気分は名探偵
6月25日(木)
1週間ほど前、サムギョプサル屋のアジョッシ(おじさん)に依頼された人捜し。
いまから15年ほど前に関釜フェリーで知り合った、2人の日本人女性と連絡が取りたいのだが、私(アジョッシ)は日本語がわからないので、15年前に聞いた電話番号のところにかけて、私の連絡先を伝えてほしい、という依頼。
日本に一時帰国した妻が、さっそく、渡されたメモに書かれた電話番号のところにかけてみることにした。
しかし、なんと言ってかければよいのだろう。突然見知らぬ者から、しかもいきなり15年前の話を持ち出されて、不審がられないだろうか?
それに、犯罪がらみとか、宗教がらみとか、そういった面倒なことにはならないだろうか?
さまざまな不安が頭をよぎる。
できるだけ不審がられずに、こちらの真意をわかっていただくにはどうしたらよいか。何度もシミュレーションを重ねた上で、電話をかけることにする。
託されたメモには、2人の女性の名前がローマ字で書かれており、そのそれぞれに、「03」から始まる電話番号が記されている。
2人のうちの1人は、かけてみると「この電話は、現在使われておりません」というメッセージが帰ってきた。
残るもう1人に電話をかけてみる。
呼び出し音が鳴るようだが、全然出ない。
何日かくり返えしかけてみたが、やはり電話に出ないようである。
そしていよいよ今日。
何回かの呼び出し音のあと、ガチャッ、と、受話器を取る音がした。
「もしもし、もしもし」
「ハロー」と女性の声。
「もしもし、…あのぅ…○○○サチコさんのお宅ですか?」
「イエス?」
「○○○サチコさんのお宅ですか?」
「イエス?…アイ・ドント・スピーク・ジャパニーズ」
様子がおかしい。相手は英語を使っている。そこで妻も英語を使うことにした。
「アー・ユー・ミス・○○○サチコ?」
「ノー!」
ガクッ!探している人物ではなかった。
「フー・アー・ユー・ルッキング・フォー?(誰をさがしているの?)」
今度は電話の相手が聞いてきた。
「○○○サチコ」と妻が答えると、電話の相手は、
「○・○・○・サ・ツ・コ…」
と名前をくり返し、
「アイ・ドント・ノウ。…ヒア・イズ・ア・ホスピタル」
と言って、電話は切れてしまった。
???となったのは妻の方である。
以下はスカイプでの会話。
「…ということは、結局、電話の主は変わってしまってた、てこと?」と私。
「でも、わからないのは、その人の英語もカタコトだったんだよね。どうも言葉の感じからすると、フィリピンの人みたいなんだけど」
「で、最後に『ここは病院だ』と言ったんでしょう。じゃあ電話に出た人は、病院の先生?看護師?それとも患者?」
「さすがに患者は出ないでしょう。看護師かな、という気もするけど。でも日本で英語しか通じない病院なんてないよね」
「たしかに、そうだな」と私。
「思うに、『ホスピタル』という名前のフィリピンパブなんじゃないかなあ」
妻の仰天推理である。
ここへきて、謎がさらに深まる。いったい電話に出た相手が最後に言った「ホスピタル」とは、本当に病院のことなのか?病院だとしたら、なぜカタコトの英語を話すフィリピン人女性らしき人が、電話に出たのか?
「電話番号の感じだと、どうも世田谷区の○○○あたりなんだよねえ」と妻。
「だったら家から近いじゃん。滞在日数があと1日あるんだから、そのあたりをしらみつぶしにさがしてみたら?」
「なんでそこまでする必要があるの?そんな暇じゃないよ!」
さて、問題は、この捜査結果を、サムギョプサル屋のアジョッシにどう伝えるか、である。たんに「電話番号のところにかけたら、全然別の人が出ました」とだけ言えばいいのかな。
(注 タイトル「気分は名探偵」は、1984年に放映された水谷豊主演の同名ドラマより)
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