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カップルTシャツ

4月29日(水)

文法の授業で、「○○しながら○○する」という表現を学ぶ。

「リ・ポン!前に出て歌って踊りなさい」

突然、「粗忽者の先生」が、愛嬌のある赤ら顔のリ・ポン君を指名する。

え?なんで?という顔をするリ・ポン君。

「いいから早く歌って踊りなさいよ。でないと文法の勉強ができないでしょ」

意味がわからないが、リ・ポン君はかたくなに拒否する。

「ソンセンニム(先生)、腰が痛くて踊れないんです」

リ・ポン君は、本当はみんなの前で踊るのが恥ずかしいようである。

「いいから踊りなさい。踊らないと0点にするわよ」

先生も、今回ばかりはなぜかしつこい。

まわりの学生たちも拍手する。当然私も大きな拍手。

それでもリ・ポン君はいやがるが、先生も引き下がらない。

リ・ポン君は仕方なく立ち上がって、歌を歌い始める。

「歌だけではダメよ。踊りも踊りなさい」

「待ってください。歌が盛り上がったところで踊るんですから」

そういうと、例の、キモチワルイ腰つきの珍奇な踊りを、歌に合わせて踊り始める。

その瞬間、「粗忽者の先生」は本気で大笑いする。よっぽどツボらしい。

歌と踊りが終わると、リ・ポン君は後悔に満ちた顔で席に戻る。

「さあ、いいですか。今のを韓国語で言ってみてください。『歌を歌いながら、踊りを踊る』ですねー」と先生。

この一文を説明するために、わざわざリ・ポン君に歌と踊りをさせたのか。本当は、先生自身が単にリ・ポン君の踊りを見たかっただけじゃないのか?

ここ最近、「粗忽者の先生」も、わが班を完全に楽しんでいる。

後半の授業、3時間目。

「教科書の練習問題をやってくださーい。終わったら当てますからねー」と大柄の先生。

必死になって練習問題をやっていると、まわりがどうもうるさい。先生も一緒になって大騒ぎしている。

うるさいなあ、と思いつつも、いつものことだ、と思いなおし、下を向いたまま練習問題を解き続ける。

終わって顔を上げると、大柄の先生が私におっしゃる。

「いま、何があったか気づきましたか?」

「いえ、練習問題をやっていたので…」

何があったんだろう?

すると横にいるパンジャンニム(班長殿)こと、ス・オンイ君が、

「前の2人の服を見てください」と言う。

ちょうど私の正面に座っている、キザなタン・シャオエイ君と、まじめ美人のル・ルさんの2人を見て驚いた。

「あ、ペア・ルックだ」

目の前に座っていたのに、いまのいままで全然気がつかなかった。

いまごろ気づいたのか、と言わんばかりに、教室は爆笑。

「まさか、…2人は、…つきあってるの?」

パンジャンニムがうなずく。

「先生も驚いたんですよ」と大柄の先生。だから一緒になって騒いでいたのか。

だけどおかしい。美人のル・ルさんには、たしか大学生のナムジャ・チング(ボーイ・フレンド)がいたはず。韓国に2年も暮らしているキザなタン・シャオエイ君には、ヨジャ・チングがいなかったのだろうか。

「2人はいつからつきあっているの?」と、大柄の先生が根掘り葉掘り聞き始める。

「先週の土曜日からです」とタン・シャオエイ君。

電光石火、とはこのことである。

パンジャンニムも、「きっとその時、2人の目から火花が出たんでしょう」と、目から火をふくジェスチャーをして笑いをとる。

当の2人は、みんなの知るところとなって、まんざらでもない、という顔をしている。

さて、わからないのがペア・ルックである。韓国では「カップルTシャツ」というらしいが、町を歩いていると、カップルがやたらこの「カップルTシャツ」を着て歩いている。いい年齢をした夫婦でも着ている場合がある。日本では考えられないことだろう。中国人留学生も、「カップルTシャツ」を臆面もなく着られるのだな。

キザでおしゃれで大人びたタン・シャオエイ君と、美人でまじめでお菓子好きのル・ルさんは、たしかに絵になるカップルではある。

わが班でのカップル誕生、ということもあって、他のみんなも心なしかウキウキしている。休み時間の間も、2人に関する話題は尽きない。

不思議なもので、彼らの話す言葉が全然わからないにもかかわらず、何を話しているかが、なんとなく想像できるようになってくる。

リ・ポン君が、「孫悟空」ことチャン・イチャウ君を指さして、みんなに何か提案をしている。他の人びともそれに賛同する。

「なあなあ、2人の結婚式に、チャン・イチャウが司会したらよくねえ?」

「いいね、それは」

「やだよ、俺は」

そう言っているように聞こえる。

チャン・イチャウ君が、隣に座っているチエさんに何かヒソヒソと話しかけて、それを聞いたチエさんがチャン・イチャウ君をひっぱたいている。

「なあなあ、俺たちもつきあわねえか?」

「バカ!」

そう言っているように聞こえる。

休み時間が終わり、4時間目の会話練習。いつも以上に明るい雰囲気の授業風景。私も、今週のパートナー、パンジャンニムと韓国語の会話が弾む。

そんな2級4班の授業も、来週の金曜日で終わりである。

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