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ヘクシロム

5月25日(月)

時事的な話題は書かない、と決めていたのだが、こういろいろなことがあると、やはり書きとめておいた方がいいのか、とも思えてくる。

ひょっとしたら、永井荷風とか山田風太郎の日記のように、後世になって史料的価値が出てくるかも知れない。

前大統領逝去のニュース以来、つとめてテレビやラジオのニュースを聞くようにしている。

ニュースを見る限り、全国的に弔問ムード一色である。各地に臨時の弔問所が作られ、人々がひっきりなしにお花を献げている。

インターネットのDaumや、ヤフー!コリアといった有名なサイトも、最初のページのタイトルが、前大統領に哀悼の意をこめて、白黒を基調とした色遣いに変わっている。

ヤフー!コリアのタイトルの下には、「いっぱいの情熱と素朴な微笑が懐かしい。あなたは私たちの胸の中に残るだろう。どうか安らかにお眠りください」と、メッセージが書かれている。

弔問する人たちの様子を見ていて印象的なのは、人々が次々と、遺影の前に、火をつけたタバコを献げていることである。

報道で明らかにされている、山の上での前大統領の警護員との最後の会話は、次のようなものだったという。

「タバコはあるか」「いえ、ありません。持ってきましょうか」「いや、必要ない」

前大統領は、最後の一服がかなわないまま、旅立った。

このニュースを聞いた人たちが、こぞって、タバコを前大統領に献げたのである。

さて、今日の昼も、外を歩きながらラジオを聞いていたら、突然、慌ただしくニュースが始まり、スタジオのアナウンサーが、各地に散らばっている記者をひっきりなしに呼びかけている。

(こんどは何があったのだろう…)

注意深く聞き取ろうとするが、いかんせんリスニング能力がないのでよくわからない。「プクハン(北韓)」という言葉が聞こえてきたので、北朝鮮がらみのニュースであることは間違いない。

次に頻繁に聞こえたのが、「ヘクシロム」という言葉。アナウンサーと記者との電話でのやりとりで、何度も出てくる。

「ヘクシロム」ってなんだろう?新種の病気か?災害か?

「地震」という言葉も、なんとなく聞こえてくる。やはり災害だろうか。

とにかく、やりとりの様子から、大変なことが起こっていることは間違いない。

気になって、研究室に戻ってインターネットのニュースを確認する。

「北朝鮮、地下核実験」とある。

「ヘクシロム」=「ヘク(核)シル(実)ホム(験)」か。

ようやく合点がいく。

最初、地震のニュースか?と思ったのも、聞き違い、というわけではなかった。核実験の際に、地震のような揺れが起こった、というのである。

次から次へといろいろなことが起こる。この先、どうなってゆくのだろう。

あと1週間でパンハク(休暇)も終わり。水曜日からは、妻がいよいよ韓国に留学する。6月から、また新しい3カ月が始まる。

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