大いなる勘違い
5月20日(水)
午後、用事があって、語学堂の建物の1階の、パク先生のところに行く。
パク先生は、語学堂の韓国語の授業をとりしきっておられる先生である。いつも1階の事務室におられるので、実際に韓国語を教えておられるわけではないようだが、中国語がめちゃくちゃお上手なので、中国人留学生たちの絶大な信頼を得ている。また、恐れられてもいる。
「パク先生が1階でお呼びですよ」
と、授業中に先生から言われると、中国人留学生たちは青ざめるほどである。
私も緊張して、1階の事務室の戸をたたく。
「あら、キョスニム!こちらに座りなさい」
私は6月以降のことについていろいろ説明するのだが、暑さと緊張で、例によって、大汗をかき始める。
パク先生は、汗が気になったのか、トイレットペーパーを持ってきて、
「汗をふきなさい」とおっしゃる。「暑いなら半袖を着なさい、半袖」
いちおうこちらの説明を理解していただいたようだった。
「ところでキョスニム、3月に日本に一時帰国したときに、『日本の美味しいお菓子を買ってきてください』とお願いしたのに、買ってきてくれなかったわね。忘れたのかしら」
一瞬、何のことかわからなかったが、ハッと気づく。
2級のクラス分けの掲示を見に語学堂に行った2月末のことである。1階の事務室にいらっしゃるパク先生に挨拶に行ったとき、パク先生から「キョスニム!奨学金がもらえるわよ」と教えていただいた。
そして先生は、「これで日本に帰っておいしいものでも食べなさいよ」とおっしゃった。
このことは、その日の日記にも記している。
しかしこれは大きな勘違いだった。パク先生は、「これ(奨学金)で日本に帰っておいしいものでも食べなさいよ」とおっしゃったのではなく、「これ(奨学金)で日本に帰っておいしいお菓子でも買ってきてちょうだい」と、おっしゃっていたのである。
そのことに、いまさらながら気がついた。
「す、すいません…。忘れてました」
「冗談ですよ。冗談」
そう先生はおっしゃったが、このあとも何度か「どうして日本のおいしいお菓子を買ってきてくれなかったのかしら」とくり返しつぶやいていたので、半ば本気であてにしていたのだろう。
自分の聞き違いを恥じるとともに、(あの時は聞き取れなかったけど、いまは聞き取れるんだな)と、知らず知らずのうちにリスニングが少しずつ上達していることに気づく。
研究室に戻って、さっそく6月から韓国に留学する妻に、「日本のおいしいお菓子をおみやげに持ってきてください」とメールしたのはいうまでもない。
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