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期末考査(2級)

5月9日(土)

大邱では、本日の最高気温が34.4度であった。

本日の期末試験の時間割も、いつもと同じである。

9:00~10:00  文法

10:10~11:00 読解

11:10~12:20 作文

12:30~13:10 リスニング

14:00~     会話表現

文法から作文まで、なんとか一通りこなすが、リスニングの試験から、様子がおかしくなる。

スピードが、前回の中間試験にくらべて、明らかに速くなっていて、ほとんど聞き取れない。いや、正確に言えば、聞き取れるのだが、聞いた内容をすぐに忘れてしまうのである。

昔から、私には他人の話を聞き流す癖がある。最近は妻の話を聞き流すことが多く、いつもおこられる。

ひごろ、他人の話を聞き流しているせいか、集中して人の話を一言も漏らさず聞く、という能力が欠如してしまっている。その悪い癖が、リスニングの試験にもあらわれたのかも知れない。

午後のマラギ(会話表現)の試験は、もっと悲劇であった。

私の試験時間は、2:40~50の10分間である。開始時間の直前、試験室である4階の演習室に向かう。

階段で、白縁眼鏡の好青年、ル・タオ君とすれ違う。

挨拶だけして行こうとすると、呼びとめられた。

「マラギの試験は、最初の文法がちょっと難しかったです。それと、次の対話は簡単でした。飛行機の予約と、友達を公演に誘う、というやつです」

「ありがとう」

先に試験を受けたル・タオ君が、親切にも教えてくれたのである。

ル・タオ君は、本当にいい青年だ。以前、野外授業で、砂浜で闘鶏(タクサウム)をやらされたとき、転んで服についた砂をはらってくれたのは彼だった。ついこの間も、「知ってますか?大邱で『テジカンギ』(豚インフルエンザのこと。直訳すると豚風邪だが、中国人留学生はなぜかこう言っている)の患者が1人出たそうですよ。人の集まるところには行かない方がいいですよ」と、わざわざ教えてくれる。中国語がわからない私に、情報を教えてくれるのはいつも彼であった。

ルックスもいいし、韓国語もできるし、性格もいいし、ヨジャ・チング(ガールフレンド)も美人でいい人だ。白縁眼鏡の好青年に幸あれ、と願わずにいられない。

さて、マラギの試験の開始。

ところが、緊張のためか、うまく答えられない。

緊張でうまく答えられないのはいつものことなのだが、最初の文法表現のところで、ある問題につまずく。どう答えていいかわからなくなる。

そして、ついに言葉が出なくなった。

「もう一度やりましょう」と先生はおっしゃる。

だが、やはり答えられない。頭が真っ白になって、言葉が出てこないのである。

「もう一度」

「……」

先生があきれたような顔で、大きくため息をついた。

(オマエ、半年近くも韓国語を勉強していて、この程度の会話もできないの?この1学期の間、何を勉強してきたの)

という顔をしているように思えてくる。

一度被害妄想が広がると、もうどうしようもない。後半の対話表現も、ボロボロであった。自分が言っていることが合っているのかどうかも、もうわからなくなってしまっているのである。先生も、あきれた顔をしているように私には見える。

「時間が来たのでこれで終わりです」

途中、答えにつまったことで、予想以上の時間をとってしまったようだ。

うなだれて教室を出る。

そのまま、バスに乗って市内へ。

久しぶりだな。死にたい、と思ったのは。

ル・タオ君が、人の集まるところに行かない方がよい、と忠告してくれたけど、こうなったら、「テジカンギ」でもなんでも罹りたい気分である。

病院に行かない程度に、軽く車にひかれてみようか、とバカな考えもよぎるが、思い直す。

とにかく、自分のiPodに入っている「おもしろいやつ」を聞いて、気分を変えようとする。

フラフラと市内を歩いて、たどり着いたのが映画館の前。映画を見ればなんとかなるかな、と思い、映画のチケットを買った。

そしてこの映画が、私の気持ちを少しリセットさせたのであった。(つづく)

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