今日も長い一日
2月22日(月)
つくづく、自分は引っ越しに向いてない人間だと思う。
研究室に置いていた本をダンボールにつめて、日本に送る作業。韓国でビックリするくらいの数の本を買ってしまったため、日本から持ってきたときの、3倍以上の量になってしまった。
それを、順次ダンボールにつめていくのだが、どの本をどこにつめるか、を考えているだけで、あっという間に時間がたってしまう。
そして、今日、ようやく目途がつき、夕方、郵便局の職員に来てもらって、ひきとってもらうことになった。
午後、いつものように掃除のアジュンマが研究室に来る。
しかし、部屋はダンボールだらけで、掃除ができる状況ではない。
「またあとで来ます」とアジュンマ。
私たちは、「お世話になりました」といって、例の手ぬぐいを渡すと、アジュンマは恐縮されて、研究室を出た。
しばらくして、アジュンマが研究室に戻ってきた。
「あの・・・どうしても気になっていたんですけど、その詰め方では、本と本のあいだがスカスカで、運ぶときにダンボールの中の本が揺れて、傷んでしまうと思いますよ」
私が、本をダンボールにつめている様子を見ていたらしい。
「もっと詰め込まないといけません」
妻も、そうでしょう、とばかりに、アジュンマの意見に同意する。妻もたまりかねていたようだ。
「詰めなおしてもいいですか?」とアジュンマ。
そういうと、アジュンマと妻が、勢いよく、私の本を詰めなおしはじめた。
ここ数日間、考えに考え抜いたあげく分類して詰めた本の秩序が、一瞬にして壊されてゆく。私はわなわなと震えた。
アジュンマにしてみれば、せっかく手ぬぐいをもらったお礼に、何かお手伝いしたい、と思ってくれたのだろう。
最初こそ、「なんてことしてくれるんだ!」と思ったが、おかげで、ダンボールの数がずいぶん減ることになった。それでも、28個にものぼったのだが。
午後4時、箱詰めが終わったころ、郵便局の職員のアジョッシが箱をとりに来た。
妻の荷物と合わせると何と38個のダンボール。しかもそのほとんどが、本である。ふつう、引っ越しの業者だったら、絶対にいやがる客である。
しかしそのアジョッシは、イヤな顔ひとつせず、実に親切に、そして丁寧に、ひとつひとつの箱の重さを量り、料金を算出し、運んでくれた。
ここまでの作業が、約2時間。すでに時計は夕方6時をまわっていた。最後は、守衛のハラボジまでダンボール運びを手伝ってくれた。やはり手ぬぐい効果か。
帰り際に、郵便局のアジョッシが、おみやげまでくれた。何と優しいアジョッシだろう。
「大邱のことでわからないことがあったら、いつでも連絡ください」と、名刺までくれた。
今まで出会った韓国人の中で、いちばん親切で、優しい人かも知れない。
ともあれ、本のダンボール28個を日本に運ぶ、というまったくもって非常識な客であるにもかかわらず、親切な人びとの助けで、なんとか送り出すことができた。
このあと、私たちは、タクシーに飛び乗って、市内のデパートに向かう。
私と妻の両方が習った、語学院の4級の時の先生と食事をするためである。この先生は、今学期をもって語学院をやめ、4月に、かねて交際していたナムジャチング(ボーイフレンド)と、結婚することになった、というのである。お祝いをかねて、お二人を食事に誘うことにした。
デパートで、あわただしくも結婚祝いのプレゼントを買い、お二人と合流。焼肉を食べながら、いろいろな話をする。
「お二人ともを教えたのは、語学院では私だけなんですよ」と先生は、少し誇らしげにおっしゃった。ま、そんなたいした自慢でもないとは思うのだが。
先生はまた、
「同窓会登山は楽しかったですねえ。いちばん楽しい思い出です」
とおっしゃった。私たちも、同感である。
「結婚することは、まだ語学院の卒業生たちには言ってないんですよ。ホ・ヤオロン君にも」
たしかに、先生と結婚したがっていたホ・ヤオロン君が聞いたら、ショックだろうな。でもこれで、彼もソウルという新天地で、心おきなく新しい大学生活をはじめられるだろう。
気がつくと10時30分近くになっていた。
「もし、新婚旅行が日本だったら、私たちに連絡ください。案内しますから」
そういって、お二人とお別れした。
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