コヒャン(故郷)に帰る
2月28日(日)
朝8時過ぎ、大学院生のウさんから携帯電話にメールが来る。
「何時頃、出発しますか?」
大学のゲストハウスに車で迎えに来て、東大邱(トンテグ)駅まで、乗せていってくれる、という。
「では、10時に来てください」と、返事を書く。
この日、私は釜山(金海)空港から成田空港へ、そして妻は、ソウルへ向かうことになっていた。
10時、ウさんの車に荷物を積んで、出発。
「この前、教えていただいたとおりに、妻が家でお好み焼きを作ってみたんですよ」
運転しながら、ウさんが言った。
「でも、あまりうまくいかなかったみたいです。やはり、作っていただいたお好み焼きは、美味しかったです」
東大邱駅に到着。ここで妻と別れる。妻はあと1カ月、ソウルですごすことになっていた。
そして私は、東大邱駅の近くの高速バスターミナルに向かう。
「まだ少し時間がありますね」
ウさんはそう言うと、缶ビールとピーナッツを買った。
「最後に、一杯やりましょう」
ビールを飲み干し、ウさんと別れ、バスに乗り込む。
11時に出発したバスは、1時間20分ほどで釜山空港に到着。さまざまな手続きを済ませ、2時20分、成田空港へ向けて飛行機は離陸した。
そして2時間後の4時20分、成田空港に到着。
飛行機を降り、約1年ぶりに、日本で使っている携帯電話の電源を入れる。
どうやら、まだ使えるようだ。
実家の近くまで行くリムジンバスに乗り込み、さっそく、あちこちに帰国の報告のメールでも打とうか、と思ったが、報告をすべき友人を、ほとんど持っていないことに気づく。
そもそも、携帯のメールアドレスを知っている人が少ないのだ。
やはり、友だちが少ないんだな。私は。
そこで、わが師匠にメールを打つことにした。
1年3カ月の滞在を終えて、先ほど成田空港に到着しました。落ちついたらいずれご挨拶にうかがいます、と。
すると、しばらくたって、師匠からメールの返事が来た。
私は、師匠から、携帯のメールをいただいたことは、ほとんどない。たいていは、メールではなく、通話である。そりゃそうだ。だって、メールを打つなんて面倒な作業をするより、直接通話した方がはやいもの。
メールをいただいたのは、師匠が携帯電話をはじめて買ったときに、「携帯買いました。はじめてメール送信します」と、私あてに試験送信をされたとき以来、ではないだろうか。
師匠らしからぬ、比較的長いメールだった。
内容は、無事戻られてなによりです、貴重な体験を積まれてこれからの活躍が楽しみです、ということと、先日お送りした「荷が重い原稿」に対する、好意的な感想が述べられていた。
ふだん、面と向かってそんなことをおっしゃらない方だけに、なんとなく面はゆい。いやむしろ、メールだからこそ、おっしゃったのかもしれない。
私は、師匠が携帯電話のボタンを押しながらメールを作成している姿を想像して、ほくそ笑んだ。
気がつくと、バスはすでに都内に入り、あたりはすっかり暗くなっていた。
久しぶりに見る東京の夜景は、じつに美しかった。
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