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アイスアメリカーノ・妄想篇

韓国では「コーヒーショップ」という。日本でいう喫茶店。

語学の宿題や勉強を、家ではまったくはかどらないので、喫茶店に行ってやることが多い。

だいたい、夜の11時くらいまでねばることもある。

その時に注文するのは、決まって「アイスアメリカーノ」。日本でいうアイスコーヒーである。単に、考えるのが面倒くさいからそうしているだけで、とくにコーヒーにこだわりがある、というわけではない。

よく行く喫茶店は、おもに2箇所である。

ひとつは、家の近くにある「スリープレス・イン・シアトル」というチェーン店。チェーン店、といっても、店はそれほど広くなく、アジョッシ(おじさん)が、(たまにアルバイトを使いながらも)基本的にひとりで切り盛りしているので、さながら「街の喫茶店」といった趣である。

頻繁に通うので、店の主人にすっかり顔を覚えられたことは、前にも書いた。まあ小さい店だし、そんなところに日本人が来るなんてめずらしいから、当然といえば、当然だろう。

最近は、私が注文しようとすると、「アイスアメリカーノですね」と言ってくる。

そう言われてしまうと、私も気が弱いので、「いえ、キウイジュースを」とは言えなくなる。だから、アイスアメリカーノを飲み続けなければならない。

もう1箇所は、大学の北門の前にある「ダヴィンチ・コーヒー」という、韓国でも大手のチェーン店である。

こちらは、家から少し離れているので、1軒目の店ほど頻繁に通っているわけではない。ただここ最近、語学の勉強がせっぱ詰まってきたので、以前よりも少し利用頻度が高まっている。

こちらは、ビルの1階から3階までが客席である。大学の門の近くということもあって、大学生たちがひっきりなしに出入りしている。この店でも、注文するのは決まってアイスアメリカーノ。

昨日、この店で例によってアイスアメリカーノを注文しようとすると、レジに立っていた人が、

「アイスアメリカーノですね」

と言ってきた。

わぁ、完全に顔を覚えられてる…。

時間帯の関係なのか、私がレジで注文するときは、必ずといっていいほど同じ人が注文を受ける。どうもその人は、なんとなく雰囲気から、この店の若き店長のようである。

それにしても、毎日あれだけひっきりなしにお客さんが来ているのに、何で覚えられてしまうんだろう。

注文の仕方で、日本人だ、ということがわかったからだろうか。

(あいつ、またアイスアメリカーノを注文したよ)なんて、思っているのだろうか。

ここから私の妄想がはじまる。

たとえば、大邱で「大邱市喫茶店店長会議」、いわゆる「店長サミット」が開かれたとする。

そこで、「スリープレス・イン・シアトル」のオヤジと、「ダヴィンチ・コーヒー」の若き店長が顔を合わせる。

「最近、うちの店に、アイスアメリカーノばっかり注文する日本人が来てさあ」

「え?お宅のとこにも来ますか?うちのとこにも、アイスアメリカーノばっかり注文する日本人が来ますよ」

「じゃあ同じ日本人かなあ。ひょっとして、その人いつも大汗かいてない?」

「あ、かいてますかいてます。小太りで眼鏡かけて」

「そうそう!語学の勉強してるよね」

「何でアイスアメリカーノばっかり頼むんでしょうね」

「あいつ、どんだけアイスアメリカーノの虜なんだよ」

2人はハッハッハ、と笑う。

「え、なに笑ってんの?」と、そこへほかの店の店長が話に割り込む。

「アイスアメリカーノばっかり頼む汗かきの日本人がいてさ…」

「へえ。うちにも来るかも知れないね」

「もしそれらしい人が来たら、『アイスアメリカーノですね』って、言ってやったら?」

「そうしてみよう」

かくして、市内の喫茶店で、アイスアメリカーノを頼む日本人のうわさが広まり、私がどこに行っても「アイスアメリカーノですね」と言われるようになる…。

…という妄想にとらわれて、また汗をかいていると、

「何を考えているの?」と妻。

いまの話をすると、

「バッカじゃないの」と一蹴。

私はアイスアメリカーノを飲み干した。

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