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シャオシャオ君の居眠り

10月6日(火)

バスケットボールが何より好きだというシャオシャオ君は、見るからにスポーツマン、といった感じである。

バスケットボールの漫画に出てくるような青年、といった方がよいか。

彼がバスケが得意だ、という噂は、この語学学校でも有名な話らしい。

あるとき、シャオシャオ君に聞いた。

「今でもバスケットボールを続けているの?」

「ええ、週に1回、いや、2回、バスケが好きなチングと練習をやってます。…キョスニムは、何かスポーツをしていますか?」

「いや、…散歩だけだね」

そういう私は、大学の構内を散歩していて、グランドでバスケの練習をしている集団を見ると、シャオシャオ君がいないか、つい確かめてしまう。

シャオシャオ君は、近ごろ授業を休みがちである。

決して不真面目な学生ではないのだが、わが班の中でも、もっとも出席率が悪い学生となってしまった。

その彼が、今日、久しぶりに授業にやってきた。

だが、授業の間も、休み時間も、机に突っ伏して、ずーっと寝ている。

休み時間、ハナさんが、シャオシャオ君のもとにやってきて、机に突っ伏して寝ているシャオシャオ君の顔をのぞき込んだ。

「大丈夫?どこか体が悪いんじゃないの?」

心配したハナさんが、シャオシャオ君に声をかけた。

ハナさんは、体調が悪かったり眠かったりして机に突っ伏している学生を見ると、必ずのぞき込んだり、ポンポンと肩をたたいたりして、安否を確認する。

「わが班のみんなはチング」という信念にもとづく、ハナさんなりの親切心なのだろうが、中国人留学生たちをずっとみてきた私からすれば、「放っておいてやれよ」と、つい思ってしまう。

さしずめ、バスケの練習に熱中したか、徹夜でコンピューターゲームをやっていたかで、疲れていたのだろう。

今日、彼が久しぶりに授業に出たのも、単に今学期2回目の「クイズ」(小試験)があったからにほかならない。

隣に座っていたチュイ・エンピン君がハナさんに言う。

「きっと徹夜でコンピューターゲームをやっていたせいですよ」

「え?そうなの?なあんだ」ハナさんが自分の席に戻る。

ハナさんからすれば、せっかく授業に出ているのだから、起こしてあげよう、という気持ちがあったのだろう。

シャオシャオ君が、どういうテンションで、韓国に留学したのかは、わからない。本当に韓国で勉強したいと思っているのか、あるいは、何らかの事情で、韓国に留学せざるをえなかったのか…。

もし私がシャオシャオ君くらいの年齢だったら、と考える。

はたして、いまの私のように、韓国語をきっちりと勉強しようと考えただろうか?

軽い気持ちで韓国に留学したものの、授業の厳しさと宿題の多さ、試験の難しさに、辟易としたに違いない。

現に今も、毎日押し寄せる勉強の量に押しつぶされそうになりながら、ギリギリのところで踏んばっているのである。

なにかのきっかけで、ぽっきりと心が折れても不思議ではないくらいの精神状態である。

「勉強するのが仕事」である私ですらそうである。若い学生が、遊びたい気持ちを抑えて勉強に専念しなければならいのは、とてつもない苦しみなのではないか。

そう考えると、シャオシャオ君が寝ていようと、不思議と腹が立たなくなる。授業へ出てくるだけでもましではないか。

1級の時、授業に参加しようとしない彼ら(中国人留学生たち)に、あれほど腹が立っていたのに、今は、不思議と腹が立たない。

後半のマラギの授業で、まったく起きないシャオシャオ君にあきれた先生が、私に質問する。

「キョスニム!キョスニムの授業で、もし寝ている学生がいたら、どうしますか?」

先生も、シャオシャオ君の居眠りに困りはてたらしい。

私が答える。

「私の授業で、寝る学生はいません」

ほぅー、と一同の声。先生も感心しながら質問を続ける。

「一体どうやったらそういう授業ができるのでしょう」

「興味深く話をすればよいでしょう」

「そうですか。…それが、いちばん難しいですね」

おいおい、なんか、冗談で言ったつもりが、本気にされてしまったみたいだ。このまま、私の話を本気にされては困る。

「すいません。…ウソをついてました」

ここで一同が大爆笑。この一言で、教室の空気が、少し変わったように思えた。

「なるほど、…こういうことですね」

「こういうことです」

ひと笑いした先生は、この一連のやりとりに、何かを悟ったようだった。

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