卒業祝賀会
3月25日(木)
卒業式、卒業祝賀会の日である。
午後1時すぎ、卒業祝賀会がはじまる。
しかし、テーブルの席が足りないようで、卒業生たちが右往左往していた。
ポツリ、ポツリと、各テーブルに1席ずつくらい、席は空いているのだが、せっかくの祝賀会で、誰も知らない人に囲まれてぽつんと座る、というのも、いたたまれないだろう。せめて、親しい友達が1人でもいてくれた方がよい、と思うのが人情というものだ。
右往左往している卒業生に、私の座っている席を譲ることにした。私が席をひとつ譲れば、そのテーブルは2人分空くことになり、少なくとも友達どうし2人が座れる計算になる。せっかくなら、同じ専攻の友達どうしが集まって座れればよいのだろうが、どうも会場が狭くて、そういうわけにはいかない。
それでもなんとか、2人の卒業生が並んで座ることができたようだ。
さて、困ったのは私である。今度は私が右往左往する羽目になってしまった。
近くにある、まるまる空いているテーブルに座ろうとすると、「このテーブルは職員用のテーブルなのでダメです、センセ」と職員の方に言われる。
「あっちの方に、空いてる席がありますよ、センセ」
「あっちって、どっちです?」
「右の方ですよ、センセ」
空いている席にとりあえず座ってください、ということらしい。
言われるがままに右の方にいくと、空いている席などない。どんどん右の方に歩いていくと、会場の、いちばん右端のテーブルに来てしまった。
会場の右側は、私が所属する学科ではない、別の学科の席である。つまり、私が所属する学科のテーブルから、いちばん離れたところまで来てしまった。
(「どこでもいいから空いてるところに座りやがれ」ということなのだな。1年3カ月も日本を不在にして、卒業生の指導をしていたわけでもないのだから、これくらいの仕打ちは仕方がないことなのかな)と、例によって被害妄想をふくらませる。
まわりは、別の学科の全然知らない卒業生や保護者のお母さん。一言ふたこと、会話を交わすが、長く続くはずもない。向こうにしても、全く知らないおっさんから気安く話しかけられる、というのも、あまりいい気持ちがしないだろう。
どうも私は、こういう「いたたまれない」経験が多い。過去に何度か、「出席者に知り合いが全くいない披露宴」というものに参加したことがあって、早く逃げ出したい気分でいっぱいだった。今回のこの仕打ちも、それに似ている。
もともと儀式ばったことが大嫌いな私が、こういう仕打ちを受けてしまうと、心がボッキリと折れてしまうものである。今日も、この時点で私の心はボッキリと折れてしまった。
(よし、こうなったら、誰にも見つからないようにしてやる!)
と、例によって、ヘソがヘンな方向に曲がり始める。
出てきたぞ、例の厄介な病気が。
しかし、やることといったら、出された料理を平らげるか、ビールを飲むか、ビンゴゲームのシートに書かれている数字を凝視するか、しかない。
それでも、途中、私の居場所を見つけてくれた卒業生が何人か来てくれた。これは、素直に嬉しかった。
本当は、自分の方から、卒業生たちの方に言って声をかけたりすべきなのだろうが、すでに一度曲がってしまったヘソである。もう、もとには戻らない。厄介な性格である。
(ま、卒業生たちの元気な姿を遠くから見られただけでもよしとするか。そもそも、儀式ばった席が嫌いなんだし、ここで儀式ばった言葉をかける必要もなかろう)
と思い直し、そそくさと会場をあとにした。
でも、大人なのだから、きちんとあいさつはしておかなければならない。ここを見ている卒業生は、もうほとんどいないかも知れないけれど。
卒業生のみなさん、ご卒業、おめでとうございます。
またどこかで、お会いしましょう。
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