不可解な人びと
6月15日(月)
3級6班の人びとは、基本的にまじめで優秀である。
だが、中国人留学生たちの生態に、いまだについていけないところがある。
たとえば、マラギ(会話表現)の時間、4人が1グループになってひとつのテーマについて話し合うような、いわゆるグループ学習の時に、そのことをとくに痛感する。
先生の意図を理解できないのか、それとも無視しているのか、話し合いはあらぬ方向に進み、最終的には収集つかなくなってしまうのである。
語学力以前の理解力の問題だと思うのだが、まあ私自身も他人のことがいえないので、それくらいのことは目をつぶろう。
今日、こんなことがあった。
先週の金曜日、マラギ(会話表現)の小試験があったのだが、その日に私とリ・プハイ君は、所用でどうしても欠席しなければならなかったので、先生が配慮してくださり、翌週月曜日(すなわち今日)の授業の休み時間に、特別に私たち2人だけ、マラギの追試験を受けさせてもらうことになった。
試験は、2人ひと組で、与えられたテーマで3分程度の会話をする、というものである。いままでマラギの試験といえば、先生と学生が1対1で行っていたのだが、今回から、チングとの会話という方法も取り入れられるようになったのである。初めての試験方式である。
そして必然的に、金曜日に休んでいた私とリ・プハイ君がペアとなった。
1時間目の休み時間に、ナム先生の研究室に2人揃ってうかがう。試験の問題用紙を渡され、どのような会話を組み立てるか、2人で簡単な打ち合わせをしたあと、会話をはじめた。
ところが、そもそも打ち合わせの段階でコミュニケーションが満足にとれていないため、会話もちぐはぐになってしまう。しかし、一度始まってしまったら、途中でやめて最初からやり直すというわけにはいかない。
2人がたどたどしい会話を続けているそのとき、驚くべきことが起こる。
リ・プハイ君の携帯電話が鳴った。
そして、あろうことか、リ・プハイ君はその携帯電話に出て、通話をはじめたのである!
まだ、会話の試験の途中ではないか!会話がようやく軌道に乗りかけたところで、彼はあっさりと携帯電話に出て、電話の主と中国語で話しはじめる。
呆気にとられたのは私だけではない。試験監督のナム先生も驚く。
「いま、マラギの試験中でしょ。電話を切りなさい!」
だが、彼は電話を切ろうとはせず、通話を続ける。
「試験中に携帯電話をするなんて考えられないわよ。早く切りなさい!」
先生は再三注意するが、通話をやめようとしない。
「だっていまは休み時間ですから」
妙な理屈でリ・プハイ君が反論する。
「何言ってるの!試験と携帯電話とどっちが大事なの!減点になるわよ!」
減点は当然だろう。だが、こっちまでとばっちりを食らうのはたまったものではない。
ひととおり通話を終えたリ・プハイ君は、電話を切り、中断していたマラギ試験の会話を再開する。
こうなるともう、すでに集中力も欠き、会話もボロボロである。
おかげで、散々の出来であった。
考えてもみるがよい。入試の面接試験の最中に、受験生の携帯電話が鳴ったとする。その受験生が、「ちょっとすいません」と言って、携帯電話に出て通話をはじめたら、目の前にいる面接担当の先生は、どう思うだろうか?それくらい、信じがたい光景だったのである。
もはや私の理解を超えた行動であり、説教する気にもならない。先生の研究室を出て、教室に戻る道すがら、私はリ・プハイ君に、「先週の金曜日はどうして欠席したの?」と聞いてみた。すると彼は、
「韓国の大学の入学試験を受験していたんです」
と答えた。
申し訳ないが、私だったら絶対合格させないだろうな。
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