最後の旅行
2月24日(水)
2年以上も前のことである。
私とほぼ同世代の、ソウルにある大学の先生から、次のようなことを言われた。
「もし、お二人が韓国に長期滞在が決まったら、いちど私の車でドライブしましょう」と。
正確には、私に、ではなく、そのときに横にいた妻に言ったセリフなのだが。
で、運よく二人とも、同じ時期に韓国の長期滞在が決まり、それも、もう終わろうとしている。その先生は、2年以上も前の約束をまだ覚えていて、「帰国前に、必ず約束を果たしましょう」と言っていただいた。
そして今日、その約束が実現したのである。
本当は、12月に実施する予定だったのだが、その日、ソウルに大雪が降ったせいで果たせず、今日までのびのびとなったのである。
行き先は、妻が行きたいところ。「ソウルから少しはなれた、朝鮮王陵に行きたい」と。
朝鮮王陵は、昨年の6月に世界文化遺産に登録された場所である。
朝10時、ソウルを出発。車の運転は、その先生ではなく、先生の教え子である大学院生の方が担当し、総勢4人の日帰り旅行。
その先生は、私より年齢が少し上だが、韓国の学界では、第一人者である。その彼が、愚鈍で「座持ちの悪い」私のために、1日つきあってくれたことに、私は感謝した。
それ以上に感謝したかったのは、運転をしてくれた大学院生の方である。教授に言われたこととはいえ、黙々と仕事をこなす姿勢に敬福した。
それになにより、運転がメチャクチャ上手い。道もよく知っていて、カーナビなしでスイスイと走ってゆく。おかげで、実に快適な旅となった。
たぶん、今まであった韓国人の中で、いちばん運転が上手い人だ。
「どうしてそんなに運転が上手いんですか?」
と聞くと、「軍隊の時に鍛えられましたから」という。たぶん、それだけではないだろう。天性のものがあるのだと思う。
その彼は実は、私が一昨年の11月末に韓国に来たときに、釜山(金海)空港から大学まで、車で私を迎えに来てくれた人であった。彼の運転のおかげで、私は、当日の学会発表に間に合ったのである。
そして、帰国直前の、最後の旅行でも、彼の運転のおかげで楽しい時間を過ごすことができた。
最初に私が韓国に来たとき、韓国語がほとんどおぼつかなかった私のことを知っている彼には、いまの私はどう映っているのだろうか。
聞いてみたい気もしたが、「おかげで、韓国滞在の最後によい思い出になりました」とだけ言って、お別れした。
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