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こわい話

7月21日(火)

夏といえば、怪談である。

「怪談こそは、話芸の真骨頂」と、あるラジオDJはいう。そのこわい話が本当に起こったことなのかどうかは、実は問題ではない。聞く者をこわがらせるために、いかにして表現を練り、話を組み立てるか、の方が大事なのである。

芸人や教師など、喋る仕事に就こうと考える人は、自分で怪談を作って、披露することをおすすめする。

さて、先日の韓国語のTOPIK(韓国語能力試験)の特講でも、先生の怪談話が披露された。

柳原可奈子に芸風と体型がそっくりのわが班の先生が、何のきっかけだったか、「これからこわい話をします」といって、教室の電気を消した。

「ある人が、とても安い部屋がある、というので、あるアパートに引っ越しをしました。ところが、毎晩、12時になると、ヒタ、ヒタ、ヒタ、と、外の廊下で足音が聞こえるんです」

学生たちが固唾をのんで聞き始めた。

「毎晩、同じ時間に、ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ…。おかしいな、と思って、大家さんにそのことを聞いてみたんです。『毎晩、12時になると外の廊下で足音が聞こえるんです』と。そしたら、大家さんが、『やっぱり』と言ったんです。『実は昔、ここで不幸な亡くなり方をした人がいて、毎晩12時になると、その霊がさまよっているのだ』って。そして『もし気になるようだったら、毎晩12時になる前に、ドアの外側にお札を貼りなさい』と、その大家さんは言いました」

「で、その人は、大家さんに言われたとおり、夜12時になる前に、お札をドアの外に貼ったんです」

「夜12時。ヒタ、ヒタ、ヒタ…。やはり足音が聞こえてきました」

「おかしいな、お札を貼ったはずなのに、と思っていると、その足音が小さくなっていきます。どうやら、階段を降りていったようなんです」

「ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ…

「よかった、やっぱりお札のおかげだ、もうこれで大丈夫だ、と思って、ドアの外のお札をはがした瞬間…」

トントントントントントントントントントン…て、ものすごい勢いで階段を駆け上る足音がしたんです!」

この瞬間、「ヒャーッ!」と、教室中に悲鳴が響き渡る。

ま、要は、最後に大声を出してビックリさせる、という、よくある手口なんだけどね。

先生の話術を十分に伝えられないのが残念だが、こんな古典的な怪談でも、けっこうみんなビックリしていた。なかでも感受性の強いポン・チョンチョンさんは、あまりの恐怖に涙を流してしまったのである。

やはり怪談とは、話術であることを実感する。

ところが妻によると、昨日の特講で、妻の班の先生が、何気にこわい話をした、というのである。

妻の班の先生は、わが班の先生とは対照的(失礼!)で、良家のお嬢様的な、美人の先生である。「ごきげんよろしゅう」といった挨拶が似合いそうな先生である。

いわゆるエリートでもあるため、若いながらも語学堂で然るべき地位にいる。

授業中、よく話が脱線するらしいのだが、テキストの文章で占いの話が出てきたとき、次のような話をしたという。

「占い、といえば、私の知り合いでこんな話があります。その知り合いは45歳くらいの男の人だったんですけど、ある時、突然、いなくなってしまったんですね。心当たりのあるところをさがしても全然見つからなかったんです」

「そこで、困ったおかあさんが、占い師のところに行って、その息子のことを占ったもらったそうなんです」

「すると、その占い師は、言いにくそうに『その方は、45歳以降の運勢がみえません』と言ったんです。そして、『水のあるところをさがしなさい』とも」

「そこで、占い師の言ったとおりに水のある場所を捜索しました。するとその人は水死体で発見されました」

…こわいこわいこわい。何というストレートなオチだ。

「45歳の男性」というのも、妙にリアリティがある。

ご本人は、こわい話のつもりで話したわけではない。「占いといえば…」というきっかけで話しはじめたものなのである。

だいたい、「占いといえば…」といって、まっさきにこんなこわい話を思い出すか?

しかし私には、同じ日にその先生が話したという次の話の方がこわかった。

「良薬は口に苦し」。だから、苦言を呈してくれる友人を大切にしましょう、という内容の文章がテキストにあった。

ここでまたその先生が脱線する。

「先生にも、私に向かってダメなところをはっきりと注意してくれる同僚の先生がいるんですよ。だから私も、その同僚をとても信頼しているんです」

「でもね、なかには、たとえば会議なんかで私の提案に対してニコニコしながら「いいですね」なんて同調しておきながら、裏でメチャクチャ批判する同僚もいるんですよ」

「その人は、私に会うと、私の前ではいつもニコニコしているのに、影では悪口を言っているそうなんです。私は知らないフリをしているんですけど、実はその人が影で何を言っているか、全部知っているんです」

ひぃ~!こわいこわいこわい。ある意味、この話が一番こわいじゃないか。

冷静になって考える。

どんな組織にも、派閥や対立がある。だから、こういう確執があるのは、当然といえば当然である。

私が以前からひそかに抱いていた妄想。つまり、一見平穏にみえるこの組織にも実は派閥があり、熾烈な抗争が繰り広げられているのではないか、というかねての妄想は、やはり現実だったのか?

無頓着な中国人留学生たちは、そんなことも知らずに、それぞれの先生の前で、無邪気に他の先生の話題を出したりする。

私は、その光景を見るたびに、ちょっとドキッとしてしまうのである。

ところで、その悪口を言っている先生って、誰なんだろう。

いかん。また悪い癖が出てしまってるぞ。

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