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大激論!

Photo 4月2日(木)

大邱は、ちょうど今が、桜が満開の時期である。

先々週、暖かい日が続いたおかげで桜が開花したが、先週、寒い日が続いたため、満開まで少し足踏みしていたようだ。その間、桜の花を楽しむことができた。

日本のように、桜の花の下で宴会をやる、という光景はあまり見かけない。むしろ、桜の木の下に集まって、本当に、桜の花を観賞している姿が目につく。本当の意味での花見である。

Photo_2 桜の並木道をくぐりながら、語学堂に向かう。

今日の語学の前半の授業は、リスニングである。

例文の会話を聞いて、後の設問に答える、というもの。ところが、この設問をめぐって、わが班が紛糾した。

例文は、次のような会話である。

店員「いらっしゃいませ。お二人ですか。こちらにお座り下さい」

ウィルソン「メニューを持ってきてください」

店員「こちらです」

スミ「この店では何が一番美味しいですか?」

店員「ビビンバも美味しいですし、ソルロンタンもいいですよ」

ウィルソン「(スミ氏に)以前に食べてみたことがあるんですけど、冷麺も美味しいですよ」

店員「最近は天気が暑いので、冷麺にされるお客様が多いですよ」

ウィルソン「スミさんは何にしますか?」

スミ「熱いのはいやなので、…冷麺にしてみます」

店員「お客様も同じものにされますか?」

ウィルソン「私は昨日お酒を飲み過ぎたので、熱いものを食べたいなあ。…ソルロンタンにします」

この例文に対して、次のような設問があった。

「ウィルソン氏は、以前に何を食べてみましたか?」

この設問を解く鍵は、ウィルソン氏がスミ氏に言った、「以前に食べてみたことがあるんですけど、冷麺も美味しいですよ」という言葉である。

ここからふつうに考えれば、「冷麺」が正解である。

ところが、この答えに、キザなタン・シャオエイ君が噛みついた。

「以前に食べたことがあるんですけど」と言ったのは、その前に出てきている「ビビンバ」と「ソルロンタン」のことも含まれているはずだ。だから、ウィルソン氏が食べたのは、「ビビンバ」「ソルロンタン」「冷麺」のすべてでなければおかしい、と。

一瞬どういうことかよくわからなかったが、もう一度よく例文の会話を聞きなおしてみると、店員が、「ビビンバもソルロンタンも美味しいですよ」と言ったのを受けて、ウィルソン氏が「以前に食べてみたことがあるんですけど」と言っているようにも聞こえる。そのことに注目したタン・シャオエイ君は、「以前に食べてみたもの」というのは、その直前に店員が言った2つの料理を受けてのものだ、と考えたわけである。

しかし、「以前に食べてみたことがあるんですけど」は、その後の「冷麺」にかかっている表現だ、というのは、語感からして明らかであろう。だから、タン・シャオエイ君の解釈は誤りなのである。

「粗忽者の先生」もその点を説明したが、タン・シャオエイ君は納得しない。そればかりか、ほかの中国人留学生たちのうちの何人かも、この点について納得していないようだった。

そして、中国人留学生たちの間で、大激論がはじまった。ウィルソン氏が以前に食べたのは、「冷麺」だけだったのか、それともほかの2つも食べたのか。教室がしばらく騒然とする。

どうもよくわからないが、中国語の語感からすれば、「以前に食べたことがあるんですけど」という言葉が、後の「冷麺」にかかる表現である、というのが理解しがたいらしい。

だから先生の説明を聞いても、納得できないようなのである。

むろん、先生の説明を聞いて、納得した中国人留学生もいる。だから、国論を二分する大激論に発展してしまったのである。この議論は、しばらく収まらなかった。

先を急ぎたい「粗忽者の先生」は、次のような提案をする。

「わかったわかった。じゃあ多数決をとりましょう。『冷麺』だけを食べた、と思う人?」

私を含めて5人が手をあげる。

「じゃあ3つとも全部食べた、と思う人?」

これも5人。残りの人はどちらにも手をあげなかった。

「わかりました。じゃあ、全部正解にします」

えぇ!そんなのアリかよ。どう考えたって、正解は「冷麺」じゃんか。

「語感」とはつくづく難しい。韓国語と日本語の語感がきわめて近いことはわかるが、中国人にとっては、この語感を理解するのはなかなか難しいのかも知れない。

後半の読解の授業。

タン・シャオエイ君は休憩時間に、大柄の先生にも先ほどの議論を蒸し返して、「冷麺だけではなくて、ビビンバとソルロンタンも食べたと思うんですけど」と質問している。大柄の先生も必死に説明されたが、あまり納得していないようだった。

細かいところにこだわり、いつまでも食い下がるところは、いかにもタン・シャオエイ君らしい。タン・シャオエイ君の答えは間違っているが、しつこくこだわるところは、彼の持ち味だと思う。

後半の授業では、「韓国での失敗談」というテーマの文章を読む。

例文には、韓国に留学している学生が、留学当初、メニューの読み方がわからず、料理の名前を縦読みしなければならないのに横読みしてしまって店員に笑われた話とか、「冷麺はじめました」という張り紙をみて、これが新メニューだと思い、「すいません、『冷麺はじめました』下さい!」と店員に言って大笑いされた話、などが書かれていた。

「どうですか?面白いでしょう」

先生はそうおっしゃるが、ありがちな「あるあるネタ」である。こういう「あるあるネタ」は、どこも共通しているものなのだな。

「みなさんは、何か失敗談がありますかー?」

まるまるとしたパンジャンニムが自分の失敗談を説明する。

「僕は家で、1人でフライドチキンを4人分食べました」

「どういうことですか?」と先生。

「最初、ある店に電話をかけて、フライドチキン2人前を配達するように注文したんですけど、自分の住所を間違えて教えたことに、電話を切った後になって気がついたんです。それで、届けてくれないだろうと思い、別の店に、フライドチキン2人前を注文したんです。そしたら、最初に電話した店の人が、どういうわけか、僕の家を探し出して、フライドチキン2人前を配達してくれたんです。それで、別の店のと合わせて、4人前を食べました」

まるまると太ったパンジャンニムが言うからこそ、可笑しい。話術も冴えている。

これぞ、伊集院光氏などがいう「デブのあるあるネタ」ではないか。パンジャンニムは、よく心得ている。

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