チャン・イチャウ君祭り
4月22日(水)
「粗忽者の先生」が教室に入ってくる。
昨日に引き続き、孤高の美青年、ヤン・シニャン君が来ていない。
先生が、「ヤン・シニャンは今日も来てないの?どうしたの?」
先生のすぐ近くに座っていた「孫悟空」ことチャン・イチャウ君が答える。
「…チュゴッソヨ(死にました)」
「……」
先生は無視して授業を始める。
チャン・イチャウ君は「いじられキャラ」である。
今日は、文法で「○○してみたことがある」という表現を学ぶ。
先生が私に向かって、「この文法を使って、誰かに質問してみてください」とおっしゃる。
迷ったあげく、「チャン・イチャウ氏!」と言って、質問をはじめる。
すると、ここでなぜか笑いが起きる。チャン・イチャウ君を指名したことが可笑しかったようだ。
「馬に乗ってみたことがありますか」「あります」内モンゴル出身の彼ならではの答えである。
すると、これで火がついたのか、みんなの集中攻撃がはじまる。
次の表現は、「○○が○○しているのを見た」という表現。
「この文法を使って文章を作ってみなさい」と先生。
すかさずパンジャンニム(班長殿)が、
「私は、チャン・イチャウ氏が馬に乗っているのを見ました」
と、先ほどの私の質問にかぶせた表現を作りあげる。
すると、他の人たちも、次々とチャン・イチャウ君を主語にした文章を作り始めた。
「チャン・イチャウ氏が、女子トイレに入るのを見ました」
「チャン・イチャウ氏が、ヨジャ・チング(ガールフレンド)と、ポッポ(キス)しているのを見ました」
「チャン・イチャウ氏が、…」
と、まあ、相変わらずの文章を次から次へと作り出す。そのたびにあきれつつも爆笑する。
さらにこの「チャン・イチャウ君祭り」は、後半の会話表現の授業でも続く。
友達をスポーツ観戦に誘う、という会話練習。
相変わらずホ・ジュエイ君とマ・ロン君の会話がよくわからない。
ホ「サッカーのチケットがあるんだけど見に行かない?」
マ「いいね。チームはどこ?」
ホ「中国のチームだよ」
マ「サッカーの試合はテレビでしか見たことがないんだ」
ホ「直接見ると、サッカーの練習も見ることができるよ。あの有名な、チャン・イチャウ選手も間近に見ることができるよ」
マ「え!あの有名なチャン・イチャウ選手を見ることができるの?」
ホ「だって、チャン・イチャウ選手はふだんから運動場に住んでいるからね」
マ「試合はどこでやるの?」
ホ「豪州のシドニー運動場」
「そんなところでやったら、入場料より飛行機代の方が高いでしょう!」と先生。ツッコむところはそこか?
ホ「じゃあサッカーはやめて映画を見よう」
マ「何の映画?」
ホ「中国映画。有名な俳優のチャン・イチャウ氏が出ている…」
ここで、先生もさすがにストップをかける。「いいかげんにしなさい。だいたい、チャン・イチャウはサッカー選手だったじゃないの」
またしてもツッコミどころがおかしいんじゃないか?
彼らもまた、前半の授業に引き続き、チャン・イチャウ君の名前をかぶせてきた。留学生たちは大笑いだが、前半の授業の様子がわからない大柄の先生にしてみたら、なぜ唐突にチャン・イチャウ君の名前が何度も出てくるのか、わからなかっただろう。
「いいですかみなさん。面白ければいいってもんじゃないんですよ。会話表現の時間なんですからね。何時に、どこで待ち合わせるとか、必要な会話をしなければいけませんよ!」
同じボケをくり返していく笑いの手法を、演芸の業界用語で「天丼」という。チャン・イチャウ君をくり返し登場させるのは、まさにこの「天丼」の手法に近い。
これが日本だったら、一歩間違えたら特定の生徒を誹謗中傷するイジメだ、と言われかねないが、彼らの間にいじめっ子、いじめられっ子の関係は存在しない。笑いのひとつの手法として、はっきり認識しているのである。
「天丼」といえば、次にあてられたパンジャンニムことス・オンイ君と、まじめ美人のル・ルさんの会話も、その手法を使っている。
ス「いらっしゃい…。あ!アガッシ(お嬢さん)!前回も乗ってくれましたね。奇遇ですね」
ル「あら、アジョッシ(運転手さん)!」
予告なく、突然、「タクシーの運転手の客の会話」が始まる。実は前回、「タクシーの運転手と客の会話」の練習で、ス・オンイ君が運転手役に、ル・ルさんが乗客役に扮して秀逸な会話を披露していた。ここでみんなが、前回の続きであることに気がつき、爆笑する。
ス「今日はどちらまで?」
ル「バスケットボールの試合を見に行くんです。時間とお金がないんで早く行ってください!」
ス「バスケットボールですか、テレビでしか見たことがありませんね」
ル「直接見ると面白いですよ。アジョッシ、今度一緒に見に行きましょう。」
ス「昼間は仕事中ですからね。それに、タクシーの中にテレビもありますし」
ル「運転中に見たらダメですよ」
ス「大丈夫ですよ。…着きました。ここで停めていいですか?」
ル「ここで停めてください」
先生がここで注意する。
「会話はよくできてますけど、いいですか、『友達をスポーツ観戦に誘う』という会話練習ですよ。誰が『タクシーの運転手と客の会話』をやれ、と言いましたか?何時にどこで待ち合わせるとか、そういう表現を入れないと練習になりませんよ」
そうはおっしゃるが、ス・オンイ君とル・ルさんによる「タクシーの運転手の客の会話」は、今後シリーズ化しそうな予感。
まったく、ルール無視の会話練習というほかないが、「笑い」に対する彼らのあくなき追求には脱帽する。
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