タプサ・6回目 ~ミリャン~
9月5日(土)
6回目のタプサ(踏査)は、大邱から車で1時間ほどのミリャン(密陽)である。
このタプサのために、ミリャンを舞台にした映画「ミリャン」を見たことは、前に書いた。
どちらかといえば地味な映画なのだが、カンヌ映画祭で賞をとったことがきっかけとなって、それまであまり知られていなかったこの町が、脚光をあびるようになったという。
町じたいも、地味な田舎町である。
だが、「密陽」という地名の響きがなんともよい。英語に直すと「シークレット・サンシャイン」。
ルー大柴じゃないんだから直訳するな!と怒られそうだが、映画の邦題はまさに「シークレット・サンシャイン」なのだ。
日本にたとえたら何だろう。カンヌ映画祭で賞をとった今村昌平監督の映画「うなぎ」の舞台となった、千葉県佐原市、といったところか。
どうだ、マニアックすぎてわからないだろ。でも私にはしっくりくるたとえである。
本当は、映画のロケ地を少しでも見てみたかったのだが、集団行動だし、そもそもタプサの本来の目的とはそぐわないので、当然、そんなことは望むべくもない。
例によって、旧跡を中心にまわる。
この町が、なかなかよい。
最初に訪れた萬魚寺(マノサ)は、標高600メートルの山の上にある古刹である。訪れてビックリしたのは、山の一面が石で覆われていることであった。それがあたかも、川を泳ぐ魚のように見えるので、萬魚寺と呼ばれるようになったのだという。
弥勒菩薩をまつったというお堂の本尊も、巨大な岩であった。あたかもご神体のように鎮座していた。
次に訪れたのが、田んぼの真ん中にある石塔(崇眞里三層石塔)。
田園風景が広がる。稲穂が少しこうべを垂れはじめていた。
石塔の中に蜂が巣を作っていて、容易には近づけなかったのはご愛敬。
昼食の後、市立博物館や朝鮮時代の山城などを見学し、最後に、表忠寺(ピョチュンサ)というお寺を訪れた。
境内で休んでいると、夕方5時頃になって、人々がある場所に走って向かっている。
人々の走っていく方向に私たちもついていくと、驚くべき光景に出会う。
なんと、ウサギが、お寺の仏様に向かってお祈りしているではないか!
指導教授によると、「お祈りをするウサギ」として、有名らしい。
ある時、山から2羽のウサギがこの寺におりてきた。ところが、このうちの1羽がある日、猫に襲われて死んでしまった。
それからというもの、残った1匹のウサギが、毎日、このお寺のお堂の前で、お祈りをするようになったのだという。
この話は、テレビで何度か放送されたおかげで、人々の知るところとなった。
ウサギはお堂をお参りした後、今度は石塔の前に走り寄り、お祈りをはじめる。
ウサギが石塔にやってくると、それに気づいた人々が次々に写真を撮りはじめる。
まるでアイドルの撮影会なみの人気である。
おりしも、陽が傾きかけた夕方のことである。「密陽」の地名にふさわしい奇譚である。
ミリャン。地味な田舎町だが、不思議な雰囲気を持つ。
もう一度訪れたい場所かも知れない。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 出張あれこれ(2022.11.30)
- からすまおいけ(2022.11.27)
- 傾聴の旅(2022.11.23)
- 無事に終わったのか?無事じゃなく終わったのか?(2022.09.29)
- 小椋佳談議(2022.09.27)
コメント