« 名探偵登場! | トップページ | 話に熱中すると手が止まる方の人 »

ワン・ウィンチョ君と五十音表

6月17日(水)

昨日のことである。わが班のワン・ウィンチョ君が私に話しかけてきた。

ワン・ウィンチョ君は、1級1班でいっしょだったチャオ・ルーさんのナムジャ・チングである。以前は、見た目のチャラチャラした感じから、あまりいい印象をもっていなかったのだが、3級で同じ班になって、韓国語を熱心に勉強している姿を見て、ガラリと印象が変わった。韓国語の勉強を楽しんでいるし、まじめだし、好青年である。

「実は、日本語を勉強したいんです」と彼は言う。

「『五十音』っていうのがありますよね。あれを、覚えたいんです」

つまり、「あいうえお」を習いたい、という。

「明日の休み時間でかまいませんので、教えてください」

しかし、教える、といっても、どうやって教えたらよいのかよくわからない。それに、授業の休み時間では、時間が短かすぎて、五十音をすべて教えることは不可能だろう。

そこで、昨日の授業が終わったあと、家に戻って、ひらがなのカタカナの「五十音表」を作成することにした。

小学校の時に習った五十音表を、実に久しぶりに作成する。

「あいうえお」だけでは発音がわからないので、それぞれの字の下にハングルで音を表記する。

ひらがなとカタカナ、それに、濁音・半濁音や拗音などもすべてハングル対照表を作る。

かくして、A4で4枚相当の五十音表が完成した。我ながら、かなり見やすい五十音表である。

そして今日の休み時間。

ワン・ウィンチョ君がノートを持って「教えてください」とやってきた。

「五十音表を作ってきたよ」といって、その五十音表を見せると、まさか作ってきたとは思ってもみなかったようで、たいそう驚いていた。

やがて、その五十音表に気づいたまわりの中国人留学生たちも、周りに寄ってくる。

「私も欲しいです!」と次々に手をあげるが、こちらも人数分作るほどお人好しではない。「あとでコピーしなさい」と答える。

ワン・ウィンチョ君は、さっそくひらがなの読み方の勉強をはじめる。

まず最初に挑戦したのは、五十音表の表題として書いた「ひらがな」という文字である。

五十音表のハングル音をたよりに、この4文字を声に出して読んでみることにする。

「ひ」「ち」「が」「な」

「『ち』じゃないよ。『ら』だよ。ほら、ここにあるだろう」と、私は五十音表の「ら」のところを指さした。

「あ、これかー。形がそっくりで難しいですよ」

そんなもんかなあ、と思う。

同じ調子で、今度は「こんにちは」「私は中国人です」といった言葉を声に出して発音する。

「韓国語と文法が同じなんですね。はじめて知りました」

「ひらがなは難しいです。でも(字の形が)美しいですね」

彼にとって、日本語はかなり新鮮だったようだ。

その様子を冷めた感じで見ていた、大人びていてしっかり者のクォ・リウリンさんは、ワン・ウィンチョ君に「一度、おごってあげなきゃダメよ」と笑いながらアドバイスした。

休み時間が終わり、マラギ(会話表現)のナム先生が教室に入ってきた。「どうしたの?」

「日本語の勉強です」ワン・ウィンチョ君が、五十音表を先生に見せた。

「あら、韓国人が学習するにも便利な表ね」と、いったん感心するも、

「でも、いまは韓国語の勉強の時間ですよー。まずは韓国語の勉強をしっかりやりなさいよー」と、釘を刺す。

全くの正論である。

でも、思いのほか彼らに好評だったことに気をよくした私は、今日も家に帰って、日本語学習教材の第2弾を作ることにした。誰にも頼まれていないのだが。

|

« 名探偵登場! | トップページ | 話に熱中すると手が止まる方の人 »

3級6班」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 名探偵登場! | トップページ | 話に熱中すると手が止まる方の人 »