2級4班の人びと
4月10日(金)
今日は中間考査の成績が発表される。
わが班のみんなは、そわそわしている。結果を早く知りたくて仕方がないようだ。
今週は、中国人留学生たちが先生にそればかり質問していた。
ここ数日間、学生が「先生、中間考査の点数はいつわかりますか?」と質問すると、先生は決まって「明日にわかるかも知れないわよ」とお答えになる。だが実際は、今日までのびのびになった。
じらしにじらされた学生たちは、自分の点数を早く知りたくて仕方がないようである。
「先に授業をしてから、点数を教えましょう」と先生はおっしゃるが、「とにかく、先に点数を教えてください!」と学生たちは懇願する。
「でも、見たら落ち込んで勉強できなくなるわよ」
「それでもいいです。落ち込まないから教えてください!」と言ってきかない。
いつも不思議に思うが、どうしてそんなに結果を早く知りたがるのだろう。一生懸命勉強しなければならないことには変わりないのに。
案の定、落ち込んだ人たちが何人かいた。私は、平均で9割以上とれていたので一安心。
そして、授業がはじまる。
文法の時間、私は先生がホワイトボードに書く内容を、すべてノートに書き写す。これは中学、高校時代からの癖である。
ところが、中国人留学生たちは、それらをほとんど書き留めることをしない。結局、まじめにノートをとっているのは、わが班では私だけである。
ところが、それが時に災難をもたらす。
「粗忽者の先生」は、私がひそかにそう名付けているように、かなりの慌て者である。ホワイトボードに書くときも、その粗忽ぶりが発揮される。
先生がかなり長い例文を書く。私も、ほぼ同じスピードでそれをノートに書き写す。すると先生はしばらく考えて、
「あら、この例文じゃなかったわ」
といって、全部消してしまう。私もそれに合わせて消しゴムで消す。
これが何回か繰りかえされる。そのたびに私は、せっかく書いた例文を何度も消すことになる。
とりわけ今日はそれがひどかった。私がそのたびに消しゴムで消している姿を見て、中国人留学生たちがクスクスと笑い出す。
「粗忽者の先生」もそのことに気づくと、今度は、わざと間違えた例文をいったん書いて、消したりするようになる。
それにあわせて私も書いては消し、書いては消し、をくり返す。さらに、
「あら、ここは赤で書くべきところだわ」
と言って、今度はいったん書いた字を消して赤字に書き直す。
私もそれに合わせて、いったん鉛筆で書いた文字を消して、筆箱から赤ボールペンを取り出して書き直す。
中国人留学生たちは、その姿が面白いらしく、ゲラゲラ笑いはじめた。かくして、「粗忽者の先生」に翻弄される「まじめな学生」、という俄コントができあがる。
1カ月も経つと、わが班の人たちの人間性とかキャラクターがわかってくるし、この中で自分はどういう役割を演じるべきか、というのがわかってきて、面白い。
「韓国語の勉強で、何が一番大変ですか?」
先生がよく聞く質問である。何度同じことを聞くんだろう、と思いながら、「マラギ(話すこと)が難しいです」と私が答えると、先生はル・ルさんに質問する。
「じゃあ、マラギが上達するにはどうしたらよいでしょうか。ル・ルさん、アドバイスをしてあげてください」
するとル・ルさんは、
「ピョゲ マルハミョン テヨ(壁に向かって話せばいいです)」
と答えて、みんなが爆笑する。以前、私が言って先生に怒られた言葉だ。中国人留学生たちは、これが意外とお気に入りらしい。
わが班は、1週間に1回、席替えをする。同じ人とばかり隣どうしだと、会話の練習が上達しないから、という大柄の先生の配慮からである。毎週金曜日、週の授業の最後にくじ引きで席を決定する。
今週、私の相方になったのは、雨上がり決死隊の蛍原に髪型までそっくりのホ・ジュエイ君。一見おとなしい感じだが、会話練習では、シュールな会話で相手を翻弄する。
私もそれにつきあわされるわけだが、私も彼に負けないシュールな会話で困らせてやろう、とヘンな意地を張ってしまうようになる。結局、収拾がつかなくなってしまうのだが。
2人での会話練習が早く終わると、韓国語で雑談。将来の夢とか、故郷の吉林省の話とかを、いろいろと聞かせてくれる。
その、ホ・ジュエイ君は、2人での会話練習の最中に、「日本語で『カムサハムニダ』は、何というのですか?」と聞いてきた。
「『ありがとうございます』だよ」と答えると、その発音をローマ字と漢字が混じったような、不思議な表記で書きとめ、「アリガトウゴザイマス、アリガトウゴザイマス」と、小声で念仏のように何度も唱えはじめた。
会話練習がひととおり終わり、「では、来週の席替えのくじ引きをはじめまーす」と、先生が用意したくじをみんなに引かせて、来週の席順を決める。そして今週の授業が終わった。
ホ・ジュエイ君との会話練習も、今日で終わり。
「アリガトウゴザイマス」と、ホ・ジュエイ君は私に言って、教室をあとにした。
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