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メモ2

4月15日(木)

やはり日記というのは、つけておくもんだね。

韓国滞在中の、昨年の2月19日、1泊2日の大学院生ワークショップに出かけたときの日記で、次のようなことを書いた。

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朝9時に大学に集合。大学院生だけかと思ったら、教授先生や、OBの方(研究者)もいらっしゃっていた。総勢22名が、5台の車に分乗して出発する。

それにしても4時間の行程は長い。私の乗った車は、一見恐そうな50歳くらいの先生の運転である(のちに、先生ではなく、大学院生であることが判明する)。

その恐そうな方が、私に気を遣ったのか、話しかけてきた。

「『ブルーライト・ヨコハマ』、知ってますか?」

ええ、と答えると、

「歌っていた女性は何という名前でしたか?」

突然の質問にとまどうが、なんとか思い出し、

「いしだあゆみです」

と答えた。どうもその方は、その歌がひどくお気に入りらしい。

「そうそう、そうでしたね。その方は、もう結構なお年でしょう」

「ええ、今はたぶん、60歳くらいだと思います」

(中略)

世代的にまったく異なるが、「ブルーライト・ヨコハマ」を知っていてよかった。自分が「芸能通」であったことが、これほど役立ったことはない。

(中略)

夕食後、再び船橋荘に戻り、2次会が始まる。焼酎をたらふく飲み、大学院生たちと語り合う。といっても、もっぱら私が聞き役に回ってしまうのだが。

そのうち、誰かが箸でリズムをとりながら、歌を歌い始めた。そして予想通り私にも「何か日本の歌を歌ってくれ」と、リクエストがきた。

仕方がないので、「ブルーライト・ヨコハマ」を、むちゃくちゃな歌詞で歌った。

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私はこの時、たんに「この方は、いしだあゆみのファンなのかな」と思っていた。

しかし今日、図書館で田月仙著『禁じられた歌 ー朝鮮半島 音楽百年史ー』(中公新書ラクレ)をなにげなく読んでいて驚いた。

「ブルー・ライト・ヨコハマ」は、「韓国人がもっともよく知る日本の歌」である、と紹介されているのである。

1980年代後半まで軍事政権下だった韓国では、歌は規制の対象であった。ましてや日本の歌は、もってのほかであった。

そんな中、1968年末に発売されたいしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」(なんと私がちょうど生まれたころの歌だ)が、海を渡り、韓国へ「突然舞い降り、瞬く間に人から人へと伝わっていった。歌は韓国全土に大きな波のうねりのごとく広がったのである」(前掲書)。海賊版などの非合法な形でたちまち広まったこの歌は、1970年代の若者たちの誰もが歌える歌にまでなっていく。

この歌が、なぜこれほどまでに人気を博したのかはよくわからない。この歌のもつ魅力というほかないのだろう。傑作なのは、大統領と同じ名前のパク・チョンヒという人が、1972年、日本からカセットテープを持ち帰って、みんなで歌を歌ったときのエピソードである。

「今でもはっきり覚えているのは、割り箸でキムチチゲの鍋をたたきながら、皆で歌を歌ったことだ。パクは箸でリズムを取りながら、大好きだった日本の歌『ブルー・ライト・ヨコハマ』を歌った。友人たちも、うろ覚えの日本語歌詞で、一緒に合唱したという」(前掲書)

なんと、ここに書かれていることは、私が昨年ワークショップの飲み会でやったことと、まったく同じではないか!というか、宴会の席で箸で食器をたたいてリズムをとりながら、むちゃくちゃな歌詞で「ブルー・ライト・ヨコハマ」を歌う、というのは、昔から韓国で行われている、「ブルー・ライト・ヨコハマ」の正しい歌い方だったのだ!

著者はさらに、2000年にドラマの撮影で韓国をはじめて訪問したいしだあゆみと、撮影所で会ったときのエピソードを書いている。

「長い間日本の歌が禁止されていた韓国で、もっとも多くの人々が口ずさんでいた日本の歌が『ブルー・ライト・ヨコハマ』なのだということを、直接ご本人にお伝えしたかった。しかし、すさまじいハードスケジュールの中、あっという間に撮影は終了し、私は、韓国での次の公演を急ぎ、言いそびれたまま、撮影所をあとにした」(前掲書)

いしだあゆみが2000年まで韓国を訪れたことがなかったことや、せっかくのチャンスに著者が言いそびれてしまった、というのが、なんともほほえましいエピソードである。

なお、その本の隣に並んでいた寺脇研著『韓国映画ベスト100』(朝日新書)もなにげなく読んでいると、ソン・ガンホ主演の韓国映画『大統領の理髪師』を見たときの、山田洋次監督のコメントが紹介されている。この映画を観て、山田監督は「韓国にも渥美清みたいな役者がいるんだね」と驚いたのだという。

これについても、過去の日記に書いている。というか、俺は山田監督と同じ思考様式なのか?敬愛するソン・ガンホ先生については、またあらためてじっくり書くことにしよう。

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