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早くも同窓会

11月21日(土)

語学院の学期が終わって、パンハク(休暇)が始まると、中国人留学生たちのほとんどは、故郷の中国に帰る。

ところが、今回は、故郷に帰らない学生が多い。

その理由は、今学期の開始日が、新種インフルエンザの騒ぎで1週間遅れたため、パンハクの開始日が1週ほどずれ込んだ結果、期間が3週間から2週間に減ったためである。

そしてもう一つの理由は、この時期、韓国の大学に入学を考えている学生たちにとって、この時期が、大学合格が決まる時期にあたるからである。つまり、「結果待ち」の時期なのである。

ということで、後半のマラギの先生(よくモノをなくす先生)が、大邱の八公山(パルゴンサン)の登山を企画された。

正確には、マラギの先生が担任になっている4級4班のクラスに呼びかけたものだったのだが、先週の期末考査のあとの打ち上げの際に、わが4級3班の学生にも声をかけていただいたのである。

せっかくの機会なので、お邪魔とは思いつつも、参加させていただくことにした。

昨日、わが班のパンジャンニム(班長殿)ことロンチョン君から、携帯にメールが入る。

「明日、登山に行かれますよね?」

ロンチョン君も、期末考査の打ち上げに参加していて、登山の話を聞いていたのである。

「(ロンチョン君に)ずいぶんなつかれたものね」とは、メールを見た妻の言葉。

たしかに、「なつかれている」という言葉がふさわしい。どういうわけか、彼は私に、なついているのだ。

数日前の彼の韓国語日記に、パンハクは嫌いだ、というようなことが書かれていた。自分は授業に出ている時間が一番楽しい。パンハクになってしまうと、誰とも会えなくなってしまうので、とてもさびしいのだ、と。

それにしては、授業に遅刻してばかりいたじゃないか、と思ってしまうのだが、彼は、誰よりも人といることが好きなようである。

だから彼は、他の班の集まりにも、積極的に顔を出すのだ、と聞いていた。

今回の登山も、当然楽しみにしていたのだろう。

私は返事を書いた。

「当然だろ。明日、遅れずに来いよ」

すると、5秒で返事が戻ってきた。

「わかりました。明日会いましょう!」

さて、今日。

午前10時に空港のバス停に集合、ということで、私と妻は時間通りに到着したが、案の定、ロンチョン君は遅れてやってきた。

参加したのは、先生を含めて9人。そのうち、2級の時に一緒だった、ホ・ヤオロン君と、リ・ペイシャン君、3級の時に一緒だったクォ・チエンさんとはすでに顔見知りである。ちなみに、リ・ペイシャン君とクォ・チエンさんは、恋人同士である。

「ホ・ヤオロン君は、面白い」とは、妻の評。

たしかに2級の時から、彼は面白かった。ほかの人にはない、独特のセンスを持っているのだ。会話の端々から、それがうかがえる。頭のいい青年なのだろう。

「高校の時、川端康成の『伊豆の踊子』を読んで、日本に興味を持ちました」という。きっかけが、日本の漫画でないところがいい。

「大学に入学したら、プモニム(両親)に、旅行をしてもよい、といわれたんです。だから、大学生になったら、1週間、日本を旅行したいんです」そう言って、彼は日本の観光地に行くならどこがよいのかと、しきりに聞いてきた。

そんなホ・ヤオロン君は、「よくモノをなくす先生」のことが、とても好きである。

いや、愛している、といってもよい。

「よくモノをなくす先生」と結婚したい、と、半ば本気で思っているようである。

ちょっと待てよ、と思う。

たしか彼は、1級の時に習った「猟奇的な先生」のことが、とても好きだった。そのことは、中国人留学生たちはおろか、語学の先生方の間でも有名だった。

2級の授業のときに、「猟奇的な先生」を思うあまり、詩を作ったほどである

しかし、いまは、「よくモノをなくす先生」のことが、好きでたまらないようである。

惚れっぽい性格なのだろう。

彼は、ソウルにある大学に合格した。

「じゃあ、その大学に入学するの?」と聞くと、

「まだ考え中です。ソウルに行ってしまうと、友達がほとんどいませんから」と彼は答えた。

バスに乗り、八公山のふもとに到着。いよいよ登山の開始である。

真冬なみの寒さの中で登山をする、というのは、ふつうの人にとってはそうでもないのかも知れないが、私にとってはなかなか大変である。

というのも、無類の汗かきである私は、真冬の気候であっても、登山の最中には大量の汗をかくからである。大量の汗が、たちまち氷のように冷えてしまい、暑いのか寒いのか、よくわからなくなる。

果ては、自分の汗が原因で凍死してしまうのではないか、と思うほどである。まったく、面倒な体質である。

そうは言っても、山登りはやはり気持ちがよい。

それに、今回参加した留学生たちは、みんないい人たちばかりだ。一緒に登っていて、こんなに楽しい思いをしたことはない。

大好きな先生と登山をしているホ・ヤオロン君は、いつになくテンションが高い。

「あ、鼻血が出てるわよ!」

テンションが上がりすぎて興奮したホ・ヤオロン君は、鼻血を出してしまった。

頂上で、昼食を食べたあと、山を下りながら、「念仏庵」というところに向かう。

「念仏庵」には、大きな磨崖仏があった。

そこで、ホ・ヤオロン君がお祈りをしている。

「何をお願いしたの?」と聞くと、

「早く韓国の大学を卒業できますように、てお願いしました」

そうか、彼は、これから大学に入学して、あと少なくとも4年、韓国で暮らすことになるのか。

やはり、中国に早く帰りたいのかも知れない。

「念仏庵」をあとにして、「桐華寺」に向かう。

道すがら、ロンチョン君が話しかけてきた。

「実は僕、大学院の試験に落ちたんです」

「日記を読んだよ」

彼は数日前の韓国語の日記で、いま通っている語学院がある大学の大学院を受験したのだが、落ちてしまった、と書いていた。

「韓国語の実力がまだまだだ、ということは、自分でもよくわかっているんです。落ちたのも、それが原因でしょう」

「他の大学院を受けようとは思わないの?」

「ええ、僕、この大学が好きですから」

彼は、チングが多いこの大学院に、どうしても進学したいようだった。

「じゃあ、これまで以上に韓国語を勉強しないとね」と私。「韓国語の日記を続けなさいよ。いちばんの勉強になると思うよ」

「僕も書いてみてそう思いました。書いてみると、いろいろな表現を覚えられるし…。続けようと思います」と彼は言った。

やがて「桐華寺」に到着。桐華寺は、私が1級の時の野外授業で行ったお寺である。

あの時は、韓国語がほとんどわからなかった。でもいまは、中国人留学生たちや韓国語の先生と、韓国語で会話を交わしながらこのお寺を見学している。

同窓会にふさわしい場所である。

楽しい時間はあっという間に過ぎた。

夕方5時、バスで大学の近くまで戻り、中国人留学生たちと、夕食にカムジャタンを食べる。彼らと、いろいろな話をした。

夕食後、大学の北門で、解散。

彼らはまた新学期に会えるが、私と妻には、もう「新学期」が来ない。

「また、会えますよね」とロンチョン君が私に言った。

「まだ韓国にいるからね。こんどまた集まりがあったら誘ってよ」

「わかりました。連絡します」

律儀な彼は、おそらく連絡をくれることだろう。

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