4級3班、始動。
9月7日(月)
当初の開講予定より1週間遅れて、ようやく今学期がはじまる。
私にとっては、最後の学期である。
これまでは午後の授業だったが、今学期は午前9時から午後1時までである。
わが4級3班は、全部で15人。
うち、日本語を母語とする人が、私を含めて3人いた。
あとは例によって中国人留学生たち。
これまで同じクラスになったことのある人は、3級のときのリュ・リンチンさんだけ。あとは、はじめて会う人ばかりである。
わが班を受け持つ2人の先生(文法の先生と、マラギの先生)も、はじめて教わる先生である。
さて、授業が始まった。
うーむ。みんな実におとなしい。水をうったように静かである。
おとなしい、というより、空気が重苦しい。
先生の説明にも無反応のため、先生もかなりやりにくそうである。
たいていの人は、4級まで勉強して、こちらの大学に入学することを考えているので、来学期にまた進級しようと思って頑張る人は、あまり多くない。
かくいう私も、今学期で終わりにするつもりなので、試験の点数をあまり気にする必要がないのである。
それで、心なしか、やる気が起きないのかも知れない。
語学の先生たちの間でもそのことが問題になっているようで、4級に上がったとたん、学生のモチベーションが極端に下がるため、かなり苦労されているようだ。
これからどうなるのだろう。このまま重苦しい雰囲気が続くのだろうか。それとも、いつかうち解けるようになるのだろうか。
ひとすじの希望はある。
前半の文法の授業。
「みなさーん。今、ニュースで話題になっていることは何ですか?」と、文法担当のチェ先生が質問する。
「テジドッカン(豚毒感)でーす」と、中国人留学生のリ・ハイチンさんが答えた。
「あら、いま『豚毒感』という言い方はしないのよ。ずいぶん前にはそういう言い方をしたんですけどね。お医者さんに行って、『豚毒感にかかりました』なんて言ったら、『はあ?』て顔をされますよ。今はね、『シンジョンプル(新種のインフルエンザ)』て言い方をするんですよ。『豚毒感』なんて言い方したら、『どこの田舎から来た人なんだろう』と思われますからね」
と、先生が注意をうながす。リ・ハイチンさんは「わかりました」と答えた。
そして後半のマラギ(会話表現)の時間。マラギ担当のキム先生がおっしゃった。
「みなさーん。いま『テジドッカン(豚毒感)』が流行ってますからね。注意してくださいよ」
すかさず、リ・ハイチンさんが口をはさむ。
「ソンセンニム(先生)!今は『シンジョンプル』って言わなきゃダメですよ。『テジドッカン』なんて言ったら、田舎者だと思われますよ」
たしなめるように言ったのを聞いて、みんなは大爆笑した。
さて、そのマラギの授業。
今日は最初の授業なので、お互いを知るために、先生が用意した100の質問項目(!)の中から面白そうなものをピックアップして、お互いに質問し合うという練習をした。
5人ずつのグループに分かれてしばらくお互いに質問し終えたあと、今度は全員に対して先生がおっしゃる。
「みなさーん。先生に質問はありますか」
誰かが先生に質問した。
「ソンセンニム!家出をしたことがありますか?」
ずいぶん唐突な質問だなあと思ったが、100の質問を書いた紙をよく見ると、たしかに「家出をしたことがありますか」という質問項目があるではないか。
「家出をしたことがありますか?」なんて、初対面の人に質問するようなことか?
「ありますよ」と先生。
あるんかい!
「4年ほど前の誕生日にね。その日は雪が降っていたんだけど、家族が誰も自分の誕生日に気づかないで、誰からもお祝いされなかったの。それで頭に来て、大邱から汽車で1時間くらいの所にあるお寺までひとりで家出したのよ。でもひとりで雪の降っているお寺を歩いていたら、急にさみしくなって、家に帰ったの。だからその日は、朝に家出して、夜には家に戻ったのよね」
ん?それって「家出」って言うのか?たんなる外出じゃないのか?
「先生、それはいつのことですか?」と、誰かが質問した。
「4年前のことよ」
「じゃあ、もういい大人じゃないですか」
その通りである。「豚毒感」に続き、再び学生にたしなめられた先生は、くやしそうな表情をした。
「ああ言えばこう言う」という彼らの持ち味は、やはり健在なようだ。
少しずつこの重苦しい雰囲気も解消されるかも知れない。今までがそうであったように。
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