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シットコム

韓国語の日記を読んだ語学院の先生が、「屋根を突き抜けてハイキック」みたいにおもしろいですね、とコメントを書かれていた。

「なんです?それは」と聞くと、「いま、韓国で一番人気がある、シットコム(シチュエーションコメディ)ですよ」という。

テレビをほとんどみない私は、それまでまったく見たことがなかったのだが、試しに見てみた。

866_1_2 これが実におもしろい。

韓国では、「シットコム」が、れっきとしたひとつの分野として確立している。

こちらに来る前、「順風産婦人科」という、やはり韓国のシットコムを、好きで見ていた。

番組じたいは、いまから10年くらい前に放送されていたものであるが、ソン・ヘギョとか、キム・レウォンといった日本でも人気の俳優が出ていたため、ソフト化されていたのである。

これが、実におもしろかった。

「シットコム」は、通常、1話30分で、平日のほぼ毎日放送される。「順風産婦人科」の場合、3年くらいつづいたそうだから、300話以上放送されたのではないだろうか。

いまの「屋根を突き抜けてハイキック」も、同じようなペースで放送されている。

私自身、放送している時間は家におらず、外で夕食をとっているか、喫茶店で原稿を書いているので、放送時間にこれを見ることができない。しかし、頻繁に再放送をやっているので、テレビをつけて、再放送をやっていれば見る、ということにしている。

先日のことである。

夜、散歩していると、「カーオーディオ」の専門店の前を通りかかった。専門店、といっても、古びた店舗の中に、カーオーディオらしきものがポツン、ポツンと置いてある、という感じの店である。

「カーオーディオだけで商売成り立っているのかね」「店員さんもとくにいないようだし」などと、妻と話しながらその店をのぞいておどろいた。

店員らしきふたりのあんちゃんが、店の端に置いてあるテレビに釘付けになっている。

「屋根を突き抜けてハイキック」を、食い入るように見ているのだ。

似たような光景は、何度か目撃したことがある。

近所の雑貨屋にいったときも、やはり店のおっちゃんが「屋根を突き抜けてハイキック」に釘付けになっている。会計の時も、手もとの商品なんか見ちゃいない。

「ハイキック」の時間は、誰もがテレビに釘付けなのだ。

そうとうな人気なのだな、とその時感じた。

さて、日本では、どうだろう。「シットコム」。

日本のシットコムで思い出すのは、三谷幸喜氏脚本の「やっぱり猫が好き」くらいか。数年前、やはり三谷幸喜氏が書いた「HR」というシットコムがあって、日本の本格的シットコムの誕生だ、などと話題になった。

しかし、韓国のシットコムにくらべれば、残念ながらかなり見劣りがしてしまう。「HR」にしたって、週1回の放送で、半年で終わってしまった。「やっぱり猫が好き」は、数年つづいたが、それでも週1回の放送である。パワーが全然違うのである。

どうして日本では、シットコムが定着しないのだろう。不思議である。

むろん、韓国のシットコムも、おそらく玉石混淆で、今回の「屋根を突き抜けてハイキック」も、「順風産婦人科」以来のおもしろさなのかもしれない(勝手な推測だが)。しかし、良質なシットコムは、なにより、語学の勉強にも最適である。通常のドラマより1話分の放送時間が短いし、内容もおもしろいし、放送回数も多いので、飽きることなく見続けることができるのである。

そういえば、大学時代、英語の授業で唯一おもしろかったのは、マイケルJフォックス主演の「ファミリー・タイズ」というシットコムを授業でみせられたときだったな。あれを続けてみていれば、もっと英語が好きになったかも知れない。

と、ここまで書いてふと思う。映画「男はつらいよ」のシリーズで必ず出てくる、「とらや」でのドタバタ場面。あれこそ、日本のシットコムの元祖ではないか、と。

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コメント

 お久しぶりです。熱心な読者でございます。
 さて、日本でも「フルハウス」とか流行ったりしてシットコムは受容されると思いますが、コメディの形式が欧米(韓国はこっち、ドリフとかゲバゲバなんかも)と日本で違うのではと思います。ミスタービーンもサタデーナイトライブも第四の壁理論でしたっけ、観客はあくまで密室の外から透明壁を通して中の世界を見ているスタンスなのに対し、日本は漫才システムで言えば舞台上にツッコミがいて、ボケの世界と観客のいる常識の世界をつなぐ役目をしているので、客と舞台とが断絶されにくくシチュエーションが完結されにくいのではないでしょうか。
 以前から、このブログでは日中韓のギャクの違いについて考えさせられ、最近では授業改善のため漫才入門の本を買ってみたりして(ポットキャストの「東京ポット許可局」アーカイブの手数論とか小朝論とかいいですのでぜひご一聴を)ますので、思わず口をはさませて頂きました。

追伸:今年は学生が盛り上がらず韓国ゼミ旅行はお流れになりました(ぬんむる)。結局そちらに行けずじまいでしたが、来客続きで忙しそうでしたので、ぜひ残りの日々を有意義に過ごして頂いて、いずれまたたっぷりとお話をということで。

投稿: こぶき | 2010年1月28日 (木) 10時47分

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