フランス料理と学会荒らし
6月9日(火)
語学の授業終了後、KTXに乗ってソウルに向かう。明日、学術シンポジウムがあり、日本から大学院時代の指導教授がいらして発表することになっている。また、そのシンポジウムは韓国の指導教授が中心になって関わっているので、語学の授業を1日休んで出席することにした。シンポジウムの前日の晩には、みんなで食事をするという。
「夕食会場に合流してもいいですか?」と韓国の指導教授にうかがったところ、許可をいただいたので、「前乗り」することにしたのである。
夜7時半、ソウル駅に到着。韓国の指導教授に電話をかけ、晩餐会場に駆けつけると、すでにみなさんが集まっておられ、食事が始まっていた。
「あれ、奥さんもいらしたんだね」と、韓国の指導教授。
「ええ、突然申し訳ありません」
てっきり、立食パーティーか何かと思っていたら、フランス料理のコース料理を食べておられる。そこに、当事者でもない2人が、なかば「飛び入り」で参加したのである。
なんとも申し訳ないと思いながらも、日本からいらした先生方と、久しぶりにお話をした。
食事が終わって解散すると、外はかなりの雨が降っていた。
発表者の先生方は、タクシーで高級ホテルに早々と帰って行かれたが、さて、私たちはどうしようか。
「泊まるところは決まっているんですか」と、知り合いの研究者の方が心配してくださる。
「いえ、決まっていませんが、なんとかなるでしょう」
そう答えると、その方は、明日の会場に近い、とあるモーテルに予約の電話を入れてくれた。ガイドブックにも出ている、有名なモーテルである。
その方に感謝しつつ、夕食会場を出る。
タクシーでそのモーテルに行こうとしたが、ところがそのタクシーがまったくつかまらない。
バスで行こうとするが、例の通り、どのバスに乗っていいのかもわからない。
停留所でウロウロしていると、大学生らしい人が声をかけてきた。
○○に行きたいのですが、と言うと、知り合いに電話をかけてくれたりして、実に親切に教えてくれた。
どうやら歩いていっても近いようだ。雨も小止みになったことだし、歩いて行くことにする。
20分くらい歩いただろうか。ようやくモーテルに到着。
小雨になったとはいえ、すっかりぬれねずみである。
シャワーを浴びて寝ようとすると、とたんに全身が痒くなった。
どうやら、ダニがいるらしい。
さっきまでフランス料理を食べていたのに、ぬれねずみでモーテルに着いたあげく、ダニに襲われるとは、なんとも落差が激しい。
6月10日(水)
朝からシンポジウムに参加する。夕方の討論で、「学会荒らし」と思われる人が、質問をして会場を混乱させる。
どこにでもいるんだな、こういう人が、と思ってみていたが、ふと、昨日のことを思い出す。
考えてみれば、シンポジウムの当事者でもない者が、夕食会場に乱入して、フランス料理のコース料理を何食わぬ顔で食べる者の方が、よっぽど学会荒らしではないか、と思えてきた。
「あいつら、学会となると、決まって食事時に来るんだよな」とか、言われていないだろうか。心配である。
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