パンジャンニムの底力
5月1日(金)
わが班のパンジャンニム(班長殿)ことス・オンイ君は、頼りになる班長である。
まるまると太っているその体格に加え、人なつっこい顔には、人のよさがにじみ出ている。班長の仕事をちゃんとこなす一方、独特の話術でわが班の人たちを笑わせる。
以前、2級4班でノレバン(カラオケ)に行ったときも、班長が全部支払ったという。なんともかっこいいやつではないか。
いつも不思議に思うことがあった。
読解の時間、彼は韓国語の文章をものすごく早く読み終わる。私がまだ半分くらいしか読み終わっていないのに、彼は全部読み終わって、問題を解き終わっている。
もちろん、私の読解のスピードが遅いことも関係しているのだが、それにしても早すぎる。
今週、彼の隣に座ったので、彼に聞いてみた。「どうしてそんなに早く読めるの?」
すると彼は、「韓国に来る前に中国で韓国語を6カ月勉強したんです」と答えた。
たしかに、彼は韓国語がスラスラと出てくる。「韓国語も上手だよね」
「でも発音が悪いですから」と謙遜する。
正直なところ、彼の発音はそれほどきれいなものではない。だが、韓国語に関する反射神経は、抜群のものがある。
今日、その理由の一端がわかった。
休み時間、トイレから戻ると、大柄の先生が私に興奮して話しかけてきた。
「知ってました?パンジャンニムは、『スピードオーバー・スキャンダル』を、7回も見たんですって!」
「スピードオーバー・スキャンダル」は、チャ・テヒョン主演のコメディ映画である。昨年末に公開され、私も見た。私が、韓国へ来てはじめて映画館で見た映画である。
「え?そうなの」と、パンジャンニムの方を見ると、
「だって、面白かったですから」と言って、映画の1シーンを忠実に再現して、周りを笑わせる。
たしかに面白い映画だったが、くり返し見ようというエネルギーまではなかった。ところがどうだ。パンジャンニムは、好きなものに対して徹底してのめり込んでいるではないか。この執着心こそが、彼の底力になっているのではないか、と、あらためて気づかされる。
(…俺はそこまで執着しているか?)
さて、相変わらずわが班は、授業中も休み時間も騒がしいのであるが、今日は少し様子がおかしい。
私の右隣に座っている、いつも素直で元気なポン・チョンチョンさんが、まったく元気がないのである。
いつもなら、授業で先生が問いかけた質問に真っ先に答えるのに、今日はまったく答えようとしない。周りの人たちの話にも加わろうとはしない。
どうも落ち込むことがあったようである。
そのことを察したのか、休み時間、パンジャンニムが、黙って座っているポン・チョンチョンさんの席までやってきた。そして、韓国語でひっそりと話しかける。
「ケンチャナヨ(大丈夫)?」
ポン・チョンチョンさんが静かにうなずく。
「シガニ イスミョン カッチ チョニョク モグルカヨ(もし時間があったら、今日、一緒に晩ご飯でもどう?)」
ポン・チョンチョンさんは、少し微笑んで、「チョアヨ(いいわよ)」と答えた。
パンジャンニムらしい心遣いである。どこまでも優しいやつだ。それでポン・チョンチョンさんがどのくらい癒されたのかはわからないけど。
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