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パンジャンニムの観察力

6月26日(金)

今日も大邱は暑い。35度を記録した。

3級6班のこれまでにない特徴は、女子学生の比率の高さである。1級1班の時は1人、それも、途中でやめてしまったので最終的にはゼロだったし、2級4班の時には16人中3人だった。今回の班は、16人中7人が女子学生である。

言ってみれば、1級1班は男子校のノリ、3級6班は共学校のノリ、といった感じである。

これは私の勝手なイメージだが、男女がほぼ同数いると、お互いが遠慮しあって、あんまり馬鹿なマネはしない。だから1級の時のような破天荒な面白さは、ほとんどないのである。

そして女子学生は基本的にまじめで優秀であるため、2級4班の時のような荒唐無稽な会話練習が行われることもない。

なので、2級までの時とくらべると、格段にまじめな教室なのだが、単純で単細胞な男子学生ばかりと違って、女子学生は、性格の違いが明瞭にわかるので、観察しているとそれなりに面白いのである。

わが班のパンジャンニム(班長殿)は、女子学生のクォ・チエンさんである。

典型的な学級委員のタイプ、といったらいいだろうか(といっても、学級委員のイメージなんて、人によってバラバラかも知れないが)。「いたな、中学校の時、こういう学級委員が」といった感じの子なのである。

成績が優秀で、授業中も積極的に発言する。宿題のノートの回収や返却もてきぱきやる。

そして、どちらかといえば鈍くさいタイプの女の子に、いつも頼られていて、彼女もその子に対して面倒見がよい。

まさに学級委員によくいるタイプではないだろうか。

さて、1週間ほど前のことである。

9月に全国で実施される韓国語能力検定試験の対策のための特別講座を、7月から開講するので、受講してみたいと思う人は申し込んでください、と、担任のナム先生からお話があった。

それほど高くない受講料で受講できるとのことだったので、せっかくの機会だから申し込むことにした。

「希望する人はこの紙に名前を書いてください」と先生がおっしゃったので、まわってきた紙に名前を書いた。

そして今日の休み時間。

パンジャンニムのクォ・チエンさんが、私に話しかけてきた。

「7月からの特別講座、受けますよね」

「うん」

「昨日、先生から個別に希望者に振り込み用紙が渡されて、今日、お金を振り込んできたんですけど、昨日、もらってないでしょう?」

「え、そうだったの?」

全然知らなかった。そんなことがあったのか。

「たぶん、先生が忘れてるんだと思います」

「じゃあ、あとで先生のところに言いに行けばいいのかな」

「私、いまから先生の部屋に行く用事があるので、先生に聞いておきます」

「ありがとう」

パンジャンニムは、5階の先生の部屋へと向かった。

それにしても、不思議である。

私は、パンジャンニムに、7月の特別講義を受講するつもりだなどと、一言も言ったことはなかった。ただ申請書に名前を書いただけなのである。

それに、昨日、先生から申請者に個別に渡されるべき振り込み用紙が、私にだけ渡されなかったことを、彼女はなぜ知っているのだろう。

彼女は、私が特別講義を受講するつもりである、ということと、昨日、その振り込み用紙を受け取らなかった、という2つのことを、誰に聞くこともなく、知っていた、ということになる。

もちろん、申請書がまわってきたときに、私の名前が書いてあったのを覚えていた、ということなのだろう。

そして、当然振り込み用紙を渡すべきはず私に、先生が渡していないことも、見て知っていたのであろう。

それにしても、恐るべき観察力である。

こりゃあ将来、団地にでも住もうものなら、隣近所の出退勤時間からゴミの出し方に至るまで、事細かに観察するかもしれないぞ、などと、またヘンな妄想が始まる。

そんな妄想はさておき、わが班の隅々まで観察が行き届くのは、まぎれもなくパンジャンニムとして必要な資質であり、選ばれたのにはやはり理由があったのだと、心から敬意を表した。

休み時間が終わって、先生が教室に入ってきた。

私のところに来て、

「振り込み用紙、今はないので、来週の月曜日に渡します」

とおっしゃった。

ここからは例によってまた私の被害妄想だが、なんとなくその言葉のニュアンスに、

「てめえ、いい年齢(とし)して人に頼んで聞いてもらってるんじゃないよ。いい大人なんだから、自分で聞きにきなさい!」

といわれている感じがして、また少し落ち込んだ。

忘れていたのは先生だし、パンジャンニムが善意で聞きに行ってくれたにすぎないのだが。

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