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マラギ総決算!

10月27日(火)

後半のマラギの授業。

今日の「3分マラギ」は、私が担当である。

お題は、「自分の国の民謡を調査して、紹介する(民謡の歌詞の意味や、いつ歌われる歌なのか、など)」というもの。

ちょうど、教材では、韓国の代表的な民謡である「アリラン」が紹介されている。それに合わせた主題、ということであろう。

さて、どんな民謡を取り上げたらよいか。

私が住んでいる東北地方にも数多くの民謡があるので、最初はそれを紹介しようかとも思ったが、どうも面白くない。

そういえば、iPodに、奄美民謡が入っていたことを思い出す。

数年前、奄美大島へ旅行したとき、「奄美島唄」を聞いて感激して、「奄美島唄」のCDを取り扱っている奄美市の「セントラル楽器」というところで、何枚かCDを買い求めた。

奄美島唄は、裏声を多用した独特の歌唱法が印象的である。加えて、奄美がたどってきた苦難の歴史も、島唄には込められているように思う。まさに、民衆の唄というにふさわしい。機会があったら、どこかで紹介してみたいと思っていた。

この機会に、韓国人の先生や、中国人留学生たちに、奄美島唄を紹介しよう。韓国で「奄美島唄」。なかなかよい取り合わせではないか。

そして、私にとっては、韓国語の授業の中で、不特定多数の人たちの前で話す、おそらく最後の機会である。もちろん、このあと、「討論試験」や「期末試験」でマラギ(会話表現)の機会はあるのだが、ある程度自分の思い通りにできる機会は、今日だけである。

この1年間、この語学堂で学んできたことを、すべてこの発表の中につぎ込もう。

昨晩、明け方近くまで準備をする。

そして本番を迎える。以下は、私が発表した内容である。

「民謡は世界のあらゆる国にありますが、共通的な特徴は、支配者の歌ではなくて民衆の歌であることです。人々は日常生活や特別な日に民謡を歌ってきました。そうすることで民衆は力を持ちえました。民衆力の根源、それがまさに民謡なのです」

「日本でも同じです。日本には昔から民謡が地域ごとにありました。その中には韓国民謡『アリラン』のように誰も知っている民謡もありますが、ほとんどの日本人が知らない民謡もあります」

「今から紹介する民謡は、おそらくほとんどの日本人が聞いたことがない民謡です。私が好きな民謡なのですが、この民謡を一度聞いてみましょう」

ここで、CDに入れておいた「奄美島唄」を流す。

タイトルは、「行きゅんにゃ加那節」

行(い)きゅんにゃ加那(かな)  吾(わ)きゃ事(くとぅ)忘(わす)れて 行きゅんにゃ加那

打(う)っ発(た)ちゃ 打っ発ちゃが 行き苦(ぐる)しや  ソラ行き苦しや

阿母(あんま)と慈父(じゅう)  物憂(むぬめ)や考(かんげ)えんしょんな 阿母と慈父

米(くむ)取(とぅ)てぃ 豆(まむ)取てぃ 召(み)しょらしゅんど  ソラ召しょらしゅんど

目ぬ覚めて   夜(ゆる)や夜(ゆ)ながと 目ぬ覚めて

汝(な)きゃ事 思(う)めばや 眠(ねい)ぶららぬ  ソラ眠ぶららぬ

鳴(な)きゅん鳥(とぅい)小(くわ)  立(たち)神(がみ)沖(うき)なんて鳴きゅん鳥小

吾(わ)きゃ加那(かな)やくめが 生(い)き魂(まぶり) ソラ生き魂

「この民謡は日本の南に位置する奄美という島に伝わる民謡です。奄美に暮らす人々は、昔から、支配者のために長い間、苦しみにあってきました。その歴史のために、人々は独特の民謡を歌いながら力を出してきました」

「この歌は主に酒席で歌う歌です。歌詞も独特で、歌唱法も独特です。とくに裏声(falsett)という特徴的な歌唱法をたくさん使います」

「歌詞の意味は次の通りです」

ここで、自己流で翻訳した歌詞の大まかな意味を説明する。

버립니까 사랑하는 사람.

나를 잊어 버립니까? 사랑하는 사람.

떠나려고 생각해도 떠나기가 괴롭습니다.

어머니, 아버지.우울하게 생각하지 말아 주세요.

눈이 깨어,

새도록 눈이 깨어당신을 생각해 잠을 없습니다.

있는 새는,

바다 쪽에서 울고 있는 새는 나의 사랑하는 사람의 생령(生霊) 틀림없을 것이다.

「歌詞に出てくる言葉は、とても難しいですが、別離を主題にした歌であることは間違いありません」

「いまも奄美の人々は、奄美民謡を歌い継いでいます」

と、いちおう、ここまでが民謡の話。

「ところで、この話はここで終わりではありません」と私は続ける。

「この民謡を歌っていた歌手はこのとき高校生でした。この歌手は高校を卒業したあと、上京して有名な J-pop 歌手になりました。その歌手は、美しい声と独特の歌唱法で、多くの人々から支持を得ました。その歌がどんな歌なのか、聞いてみましょう」

ここで、あらかじめCDに入れていた2曲目の歌を流す。

その歌は、アルバム「ノマド・ソウル」に収められている元ちとせの「いつか風になる日」

そう、1曲目の奄美島唄を歌っていた歌手は、元ちとせであった。アルバム「故郷・美ら・思い」からの1曲。私が「セントラル楽器」で買い求めた1枚。

そしてこの歌を聴き終わったあと、最後のまとめである。

「この歌を聞けば、奄美民謡が現代のJ-popにも大きい影響を与えているということがわかります」

「つまり、民謡はいまも、私たちの心を揺さぶっているのです」

かなり強引なまとめ方で、3分マラギが終了。

このわかりにくい話が、どのくらいみんなに伝わったのかわからない。とくに、「元ちとせ」の種明かしをしたところで、わかったのは、日本人のカエヌナくらいなものだったろう。

しかし、このあとも、民謡についての話で、けっこう盛り上がったことは、せめてもの救いであった。結局、この話題で、まる1時間を使った。

先生は、「3分を大幅に過ぎましたね、減点の対象ですよ」と、冗談交じりにおっしゃった。

かくして、私にとって最後の「3分マラギ」が終了。

さほど面白い内容ではないが、記録としてとどめておく。

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