期末考査(4級)
11月14日(土)
朝9時、期末考査開始。私にとって、最後の定期試験である。
相変わらず、試験時間といい、問題の分量といい、サディスティックであることこの上ない。
この年齢になると、長時間、眼を酷使することで、とたんに眼が疲労し、集中力がなくなってくる。若いころであれば、これほど眼が疲れることもなかった。
どんなにやる気を出そうとしても、体がついていかない、とは、こういうことなんだな。
やはり若いというのは、それだけですばらしいことなのだ。
休み時間、前に座っていたカエ氏が言う。
「相変わらずキビしすぎる問題ですね。どうにも肩が凝っちゃって」
「私は眼にきてますよ」と私。
「私なんか、全身サロンパスだらけなんですから」
満身創痍、とはこのことである。
しかしくどいようだが、私はこのキビしすぎる試験を、もう8回も受けているのだ。
そのとき、私の隣の列に座っていた2級クラスの青年が、私に韓国語で話しかけてきた。
「あのう、…日本の方ですか?」
「そうです」
日本語の会話を聞いていて、日本人だと思ったのだろう。
「英語で話してもいいですか?」
う…、それは勘弁してくれ、と思い、「韓国語で」と答える。
「この語学院、中国人が多いですよね」
「どこの国から来たんですか?」と、私が質問すると、
「マレーシアです」と、彼は答えた。
「いま、私の班は、私以外、全員中国人なんです。4級は、日本人が多いんですか?」
「そんなことないですよ。ほとんど中国人です。私も1級から3級までは、私以外全員中国人でした」
「どうして韓国語を勉強しようと思ったんですか?」と彼が質問する。明らかに学生ではない私を見て、疑問に思ったのだろう。
「韓国の文化や歴史を勉強したいと思って」
と、とおりいっぺんの答えをした。
まわりが中国人ばかりで辟易としていた彼は、どうも私と友だちになりたかったようである。
その気持ちはよくわかる。私も同じ経験をしてきたから。
しかし残念だ。私は、今日で最後なんだよ。
午前の読解、作文、文法、リスニングの試験が終わり、あとは午後のマラギ(会話表現)の試験を残すのみとなった。
マラギの試験は、さしずめ大学入試の面接試験のような感じである。まず、受験をする学生が、控え室に集まり、自分の順番を待つ。名前を呼ばれると、控え室担当の先生に誘導され、試験の教室へと向かう。
午後3時、控え室に行き、自分の順番を待つ。
この時間が、何よりも耐え難い。まるで、病院の待合室のようである。
やがて名前が呼ばれた。名前を呼んだのは、2級の時の「粗忽者の先生」である。
控え室を出て、試験の教室に行く道すがら、先生に「私、これが最後の試験なんですよ」と小声で言うと、
「わかってますよ」と小声でお答えになった。
教室に入ると、マラギ試験の担当の先生は、3級の時のナム先生であった。
「大都市のかかえる問題点とその解決方法」について、3分ほど発表しなければならない。
試験の主題は、あらかじめ知らされていた。ただし、主題が5つほどあげられ、そのうちの1つが出る、ということだけしかわからない。
その5つについて、あらかじめ準備していたが、この主題(大都市)については、事前にあまり面白い内容を組み立てられなかった。できれば出てほしくない問題だった。
でもまあ仕方がない。
担当の先生がナム先生だったということもあって、さほど緊張することもなく、独白(ひとりごと)のように淡々と話し、発表は終わった。
「さあ、これで全部試験が終わりましたね」とナム先生がおっしゃった。
「これでもう最後ですね。どうですか。ホッとした、という感じですか?それとも、終わってしまってさびしい、という感じですか?」
「ソプソプヘヨ(さびしいです)。できればもっと勉強したかったんですが…」
「私もそう思います。次の学期も続けられればよいのに…」
しかし研究もしなければならないので、と、私はとおりいっぺんの答えをくり返した。
「韓国語の日記、続けるんでしょう」
「ええ。日本に帰ったあとも、続けようと思います」
「ぜひそうしてください。…私も近いうちに、日本に遊びに行こうと思うんですよ」
「そうですか。その時はぜひ連絡してください」
試験の教室を出て、階段を降りると、1階にわが班のパンジャンニム(班長殿)こと、ロンチョン君がいた。
おかしいな。さっきの控え室では、顔を見かけなかったんだが。
「マラギ試験、受けたの?」と私が聞くと、
「いえ、試験の時間に5分だけ遅刻してしまって、受けることができませんでした。…どうしましょう…」
彼は前学期、4級から進級できず、今学期もまた4級に「留級」した。来年3月に大学院に進学することを考えると、遅くとも来学期は5級に進まなければいけない。つまり「待ったなし!」の状況だったのである。
「マラギの試験」が受けられなかった、となると、今学期もまた、進級はかなりキビしいかもしれない。
まったく、どこまでも不器用なやつだ。人間的にはとてもいいやつなんだが。
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