初恋は、1級の先生
「語学院の学生は、1級の先生に恋をする」
これは、韓国滞在中、語学院のある先生から聞いた言葉である。
また、しばらく4級を担当して、久しぶりに1級の担当になった先生に、聞いてみたことがある。
「1級はどうですか?学生が韓国語を全くわからないから、使う語彙が限られたりして、大変でしょう」
「でも、楽しいですよ。1級の学生たちは、『語学院で先生がいちばん美人です』と言ってくれるんです。4級の時は、全然そんなことを言われたことがなかったんですけど」
なるほど。そう言われてみれば、中国人学生たちを思い返してみても、1級の時に習った先生に恋い焦がれる、というケースが多いようだ。
ホ・ヤオロン君が、1級のときに習った「猟奇的な先生」に恋い焦がれたというのは有名な話だし、マ・クン君が好きだったナム先生も、1級の時の先生だった。
「ひな鳥は、初めて見たモノを母親だと思う」という、有名な理論があるが、あるいは、この理論で説明できるのかもしれない。
しかし私は、もう少し違う説明ができるように思う。
たとえば私は、韓国映画を見ていて、ソン・ガンホのせりふがほぼ聞き取れる。それは、私がソン・ガンホのファンであり、彼のせりふを一生懸命聞き取ろうとしているからである。
また、私が尊敬している韓国の指導教授は、慶尚道訛りがひどい先生で有名だが、帰国するころには、教授のお話をだいたい聞き取ることができるようになった。
同性、異性を問わず、好きな人に対しては、その人の話し方の特徴をつかむ努力を、知らず知らずのうちに行っていて、その結果、自然と聞き取ることができてしまうのではないだろうか。
反対に、嫌いな人や苦手な人の話している言葉は、なかなか聞き取ることができない。これも、私が何度か経験したことである。
つまり、「好きな人の話=聞き取りやすい」というわけである。
では、1級の先生を好きになる、というのは、どういうメカニズムによるものなのか。
韓国語が全くわからない1級の時に、頼みの綱となるのは、1級の先生である。1級の学生からしてみれば、韓国語を一番聞き取ることができる人が、1級の先生なのである。
そこで、「好きな人の話=聞き取りやすい」というメカニズムがたたき込まれている脳が、「聞き取りやすい人=好きな人」という、関係が逆転した信号を出してしまうのではないだろうか。
なんだかよくわからなくなってきたな。「ひな鳥は、初めて見たものを母親だと思い込む」という理論と、たいして変わらないな。
要するに私が言いたいことは、語学が上達するためには、その人(人びと)に興味を持つ、ということである。
ん?これでは、「語学が上達するためにはその国で恋人をつくればよい」と、巷間で言い古されていることともたいして変わらないな。
いや、「その国の異性とつきあう」というのは、あくまでもその一例。重要なことは、その国の人たちに興味を持つ、ということなのだ。
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