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同病相憐れむ

5月21日(木)

セミナーで研究発表のため、扶余に行く。

「セミナー」とは、韓国では、学会の研究発表会とか、研究集会、といった程度の意味だろうか。日本ではあまり使わないかもしれない。

扶余は、三国時代の百済という国の都が置かれた場所である。今は交通が不便な、田舎町、といった印象である。

Photo ここにある博物館で、特別展が開かれていて、その特別展に関連したセミナーを行うので、発表して欲しいと、ずいぶん前にその博物館の研究官の方に依頼された。

その研究官の方とは、彼が日本に留学しているときに一緒に勉強したこともあり、そうしたご縁で、声をかけていただいたのだろう。日本からの旅費がかからない、というのも、大きな理由かも知れない。

だが、その研究官の方がとてもお忙しいようで、当日、何時にどこに行けばよいかがわからない。しびれを切らして前々日に電話すると、「2時から始まりますので、それまでに来てください」とのこと。

朝9時25分のKTXで大田(デジョン)に向かう。そこから、バスで扶余に向かう。大邱から、しかもひとりで扶余に行くのがはじめてだったので、どのくらい時間がかかるのかがまったくわからなかった。

結局、3時間かかって、ようやく扶余に到着。昼食をとってから会場に着いたのが、1時だった。

セミナーでは、基調講演の先生が1人、研究発表者が5人の計6人が発表する。うち日本人の発表者は、基調講演をなさる先生と、私の2人である。

会場で、日本からいらした、基調講演をなさる大御所の先生と、久しぶりに再会する。もう古稀も近いのだろうと思うが、まだまだ学問に対して貪欲で、お元気である。私の師匠筋にあたる先生ではないのだが、私のこともなにかと気にかけてくださる。

2時からセミナーが始まり、6時半に終了。交通の便が悪い扶余で、平日の、しかも大雨の日、さらには地味なテーマにもかかわらず、100人以上の人が聞きにきていたという。

あとで大御所の先生から、日本の某国営放送の教育テレビでやっている大型シリーズ企画の番組が、セミナーの様子を撮影していた、と聞いた。「ひょっとすると、このセミナーの様子が5秒くらい映るかも知れないよ」と、その先生はおっしゃった。

終わって、打ち上げの夕食会。そこで、日本からソウルに留学している、ある研究者の方とはじめてお会いする。私より少し年下のその方は、「平日はソウルの某大学の語学堂の授業のために身動きがとれないのですが、ようやくパンハク(休暇)になったので、聞きにきました」とおっしゃった。聞くと、3月に韓国にいらして、私と同じレベルの2級を終わったばかりだという。

そこから、その方と語学堂の話題で盛り上がる。

「語学堂に通っていると、他のこと何もできないでしょう」と私。

「ええ、もっと研究ができるかと思ったんですが、それどころじゃないんですよね。ストレスもたまりますし、毎日が憂鬱なんですよ」

「中間試験と期末試験の前はとくに憂鬱になりますよね」

「そうですよね!私なんか、直前になると吐きそうになるんですよ。で、試験が終わったからといって、心が晴れるわけでもないですし…。自己嫌悪に陥りますから」

「そうそう!私なんか、本気で死にたいと思いましたもん

同病相憐れむ、といったところか。

夕食会が終わり、今回の特別展とセミナーで大車輪だった研究官の方と、若手数人で2次会へ。研究官の方も、ようやく解放された、という感じで、話がはずんだ。先ほどの研究者の方とも、ひきつづき語学堂の「あるあるネタ」で盛り上がった。(つづく)

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