奇的な先生」がトラメガで、

「みんな輪になって座りなさーい」とおっしゃる。

ここからは、「猟奇的な先生」の完全な独壇場である。

砂浜に輪になって留学生たちが座る。まるで大きな相撲の土俵のようである。

「これからゲームをやります!」

まず最初に語学の先生が手本を見せる。2チームに分かれ、片足を手でもって、一本足でケンケンしながら押し合いをする。バランスを崩して両足をついた方が負け、という単純なゲームである。

「何というゲームですか?」と近くにいた大柄の先生に聞くと、

「タクサウム(闘鶏)って言うんですよ」と教えてくれた。そう言えば何となく闘鶏に似ている。

Photo_2 まず、男子学生のチーム戦。続いて、語学の先生と女子学生の対戦、と行われる。すべて、「猟奇的な先生」の一存で呼ばれた人が、みんなの前で対戦しなければならない。

対戦風景が意外と面白いので写真を撮っていると、

「では、最後の対戦でーす。語学の先生と、学生の対戦でーす。○○氏!」

といきなり私の名前が呼ばれた。

名前を呼ばれた他の学生を見ると、どうも中国人留学生以外の学生が呼ばれたようである。

日本人のおっさんがケンケンしながら砂浜にひっくり返るのが面白いと思ったのだろう。

その期待通り、思いっきり砂浜にひっくり返ってやった。

対戦が終わって輪に戻ると、わが班の学生たちが、服についた砂をはらってくれた。みんな好青年ばかりだ。

バスに戻り、一路「新羅ミレニアムパーク」へ。

はやい話がテーマパークである。古代新羅の都があった、ということで、それをイメージした建物などが広大な敷地の中に建てられている。日光江戸村と、えさし藤原の郷を合わせたような施設だ、と思えばよい。

ここで昼食をとり、4時半まで自由時間だという。ここで時間を潰すのはいささかきついなあ、と思っていると、パク先生がどこからともなくあらわれ、

「キョスニム!2時半から野外公演がありますから、ぜひ見てみなさいよ」

とおっしゃる。

ぶらぶらと時間を潰し、2時過ぎに公演会場に着くと、すでに小学生の団体が座席のかなりを占めている。

巨大な城壁のセット、そしてその前に大きな池。これが、野外公演の舞台である。そして、その池の前に、簡単な座席が設けられている。

2時半、公演が始まる。巨大な城壁のセットと、その前の池を縦横に使った壮大な歴史活劇である。

内容は、平穏に暮らしていた古代新羅の社会に、ある日突然、中国の唐が戦争を仕掛けてくる。それを、勇敢な新羅の兵士たちが撃退する、という話である。

公演の中では、唐は徹底的に悪者として描かれる。唐の卑劣な攻撃に、新羅は一時は危機を迎えるが、「3つの力」のおかげで、形勢は逆転していく。

Photo_3クライマックスの、船を使った海戦のシーンでは、小学生たちが「新羅!新羅!」と声を合わせてコールする。そして唐の船は大きく傾き、池の中に沈んでゆく。会場からは大きな拍手が沸き起こった。

なんとも複雑な思いである。こういう場でもナショナリズムがかいま見えてしまうとは。これを見ていた中国人留学生たちは、どういう思いを抱いただろう。

ふと近くを見ると、中国人留学生の一人が、いつの間にか韓国の小学生たちと仲良く話していた。私の心配は杞憂だったかもしれない。

公演が終わって、一人でブラブラ歩いていると、語学の先生のグループと遭遇。

「あれ、一人ですか?チングは?」

と聞かれたので、

「年をとっているので(一人なんです)」

と答えた。

実際、40歳の日本人のおっさんが、野外授業に参加する、というだけでもかなりキツイ。「あの日本人のおっさん、キモイ」と、中国人留学生たちや語学の先生たちに言われないように、できるだけ出しゃばらず、ひっそりとしていたいのだ。

それにしても、若い、というのはやはりうらやましい。これから経験したり、吸収したりすることが、山ほど待っている。野外授業に参加すると、とくにそれを痛感する。彼ら一人ひとりに、いろいろな可能性がみえてくる。

…などという感慨にひたりながら、帰りのバスの中で、iPodに入っていた荒井由実の「あの日にかえりたい」を久しぶりに、柄にもなく聞いてしまった。

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