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小さな研究会

10月24日(土)

ソウルの某大学で行われた研究会で、研究発表をする。

6月にこの大学で発表をしたときに、「10月24日にも小さな研究会をやりますので、その時に発表してください」といわれた。

お世話になっている先生でもあるし、二つ返事で引き受けたのだが、はて、どんな趣旨の研究会なのか、どんな内容の発表をすればよいのか、時間はどれくらいなのか、まったくわからない。

「いま、関心をもっているテーマでいいです」とおっしゃるのだが、それもまた漠然とした話である。

先週、苦しみながら原稿を作る。どのくらいの時間で発表すればよいのかわからなかったので、A4で20枚もの原稿を作成して、19日(月)にメールで送った。

さて今日、言われたとおりの会場に行くと、月曜日に送った原稿が、すでに韓国語に翻訳されて、立派な冊子になっていた。

恐るべきスピードである。

そして、発表者にはそれぞれ、討論者1人がつくのだが、その討論文もすでに用意されていた。

今日の発表者が、私のほかに、もうお一人いることも判明する。

とにかく、当日に来てみないと、わからないことだらけなのだ。

午後2時、研究会が始まる。主催の先生の挨拶。

「今日は、絶好の紅葉シーズンのため、あまり人がいませんが、家族的な雰囲気で会をすすめましょう」

たしかにそうだ。今週、来週あたりは、紅葉のピークである。こんな時に、研究会に出るなんてもったいない話だ。

実際、出席者は、主催者、発表者、討論者含めて10名程度。こぢんまりした雰囲気で、研究会が始まる。

でもこれくらいがちょうどよい感じかも知れない。

研究会が無事終わり、ささやかな打ち上げ。

その席で、主催の先生がおっしゃるには、私の研究発表に対する討論者が、なかなか見つからなかったそうだ。

「最初、発表のタイトルだけを見て、討論者を引き受けてくれた方に、先生の原稿をお送りしたんです。すると、夜中に『自分にはとてもつとまらない』と断りの連絡が来ました」

ほかにも当たるが、原稿を見て断られる。で、いろいろとさがしたあげく、専門が近く、日本に留学経験がある方がひとり見つかり、なんとか当日の研究会に間に合ったのだという。

「そんなことがあったんですか…」

そりゃそうかも知れない、と思い直す。今回発表した内容は、韓国ではまったく未開拓の分野だし、なにより、私自身からして、難解だな、と思う内容だったからである。とっつきやすいタイトルだけを見て、騙された、と思った人が多かったのだろう。

韓国の学界の風潮として、発表の主題にかかわらず、「討論者」を頼まれたら二つ返事で引き受ける人が多いのだが、今回ばかりは、二つ返事で引き受けられるようなシロモノではなかったようだ。

誇るべし、というべきか。

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